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三位一体改革51

25日の日経新聞は、「所得課税改革を読む」下「負担、国税から住民税へ-地方行政に厳しい目」を載せていました。住民税額が所得税額を上回る納税者が、全体の2割の1千万人から、4千万人に急増すること。そして、住民の自治体に対する目が厳しくなることを指摘していました。このことは、拙稿「続・進む三位一体改革」p151に解説しておきました。
また、ほとんどの人が住民税増税になる、と書いてありました。住民税の税率が5%から10%になる所得階層は、増税になることがわかりますよね。そして、税率10%が適用されていて変わらない人も、低い所得の部分は税率が5%から10%になるので、住民税は増税になります。もっとも、その分は所得税が減税になります。(6月25日)
24日の朝日新聞には、内田晃記者が「義務教育費の国庫負担金廃止-学校現場の自由度増すか」を書いていました。廃止派は「学級編成柔軟に」と主張し、存続派は「現制度でも可能」と主張し、対立が続いていることです。
私は、この主張の対立なら、結論は出ていると思います。廃止派の勝ちです。国庫負担金を廃止して何も不都合がなければ、廃止すればいいのです。それによって、地方団体の負担金申請事務の負担も減り、文部科学省の負担金配分事務も廃止できます。
今回の義務教育の場合、国庫負担金廃止のメリットをめぐる議論の設定が間違っています。文科省が法令で縛っている限り、地方の現場での自由度は増しません。公共事業とかとは、違うのです。メリットは、補助金事務にかかる事務の廃止と経費の削減です。そして、それが意識の面で地方の自立を促すのです。
文科省と中教審は、意図的に議論を「一般財源化しても、教育の内容は変わらない。だから、負担金のままで良い」に持ち込んでいるのでしょう。その議論に乗っては、いけないのです。主張すべきは、「一般財源化しても、教育の内容は変わらない。だから、一般財源化する」なのです。(6月24日)
27日の毎日新聞は、連載「知事たちの闘い-地方分権は進んだか」第16回「決を採る、ついにその時が来て」を載せていました。
また、野倉恵記者が「新教育の森」で「中教審を見る」「義務教育費めぐり議論激化」を解説していました。これについての私の解説は、何度も書いたとおりです。
記事の中で、次のような意見が紹介されていました。「『義務教育のあり方を問う中教審の最大の論点が、教員給与の出どころやそのつけ替えの問題に終始していいのか』。教室との乖離を指摘する声は少なくない。」その通りです。(6月27日)
28日の読売新聞「論陣論客」は、「三位一体改革の行方」として、麻生渡知事会長と持田信樹東大教授のインタビューを載せていました。
麻生知事会長「我々は小泉内閣を信用したのだ。3兆円の税源移譲をするというから、「必要な補助金廃止リストを」という政府の提案に応じ、廃止案を昨年夏に出した。それができないということになったら、総理と内閣に対する不信は決定的になる。政府・与党との信頼関係も崩壊する。3兆円の税源移譲は絶対に譲れない」
持田教授「先送りされている部分があるのは事実だが、日本の財政の歴史からみると、税源移譲を最初に決めて改革するのは画期的だ。昨年、与党が合意したことは重い」
「(現内閣に)最も欠けているのは、従来の日本の『行政的集権システム』をどの方向へ進めるかを示していない点にある。青写真を示せば、国も犠牲を払うが地方も払ってほしいと説明できる。政治が責任を果たしていない」(6月28日)
30日の朝日新聞「私の視点」には、麻生渡知事会長の「教育費の財源移譲、地域の独自性が人材を生む」が載っていました。
東京新聞「記者の目」には、高橋治子記者の「分権へ地方の気概を」が載っていました。「住民の関心が高い教育費を自治体に移すことで、住民は教職員の数を減らされないように、今まで以上に首長や教育委員会の動向に目を向けることになる。道路や橋を造るよりも、身近な学校の予算を増やすためならば、税収を上げようという住民意識も生まれやすい。税源移譲によるメリットでなく、自治体が教育費を減らすかもしれないリスクこそが、結果的に分権の起爆剤になり得るということを、地方側はもっと主張すべきだ」。
鋭い指摘ですね。もっとも、中教審の委員さんたちは、この主張が理解できるでしょうか。(6月30日)
4日の日経新聞は、三位一体改革についての知事緊急アンケート結果を載せていました。
骨太の方針2005に盛り込まれた三位一体改革についての評価は、「満足できる」がゼロ、「おおむねよいが不満も残る」が35人、「まったく不満」が8人です。不満の理由の第一は、第2期改革への言及がなかったことです。
義務教育国庫負担金廃止については、33人が賛成ですが、負担金堅持が5人おられます。この2年間の三位一体改革で地方の自由度は高まったかについては、「まあまあ高まった」が4人、「高まったと思わない」が38人でした。
さて、この後、三位一体改革の残る課題を実現することや、第2期三位一体改革への道筋を付けることも、知事会を始め6団体の力量にかかっています。(7月4日)

