投稿者アーカイブ:岡本全勝

「したこと」と「しなかったこと」

2023年5月3日   岡本全勝

役所という組織にしろ、政治家や官僚という個人にせよ、1年間にあるいは在任中に何をしたかと振り返ることは重要です。そしてそれぞれに、成果を誇ります。私の履歴書など回顧録も、同様です。それはそれで勉強になるのですが、第三者から見て、何か物足りなさを感じます。なぜか?
それは、何をしたかは語られるのですが、何をしなかったかか、何が不足だったかが語られないからです。

個人の回顧録で言えば、「したこと」は書かれます。「したこと」であっても、都合の悪いことは書かれません。したこともしばしば美化され、記憶の間違いも起きます。
「したこと」で本人の知らないところで負の影響を与えていたことも、書かれません。周りの人が悪口を言っていても、本人は知らないので、書かれないでしょう。
するべきことと思っていながら「しなかったこと」も、書かれません。時に「あのときこうしておれば」という反省の言が語られることはありますが。
そして、周囲や後世から「やるべきだった」と考えられながら「しなかったこと」も書かれません。

組織にしろ個人にせよ、「したこと」とともに「しなかったこと」も書かれないと、正当な評価にならないでしょう。後者は、本人に期待できないとするなら、周囲の人がするべきことです。

復興拠点の避難指示解除

2023年5月3日   岡本全勝

5月1日に、福島県飯舘村の特定復興再生拠点の避難指示が解除されました。6町村で計画した復興拠点の避難指示解除はこれですべて完了しました。2日の朝日新聞は、大月規義編集委員が1面と、社会面で大きく解説していました。

・・・東京電力福島第一原発事故で立ち入りが規制されている福島県飯舘村の帰還困難区域のうち、国が除染や復興の対象にした「特定復興再生拠点」(復興拠点)の避難指示が1日、解除された。県内6町村で計画された復興拠点の避難指示解除はこれで完了した。朝日新聞の集計では6町村の復興拠点に戻った人口は計158人で、住民登録者数の1・2%だった・・・
・・・原発事故の当初、帰還困難区域は放射線量が避難基準の2・5倍超に上昇し、国は「将来にわたり居住を制限する」との方針を決めた。
しかし、放射線量がある程度下がっていることが分かり、政府は2017~18年、帰還困難区域をもつ7市町村のうち6町村の一部を復興拠点と認定し、除染後に避難指示を解除すると決めた。
復興拠点の面積は帰還困難区域の8%だが、集落だった場所を中心に認定したため、登録人口は約1万3千人と区域人口の6割を超える。国は拠点内の除染のほか、道路や田畑、産業団地の整備を進め、これまで約3200億円の復興予算を投じた。
ただ、いつ戻れるか分からない状態が長年続き、もとの家などの解体は4千件近くに達している。復興拠点に戻る住民や移住者は、拠点の解除から1年近くたつ葛尾村で1人、大熊町で60人。各地とも復興は厳しい状況だ。
復興拠点を国に申請した際、6町村はそれぞれ避難解除から5年後の居住人口目標を掲げた。その数は6町村で計7960人になるが、現時点では目標の2・0%。復興庁は拠点を認定し始めた約5年前、居住目標に近づけば拠点を広げる考えを地元に示していたが、「目標は遠く拠点の拡大はないだろう」(政府関係者)という・・・1面「復興拠点、戻った人1.2% 避難指示、福島6町村全て解除

・・・福島県飯舘村にある特定復興再生拠点(復興拠点)の避難指示が1日に解除され、約5年前に計画された帰還困難区域の一部解除が県内6町村で完了した。戻った住民はわずかで、解除が進むにつれ厳しい現実が浮かぶ・・・
・・・復興拠点から外れた帰還困難区域は今後どうなるのか。
復興拠点がない南相馬市を含め、帰還困難区域を抱える7市町村は「早期・全域の避難指示解除」を国に求める。だが、政府は慎重だ。
復興拠点の整備にかけた約3200億円の大半は放射性物質の除染が占める。「除染をせず、放射線量が自然に下がるのをなるべく待ちたい」という政府関係者もいる。
長泥地区では1日、復興拠点外で初めて避難指示が解除された。従来、解除には除染が必要だったが、政府は2020年、自然に放射線量が年20ミリシーベルトを下回っていれば、人が住まないことを条件に「未除染」で解除できる方式を導入した。長泥の拠点外にある10世帯のうち1軒0・6ヘクタールは除染せず「公園」にして解除した。
ただ、除染を求める住民は多く、未除染解除の方式を受け入れる町村は飯舘村のほかにない・・・
・・・政府は昨年夏から、拠点外の避難世帯に調査を始めた。これまで4町村で実施し、「帰還を希望」と答えたのは26・7%で、「希望しない」の15・8%を上回った。
帰還希望が多い背景には、朽ち果てた自宅を公費で解体してほしい思いや、家が解体されないと、大規模災害時に適用される生活再建支援金(1世帯最大300万円)が受けられないことがあるとみられる・・・社会面「飯舘へ「通い復興」 避難指示解除、戻った住民1.2%

