地方団体へのメッセージ
今回の「骨太の方針2004」、特に「3兆円税源移譲明記」には重要な意義があると、私は考えています。まずここには、地方団体に対し、いくつかのメッセージが込められています。
(1)地方団体に安心感を持ってもらう。
①「安定的な一般財源総額の確保」という記述=これは16年度において交付税等の削減が大きく、また突然だったことに、地方団体から反発が大きかった。それに答えるものです。
②「3兆円の税源移譲目標の明示」=16年度は1兆円の国庫補助金削減に対し、一般財源化は0.4兆円でしかなかったことに、地方団体からの不満が大きかった。それに答えるものです。
③「18年度までの改革の全体像を、秋までに明らかにする。その際には、地方団体の意見を聞く」との記述=これも地方団体からの意見を取り入れたものです。
これらは、改革を進めるためには、地方団体の理解が必要だからです。
(2)地方団体にも責任を。
「3兆円の国庫補助金改革の具体案を、地方団体に取りまとめてもらう」=これは、地方団体にも、三位一体改革に責任を持ってもらおうとするものです。
もちろん、なかなか進まない改革を進める「てこ」になる意味や、政治と官僚の関係などの論点もあります。それらは、追い追い解説しましょう。今朝(4日)の、読売新聞の解説(青山彰久記者執筆)や朝日新聞の社説が、参考になります。(6月4日、6日)
これからの困難
先週、内閣府が、全国知事会などに「8月20日までに、補助金改革案を取りまとめるよう」要請しました。また11日の閣議では、麻生大臣が各大臣に対し、地方団体が案を取りまとめる際に「邪魔をしないでほしい」旨を訴えました。大臣は、全知事・市区町村長・議長に、御手紙も出されました。(12日付け朝日新聞など。13日付読売新聞解説がわかりやすいです)。
「骨太の方針2004」に「3兆円税源移譲」が明記されましたが、実現には、まだ困難が予想されます。
進む改革
しかし、「三位一体改革」は、いくつもの困難を伴いながらも、着実に進んでいます。片山プラン(5.5兆円の税源移譲提案)が14年5月。三位一体改革の方針が閣議決定されたのが、その6月。3年間で4兆円の補助金改革を決めたのが、15年6月でした。16年度には1兆円の補助金削減と部分的税源移譲を実現しました。そして16年6月には、3兆円税源移譲目標を決定しました。
こうして見ると、とぎれることなく、確実に前進していることがわかります。近年の構造改革の中でも、もっとも進んでいるものでしょう。
現在、論点を整理して、「進む三位一体改革-評価と課題」という原稿を執筆中です。しばらくお待ちください。乞うご期待。(6月13日、14日)
大きな政治争点
17日の朝刊各紙に、民主党の全面広告が載りました。岡田代表の顔が大きく写っているものです。ごらんになった方も多かったと思います。そこに、マニフェストとして、3つの約束が掲げられていました。その2が「18兆円の補助金を廃止し、地域で住民が使い道を決められる自主財源に」でした。
地方財政改革は、ここまで大きな政策争点になりました。
今朝の日本経済新聞の社説は、「地方の結束が試される番だ」でした。地方財政は、毎日のように新聞をにぎわしています。国民にこれほどまでに関心を持ってもらえて、ありがたいことです。「数年前には考えられなかったことですね」とは、ある旧知の新聞記者の談です。
今晩も、政策研究大学院で講義をしてきましたが、新聞切り抜きだけでも、議論ができます。
もっとも、私は地方分権も重要ですが、日本にはそれに劣らず重要な政策課題があると考えています。例えば教育についていえば、教員の給与の財源をどうするかより、教育の内容・いじめ・不登校・学力低下・学級崩壊・非行を議論すべきでしょう。しかも三位一体改革は、教員の給与を下げるといったような議論をしているのではないのです。文部省が早く、「補助金官庁」から「政策官庁」に転換することを望みます。(6月18日)