続・クールビズ

3日の読売新聞が、「基礎からわかるクールビズ」を特集していました。
「岸田一郎さんは『クールビズが始まる以前から、『ノーネクタイでもきちんとした格好はできる』という意識が男性たちの間に広がっていた。国のお墨付きを得たので、今後、定着していくのではないか』と話す」
「『何をしてもいい』という自由を与えられると、戸惑ってしまうのが日本人の特徴とされてきたが、『最近の日本人は変わってきた』と岸田さん。『今は多様化、個性化の時代。半数は戸惑っていても、半数は歓迎しているのでは』と分析する」。
コシノヒロコさんの談。「日本のビジネスや政治の世界では、おしゃれを考えることは『男らしくない』と、妻任せにする人も多い。しかし、自分の魅力も知らずして、国や社会のことを考えられるのかしら」
「男たちがネクタイを取った点は進歩ですが、『ただネクタイや上着を取ればいい』という横並びの発想やTPOを考えない着こなしに見えるのが残念です」。

沖縄有志勉強会講師

1日午後から2泊3日で、沖縄県豊見城市に行ってきました。沖縄自治体職員ネットワークに呼んでいただき、初日は講演会を2時間、翌日は勉強会を2時間×3コマという、きついお仕事です。
講演会は、金曜日の夜なのに、200人もの方が熱心に聞いてくださいました。「これからの行政、これまでの行政」という表題で、私の持ちネタの「日本は繁栄と自由を手に入れたが、負担と選択という政治をしてこなかった」ことをしゃべってきました。
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「講演が終わったら、外も気持ちも真っ暗になりますよ」と予告したら、翌日、参加者から「帰り道は真っ暗になりました」と感想をいただきました。その点は、成功ですね(笑い。うーん、本当は笑っていられるような、財政状況じゃないんですがね)。
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翌日は、ネットワークのメンバー約30人と、朝から夕方まで、みっちりお勉強でした。地元琉球大学の島袋先生や沖縄タイムスの記者さんも数名、参加してくださいました。
既に私の本を読んで下さっていたので、「これからの市町村」の他に、本邦初演の「岡本行政学の構図」や「岡本流改革術」を伝授し、みなさんからの質問の嵐に耐えてきました。
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一番反響があったのは、「税源移譲で、ほとんどの人が所得税額より住民税額の方が多くなる。すると、給料明細書を見ると、小泉首相でなく、市町村長の顔を思い浮かべることになる」=「毎月給料日は、役場に不満を持つ日」という話でした(「続・進む三位一体改革」に詳しく書いてあります)。
講演会はエンジンをかけるために、ネクタイをしましたが、翌日は、かりゆしウエアを着せていただき、にわかウチナンチュになりました。終了後は、泡盛・民謡・踊り付きの反省会でした。勉強会より、盛り上がるんですよね。
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「岡本全勝沖縄ファンクラブ」のみなさん、ありがとうございました。
この時期なら、国会も終わっていて余裕があるとお引き受けしたのですが、見事に予想は外れ、強行軍になりました。

