投稿者アーカイブ:岡本全勝

通じない新語をつくる

2023年10月13日   岡本全勝

このホームページで、しばしば取り上げている、カタカナ語、アルファベット略語の批判です。新しいカタカナ言葉やアルファベット略語をつくるのは、言葉をわかりにくくするという意識も働いているようです。

先日、日本糖尿病協会などが、糖尿病の名称をダイアベティスに変える案を検討しているとの報道がありました。例えば、9月21日の読売新聞「糖尿病=ダイアベティス 新呼称案近く公表へ 連想しづらく普及課題」。ダイアベティスは、糖尿病の英語だそうです。
糖尿病という病名を嫌がる患者の声に応えるためだそうです。わかりにくくするという意図があるのでしょうが、日本語にしようとする努力はないのでしょうか。
痴呆性は認知症に、精神分裂病は統合失調症に変更しましたよね。

9月29日に文化庁が、国語世論調査を発表しました。アルファベット略語についての質問もあります。
問7:質問 あなたは、ふだん、見聞きする言葉の中で、外国語の頭文字などを使ったいわゆるアルファベットの略語(例:AED、SNS、DX等)の意味が分からずに困ることがありますか。それとも、ありませんか。 (一つ回答)
問7:全体の結果・年齢別の結果 「よくある」(31.4%)と「時々ある」(53.7%)を合わせた「ある(計)」の割合が85.1%、「全くない」(1.9%)と「余りない」(12.0%)を合わせた「ない(計)」が13.9%となっている。 また、「ある(計)」の割合を年齢別に見ると、おおむね年齢が上がるに従って、割合が高くなる傾向にある。

問8付問2:質問 (問8で「どちらかと言うと好ましくないと感じる」、「好ましくないと感じる」と答えた人(全体の54.3%)に対して) 好ましくないと感じるのは、どのような理由からですか。 (幾つでも回答)
問8付問2:全体の結果 「意味が分かりにくいから」を選択した人の割合が94.2%と最も高く、次いで「見慣れない言葉だから」(31.1%)、「漢字や仮名の言葉を使った方がいいから」(29.5%)が約3割となっている。

9月30日の朝日新聞「「推し」「盛る」「引く」 世代超え定着、新しい表現は―― 国語世論調査」は、次のように書いています。
・・・AEDは自動体外式除細動器、SNSはソーシャル・ネットワーキング・サービス、DXはデジタルトランスフォーメーションを意味する。文化庁の今村聡子国語課長は今回の調査結果について、「意味を伝え共有するという言葉の機能が十分に果たせていない、と受け手が感じてしまっている」と指摘。調査の担当者も「相手に伝わるかどうかが大切。公用文などでは今後留意していくべきだ」と話した・・・

参考「頭は類推する。カタカナ語批判。1

連載「公共を創る」第165回

2023年10月12日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第165回「政府の役割の再定義ー組織の目標と幹部の役割」が、発行されました。
行政組織において、どのようにしたら政策や業務の見直しが進むかを議論しています。今回は組織の目標という観点から考えてみます。
業務の見直しを進めるには、上司が部下にその目標を示すことが重要でした。それに対して、政策の見直しを進めるために、組織の目標はどのように設定されているかです。

各課の目標はどのようにして設定されるのでしょうか。その目標は、課長が部下に与える目標の出発点であるはずです。まず課の目標があり、それを分配したものが各職員の目標になっているはずです。
ところが現状では、国では府省の任務と各局・課の所掌事務は明示されているのですが、それらの組織が達成すべき目標、すなわち整理すべき課題と解決の方向は記されていません。

組織の目標には「所管している制度の運用」「所管行政に関する課題への対応」という二つの軸があるのだと思います。
一般化すれば、前者の既存制度の運営は、課長以下の職員が主に担うことであり、省の幹部である局長が細かいところまで関与する必要はないでしょう。
それよりも局長が力を割くべき主たる役割は、社会全体を見渡しながら、その中で自らの所管行政に関する課題を発見し、その解決を組織の目標の中に組み込むことです。
この点が、まだ十分に理解されていないようです。

「先の大戦」、内容と名称

2023年10月12日   岡本全勝

10月2日の日経新聞夕刊、斉藤徹弥・編集委員の「「新しい戦前」に必要な思考 多面的で柔軟な外交が重要」に次のような話が載っています。

・・・筑波大学名誉教授で国立公文書館アジア歴史資料センター長の波多野澄雄さんは「先の大戦は4つの異なる戦争が重なったものだ」とみています。
まず日中戦争です。1937年から45年まで戦った一番長い戦争です。2つ目は日米戦争で、太平洋を舞台に多くの犠牲者を出しました。3つ目が東南アジアでの日英戦争です。フランスやオランダを入れてもよいでしょうが、東南アジアの独立に影響を及ぼしました。最後が45年8月から1カ月弱の日ソ戦争です。

