投稿者アーカイブ:岡本全勝

平等社会の負の機能

2023年5月8日   岡本全勝

戦後の民主主義がもたらした素晴らしいものの一つに、平等があります。
憲法による法的な平等の保障も重要ですが、暮らしを平等に近づけた経済発展の方が重要だったと私は考えています。いくら法の前では平等と言われても、貧富の差が大きかったり、就くべき職業が決まっていたりすると、実質的な平等は実現できません。
昭和後期の「一億総中流」は、大金持ちが貧乏になったというより、貧乏な人たちの所得が上がったのです。農村で貧しい暮らしをして古いしきたりに縛られていた人たちが、都会に出て勤め人になり所得も上がり、社会の拘束からも自由になりました。

ところが、平等社会という思想が、経済停滞とともに負の機能を発揮しています。
一つは、「「庶民感覚」が商売の足を引っ張る」で書いたことです。
発展している時期には、「あの人も金持ちになったんだから、私も頑張ろう」とか「あの家も子どもを大学に行かせたから、我が家も努力して行かせよう」と、成功した人をうらやましく思いつつ、自分も努力しようと考えました。
ところが経済が停滞すると、「どうせ私が努力しても、あの人のようになれない」と思う人もでてきます。そこに、あの記事に書いたように、「庶民感覚」なるものを基準に、成功した人をやっかむという暗い言論が出てきます。

各人の思いを遂げることができるようにするためには、自由な社会が必要です。そこでは、努力の差、持って生まれた能力の差、環境の違い、そして巡り合わせという運によって、成果の違いが出ます。100メートル競走、大学入試、会社での出世などなど。「結果の平等」は望むことができません。それをしたら、多くの人が不満を持つでしょう。
他方で、あまりの不平等は、社会に不満を生みます。必要なのは、出発点での一定の平等「機会の平等」です。

「芸人のクセに作家気取り」

2023年5月8日   岡本全勝

日経新聞夕刊「人間発見」、「芸人・又吉直樹さんが語る「普通とは何か」表現手段としてのお笑い、文学」。4月27日の「「芸人が芥川賞」の偏見」から。

・・・受賞後「芸人のクセに作家気取りですよ」などとテレビ番組で発言されたことがあります。そうした偏見は驚きません。驚いたのは、一部の文学者の反応でした。
性別や年齢や国籍や職業などあらゆる事柄が平等であるべきだと言ってきたのが言論人です。ところが「芸人が小説を書いた」という面だけを切り取って語る文学者がいたのです。失望しました。それは「今の時代、差別はダメです」と形式的に言うのと同じです。差別はいつでもダメに決まっている・・・

大型連休終了

2023年5月7日   岡本全勝

春の大型連休が終わりました。長いと思っていたのに、あっという間でしたね。いつも同じことを言っています。
皆さん、行楽に出かけたり、休養をとったり、家庭の用事にと、有意義に過ごされたことでしょう。一部を除き天気もよく、新型コロナの行動制限も緩くなり、多くの人が出かけたようです。
飲食店や運輸関係の方は、休むどころではありません。病院や警察、消防も、休みとは関係ない仕事をしておられます。そのおかげで、平穏な暮らし、休みが過ごせます。感謝しなければなりません。残念ながらいくつか事故も起き、石川県の地震では大きな被害が出ています。早期の復旧を期待しています。

私は、締め切りが迫っていた原稿2本を、右筆の協力を得て、連休の初めに完成させました。やれやれ。そのあとも続きに挑戦していますが、またまた難渋しています。結論に入っているのですが、どのようにまとめるか悩んでいるのです。150回にわたりさまざまなことを書いたので、一苦労です。これまでの誌面を読み返し(それも労力が必要です)、「ここで、こんなことを書いたなあ」と思い返しています。
ホームページも少し書きためました。連休中も、結構な数の方が見てくださったようです。ありがとうございます。

一番の仕事は、孫のお守でした。運動不足解消の散歩にもなります。娘家族がやってきて、賑やかな食事も。じいさまにとっては、行楽地に出かけるより楽しいことです。
原稿は進みませんでしたが、連休中に執筆を進めようという発想が間違いだと思いましょう。肝冷斎は、休みなしで頑張っています。

政治主導の負の作用

2023年5月7日   岡本全勝

4月26日の朝日新聞オピニオン欄「保育政策、いま国に言う」、無藤隆さん(保育学者)の発言から。

・・・日本は欧米諸国と比べ、保育士1人あたりが見る幼児の数が多いことは事実です。12年に自民・公明・民主の3党で合意した「社会保障と税の一体改革」で、こうした配置基準の改善など保育の質について3千億円超を確保することが努力義務とされました。しかし、いまだに実現されていません。

その大きな理由は、幼保無償化ではないかと思います。17年、解散総選挙に踏み切る際に安倍晋三元首相が、消費増税分を使って行うと突然打ち出しました。私たち保育関係者ばかりでなく国の担当者にも驚きであったでしょう。結果、年約8千億円を割くことになり、保育にさらに予算をつける要望をする際の障壁となったことは否めません・・・

内を掘る、外から見る

2023年5月6日   岡本全勝

したこととしなかったこと」の続きにもなります。
あることを研究する際に、そのものを深く調べることと、そのものがおかれている環境で見ることの、二つの視角があります。ある商品が売れないときに、その物のどこが悪いのかを調べるのが、前者。競争相手の商品や消費者がどのように評価しているかを調べるのが、後者です。太平洋戦争の敗因を調べる際に、日本陸海軍の組織内の長所と欠点を調べるのが前者。アメリカ軍との比較や戦い方を調べるのが、後者です。

失敗を調べる際には、内を深く調べても限界があり、外との関係を見ざるを得ません。ところが、うまくいっているときは後者を忘れて、「我々が優秀だからだ」と自己満足に陥る恐れがあります。
日本が戦後、驚異の経済成長を遂げたときに、日本人論や日本経営論が流行りました。「日本は優秀だ」と自尊心をくすぐられました。それが間違っていたこと、あるいは一面でしかなかったことは、平成の停滞が証明しました。もちろん、日本には優れた点もあるのですが、「優秀」だけで成功したのではありません。
鎖国状態ではないので、国際環境の中で分析しないと不十分です。当時の日本の一人勝ちは、先進国を追いかける優位さと、後発国が追いかけてこないという条件があったからです。

管理職の仕事の仕方も、同じです。組織内ばかり深掘りしていても、社会の期待には応えることはできません。置かれた立場と、期待されている役割を認識して、それに応えることができる組織を作る必要があります。
この点を、管理職研修では「深掘りと周囲確認」として説明しています。