投稿者アーカイブ:岡本全勝

バラバラな人たちの病理

2022年8月4日   岡本全勝

7月19日の朝日新聞「元首相銃撃 いま問われるもの」、宮台真司さんの「バラバラな人々に巣くう病理」から。

――なぜ(旧統一教会は)多くの信者を集めることができたのでしょうか。
「米国でも同時期、人工妊娠中絶や進化論を否定するキリスト教原理主義が影響力を持ち始めました。共通点は、資本主義が拡大するなかで、『不全感を抱く分断された個人』が量産されたことです。かつて就職や結婚から調味料の貸し借りまで生活の便益は、家族や地域の人間関係からなる生活世界を通じてのみ手に入りました。だが、市場や行政のシステムを頼るようになった結果、面倒がなく便利になった半面、人間関係が希薄になりました」
「20世紀半ばに社会学者ラザースフェルドは、中流化による豊かな人間関係が、健全な民主主義を支えるとしました。だが世紀末からのグローバル化による中流分解で、剥き出しになった個人が、不安とデマに直撃され始めました。そこにつけいる形で、独特の世界観で支持者を束ねる宗教団体が、集票力によって政治的影響力を増しました。かくして内政面では『政治の原理主義化』、国際的には『原理主義のグローバル化』が起きるようになりました」

――現状はどうですか。
「互いにバラバラで『呼んでも応えない周囲の人』と、システムが複雑化して『呼んでも応えない統治権力』は、不全感に駆られた剥き出しの個人を一定割合生みます。そこに、自分と社会の現況を説明し、生きる意味を含めた『確かな物語』を与えてくれるカルトが必ず巣くいます。95年のオウム真理教事件もそうでした。私は、95年の著書で『終わりなき日常を仲間とまったり生きろ』と、身近な人間関係を支えとする処方箋を示しましたが、状況は変わらないどころか、その頃からの経済停滞と生活世界の空洞化で、問題は深刻化しました」

関ヶ原で西軍が勝っていたら

2022年8月3日   岡本全勝

井上章一先生が、その著書「関西人の正体」(2016年、朝日文庫)の40ページ以下で、次のような話を展開しておられます。

1600年の関ヶ原の合戦で、石田三成にもう少し人望があれば、西軍が勝っていた。すると、上方(京都と大阪)が日本の中心であり続け、NHKのアナウンサーも関西弁を話したはずだ。
浪速の商人とそれが支える政権は鎖国をせず、海外に雄飛を続ける。18世紀には西から来たイギリスと覇を競い、インド洋で衝突する。もしそこで日本が勝っていたら、大阪が世界の経済の中心となり、関西弁が世界の共通語になっていたはずだ。
イギリスの中学校で、「かんにん」「ほんまかいな」という会話を教えていたはずだ。

ほんまに、そうですなあ。えらい残念なことですわ。私も東京に出てこんで、関西で暮らしていたやろうに。
NHKの天気予報で「明日は雨です」と伝えるアナウンサーに向かって、「アメ(強・弱)とちゃう、アメ(弱・強)や。アクセントが違うてるで」と叫ばんでもよかったのに。