先の大戦は、多大な犠牲を払い、あらゆる人に影響を与えました。その教訓も多岐にわたり、理解するのは容易ではありません。このように戦争を4つに分けて考えれば、それぞれの戦争の目的や被害、残した負の遺産などを考えやすくなるでしょう。戦争を多面的にみることができるようになるかもしれません・・・

4つに分けるのは、わかりやすいです。
では、全体を何と呼ぶか。「先の大戦」と呼びますが、悩ましいです。「第二次世界大戦」は日本がアジアで行った戦争だけでなく、ヨーロッパでの戦争を含みます。
当時の日本政府は1941年(昭和16年)に始まった戦争を「大東亜戦争」と呼び、その前に始まった日中戦争は「支那事変」と呼んでいたようです。戦後は「太平洋戦争」が使われるようになりましたが、これは対米戦争を表す言葉でしょう。

社会の変化を表す「貧若同縁から豊熟異独へ」

2023年10月11日   岡本全勝

産業の変化や消費者の嗜好の変化を「重厚長大から軽薄短小へ」と表現することがあります。
それにならって、社会の変化を表す言葉を考えてみました。昭和後期の経済成長期の日本社会と、平成・令和の成熟社会の変化を表そうと考えたのです。連載「公共を創る」執筆の一環です。

「貧若勢同縁」から「豊熟滞異独」を考えてみました。意味するところは、次の通り。
経済成長期=貧しかった、平均年齢が若かった、経済成長の勢いがあった、同調を求められ画一的だった、家族・地縁・社縁というつながりが強かった。
成熟期=豊かになった、高齢化した(成熟)、経済が停滞した、他者と異なっていること多様性が許されるようになった、自由になったが孤独になった。

5文字もあるし、こなれた言葉ではないので、覚えにくいですね。
4文字にして、「貧若同縁」から「豊熟異独」はどうでしょうか。
もっと良い案があれば、提案してください。

職場の非公式交流の機会

2023年10月11日   岡本全勝

9月25日の日経新聞「多様性 私の視点」、山口慎太郎東大教授の「飲み会・たばこ部屋に代わる交流を」から。

・・・日本に限らず多くの国で、飲み会やゴルフ、たばこ休憩などでの非公式コミュニケーションの重要性を指摘する人は多い。もっとも、その実態はエピソードの域を出ることはなかった。
しかし、最近の研究では、「たばこ部屋」の存在が非常に重要であることが客観的な形で示された。ある大手商業銀行を対象に行われたこの研究によると、上司と部下がともに喫煙者である場合、そうでない場合と比べて、上司と部下が共に過ごす休憩時間が63%増加し、部下の給与は2年半の間に18%余分に上昇するという。

問題は、このような非公式コミュニケーションの場が特定のグループに限定されると、組織の多様性や包摂性に影響を及ぼす可能性があることだ。特に、ジェンダーの観点から見ると、男性主導の非公式コミュニケーションは、女性が重要な情報を得る機会を失うことにつながる。実際、ある調査では、女性エグゼクティブの悩みとして「男性だけでネットワーキングが行われ、女性は重要な情報を入手できなかったこと」が最も多く挙げられた。また、マイノリティーや異文化の背景を持つ従業員も、文化や習慣の違いから非公式のコミュニケーションから疎外されるリスクがある。
伝統的な「飲み会」や「たばこ部屋」に代わる、新しい非公式コミュニケーションの模索は、組織の多様性と包摂性を高めるために重要だ。ランチタイムやコーヒーブレイクをともにする機会を設けるなど、様々な背景や習慣を持つ従業員が自然に交流できる場を提供することが望ましい・・・

指摘の通りです。私も、昼に聞けない話を飲み会で教えてもらい、部下の悩み事を聞くことも多かったです。タバコは吸わなかったのですが、部下職員がタバコ部屋で仕入れてくる情報には、職員管理において役に立つものも多かったです(女性職員の場合は、洗い場での意見交換もありました)。
この二つは、限られた人だけが参加できるという、大きな欠点を持っていました。徐々に減ってきています。では、それに変わる「話を聞く場」をどのようにしてつくるか。難しいところです。