東洋の古典、西洋の古典

2023年5月2日   岡本全勝

ふと思い立って、柳沼重剛著『ギリシア・ローマ名言集』(2003年、岩波文庫)を読みました。途中寄り道して、『ギリシア ローマ 古代知識人群像』(1994年、岩波・同時代ライブラリー)も。

名言の中には、漢文や古文にもよく似たのがあったりします。でも、ラテン語や英語での表現は知りません。
日本は明治以来、それまでの中国文化から西洋文化に乗り換えました。私の父親までは漢文が素養であり、毛筆も必須でした。私は漢文も不十分で、毛筆もできません。肝冷斎のような古典漢文通は、絶滅危惧種でしょう。
とはいえ、記紀、万葉集、源氏物語、平家物語などのさわりは、身につけています。

次の世代は、英語が必須になりました。しかし、西洋古典の、ギリシャ・ローマ、聖書、シェイクスピアには、子どものころから慣れ親しんでいるわけではありません。
私たちの世代までが漢文を少し理解できたように、西欧の知識人はラテン語を学びました。これからの日本人たちが、英語で西欧の人たちと会話する際には、このあたりは不利でしょうね。

自社製品と他社製品を公平に比較する

2023年5月2日   岡本全勝

日経新聞「私の履歴書」4月14日、吉田忠裕さんの「インドネシア」から。

・・・シンガポールに次ぎ、香港でも82年にアルミサッシの生産・販売を始めた。次に照準を合わせたのがインドネシアで、86年にアルミ建材で海外初の一貫生産工場をもつ現地法人を設立した。
工場建設の際、押出機を2台導入することになった。当社の工作機械部門も押出機を独自開発していたが、私は費用対効果が最も高いものを選びたいと考え、社内の工機部門と社外の5社で相見積もりを取ろうとした・・・

・・・私は各社の見積もりを見てヒアリングもした後、自社の押出機に「ノー」を突きつけた。社内の工機部門は「価格では絶対に負けない」と意気込んでいたが、メンテナンスを含めたサービスに問題があった。最終的には総合判断で宇部興産(現UBE)1台、当社の工機部門1台になった。
これが社内に波紋を広げた。先に「川上遡上主義」と書いたが、製品の質を高めるために材料や機械まで内製化するのは創業社長、吉田忠雄の経営方針であり、当社のDNAと言える。工機部門が2台納入できて当然と考えていたから、私を「非国民」と非難する声が上がった。
私は内製にかける情熱や努力を否定したわけではない。だが社外との競争に勝つことが条件のはずだ。いい事例を残したと思っている・・・

子どもが幸せに育つ社会

2023年5月1日   岡本全勝

4月1日から、こども家庭庁が発足しました。4月6日の朝日新聞に「幸せに育っていける社会へ」という特集が載っていました。関係する指標が、10年前、5年前、直近と比較して載っています。

・・・日本の子どもの心の幸福度は、先進国で何位か。
答えは、下から2番目だ。
ユニセフ(国連児童基金)の研究所が2020年にまとめた報告書で、日本の子どもの「精神的幸福度」は、先進38カ国で37位とされた。各国の子どもの生活の満足度や自殺率を比較した結果だった。

大人にとっては目を背けたくなるデータかも知れない。子どもと若者が年々、厳しい状況に追いやられていることは、国内データも物語る。
「3・5倍」
10年前と比べて、児童相談所が対応した虐待の相談件数は、これだけ増えた。5・9万件(11年度)から20・7万件(21年度)に達している。過去最多だ。
「1・5倍」
これも10年前と比べたもので、自殺で命を落とした小学生、中学生、高校生の人数の増加率だ。12年に336人だったが、22年は514人に増えた。少子化と言っているそばで、過去最多になった。
「3・9倍」
これは、いじめのうち生命、心身、財産に重大な被害が生じた疑いのある重大事態の件数がどれだけ増えたかを示す数字だ。データを取り始めた13年度の179件と、21年度の705件を比べた。
個々の体験に耳を傾けると、困難に直面した子どもたちの中には「たすけて」が大人に届かず、こぼれ落ちる現実も見える・・・