進歩主義が後退して保守主義も迷走する

2022年8月3日   岡本全勝

7月27日の日経新聞文化欄「「シン・保守」の時代(中)」、宇野重規・東京大学教授の「あふれる「思想なき保守」」から。

・・・現代は「曖昧な保守論がインフレした時代」と定義できる。
起源は18世紀半ばまで遡る。欧州で絶対主義や封建主義を打倒する市民革命が起こり、「社会は理想の未来に向けて邁進する」という進歩主義が興隆した。フランス革命が顕著な例で、既存の制度一切を白紙に戻し、望ましい社会をゼロから再構築することを目指した。
模範を過去ではなく未来に求める進歩主義は楽天的で傲慢だとも言える。歴史や伝統には知恵や配慮が込められているし、私たちの理想通りに人類社会が発展するわけでもない。急進的な進歩主義を批判して、自由を守る伝統的な制度や習慣を守り、漸進的な改革を求める立場として保守主義の思想は生まれた。
ある思想に対するブレーキ役となり、20世紀でも価値を持ち続けた。ロシア革命で実現した社会主義や、「大きな政府」の下で福祉国家を目指す米国リベラリズムの対抗軸になり得たからだ。
現代では進歩主義の存在自体が危うくなっている。労働者による革命や計画経済を目指した社会主義や、大きな政府による社会改良を信じたリベラル派が大きく衰退したからだ。理想の社会像を失った結果、保守主義も対抗軸を見失い迷走する事態が起きている。

保守主義は日本に存在したのか。戦後を代表する2人の知識人、丸山真男と福田恆存は、1960年の安保闘争の頃にはすでに「保守主義の不在」を指摘していた。
丸山は、現行の政治体制を自覚的に守る立場は現れなかったという。欧米から新しい思想や制度を輸入することにあくせくする日本の伝統は、保守主義を何かと関連付けることもなく受容した。その結果、ズルズルとなし崩し的に現状維持を好む「思想なき保守」ばかりが目立つようになった。
福田は、日本における2つの断絶を指摘した。江戸時代以前の制度や慣習を捨て欧米化に走った明治維新と、事実上の征服を経験させられた第2次世界大戦での敗戦だ。過去との連続性が絶たれた社会では、何が自分たちに大切かを共有できず、保守主義を確立させるのは難しいといえる。
現代の日本で以前のように保守と進歩を対比して語ることが有用かは分からない。政治家や政党の間ですら保守主義は誤用されるし、かつて進歩主義が唱えた社会の展望は全く見えないからだ・・・

セミ時雨

2022年8月2日   岡本全勝

勤務先の市町村アカデミーで、昼休みに外周沿いに散歩します。校地は東西100メートル、南北300メートルの長方形です。塀の中も外もたくさんの木が植えてあるので、気持ちよいです。小鳥もたくさん見かけます。
この季節は、暑すぎますが。セミの大合唱です。手の届くところに、たくさんいます。クマゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシだそうです。
クスノキも多いので、アオスジアゲハもたくさん飛んでいます。クスノキは防虫剤を作る材料になるのに、青虫がその葉を食べるのですね。

先日は、孫娘と近くの公園に、セミ取りに行ってきました。木がたくさんあってセミも多く、簡単に取れました。クマゼミが多いです。蚊にも刺されました。
子どもの頃は、家の前や近所にたくさん桜の木があって、夏休みは毎日午前中、セミ取りでした。アブラゼミとニイニイゼミでした。クマゼミは、明日香村にはいませんでした。
たくさん捕らえて虫かごに入れるのですが、父が「かわいそうだから放してやれ」というので、その日のうちに放しました。もっとも毎日たくさん捕まえるので、虫かごには入れておけませんでした。
ヒグラシは少し離れた神社に行かないと見つからず、高いところにとまっているので、なかなか捕ることはできませんでした。

宇宙の大きさ

2022年8月2日   岡本全勝

7月19日の読売新聞1面コラム「編集手帳」から。

・・・天文学を学ぼうとすると最初に太陽系の話が出てくる。地球と太陽の距離は、1億5000万キロ・メートル。大きすぎてピンとこない。日常の尺度で考えてみる
◆地球から太陽までの旅行を空想してみた。電卓をたたくと、時速300キロ・メートルの新幹線で57年程度、時速900キロ・メートルのジェット機なら19年程度かかると答えが出た。これらに比べると、光の速さは桁違いだと実感してしまう。太陽の光が地球に届くまで、わずか8分19秒だ
◆秒速30万キロ・メートルの光速でも、46億年を要する。想像を超える彼方に浮かんだ星々の撮影に米航空宇宙局(NASA)が打ち上げたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が成功した・・・

太陽まで新幹線で57年、ジェット機で19年かかるのですか。分かりやすい尺度です。