全会一致の政治

28日に、自民党総務会で、郵政民営化法案の修正案が、「多数決」で了承されました。29日の各紙が大きく伝えています。問題となっているのは、修正の中身より手続きです。
「総務会は、法案への賛否などを決める事実上の最高意志決定機関で、党則では多数決で決定することを明記している。しかし、過去に適用例はない」(読売新聞)、「これまでは、賛否両論があってまとまらない場合は、反対の総務が欠席や途中退席する形で慣例を守り、党所属の全国会議員の投票行動を縛る党議拘束の有効性を保ってきた」(日経新聞)とのことです。それを、政治学から解説しましょう。
1 民主主義は多数決
ある議員が話していました、「民主主義とは多数決である。これまで全会一致であった方がおかしい」。そうですね。議論を尽くして全員が納得するようにすることは必要ですが、議論しても一致しない場合は、最後は多数決で物事を決めます。それは、自民党内だけでなく、国会がそういう仕組みです。実際は、反対派が退席していたことも、立派な多数決ですよね。
2 全員一致ができたわけ
「これまでは派閥の領袖を説得すれば党内がまとまったが、派閥の結束力の低下で、多数決はやむなし」(読売新聞)との解説もありますが、それは副次的なものだと思います。
基本的には、「全員一致の政策しか実施しない」ことを、続けてきたからではないでしょうか。単純に言えば、右肩上がりの時代にその財源を配分すること、その他の困難な課題は先送りする、ということができたからでしょう。
痛みを伴う改革の場合は、反対派がいるでしょう。それを「全会一致」とすれば、改革は進みません。
総務会長が「今後の前例になるだろう」と、発言しておられます。そうでしょう。もっとも、党則には「出席者の過半数で決し」と書かれているので、原則に戻っただけとも言えます。
3 内閣と与党の関係
「自民、首相出番作らず」(毎日新聞)、「首相、中身より成立。改革イメージに陰りも」(産経新聞)という解説もありました。与党の党首が首相に選ばれる議院内閣制でありながら、日本の場合は「内閣と党の二重権力構造」になっています。これについては、「省庁改革の現場から」p198に書きました。今回も、それを考えさせる事例でした。
三位一体改革の場合は、「続・進む三位一体改革」p143に「与党との関係」で解説しました。また、首相の出番と改革イメージについては、同じくp159の注91、注93を見てください。(6月29日)
30日読売新聞吉田和真記者は、今回の法案の与党修正について、次のような指摘をしていました。
「内容の評価はともかく、立法過程のあり方として、修正合意は前向きにとらえることができる。政府が提出した法案について、国会審議を通じて問題点が指摘され、それを踏まえて政府・与党が協議、決着させたものといえるからだ」「従来、政府の法案は、与党の事前審査制の慣行により、政府・与党間で綿密に調整され、与党が了承した上で国会に提出されている。この時点で、与党は採決時の党議拘束もかける。したがって、提出後、与党は原案通りの成立を目指すことになり、国会審議の形骸化につながっている」

わたくし流

林望著「帰宅の時代」(新潮社、2005年)の表題が気になって、また、リンボウ先生の本は結構好きなんで、読みました。「会社人間だけではだめ」という私の主張(「新地方自治入門」p322、「明るい係長講座」)が、より過激に、リンボウ先生流に書かれています。「アフター5はクールに別れる」「家に帰ろう」「ファッションは何を着るかではない」「他人と違うことに誇りを持て」などなど、うなずくところが多いです。
「勤務時間外まで、仕事でつきあわず、自分の時間を持て」という主義を、私も実行しつつあるのですが、なかなか徹底するのは難しいです。でも、会社も役所も最後まで面倒を見てくれないことが見えた今では、時間外まで組織に忠誠を尽くすより、自分の時間を作ることは必要ですよね。
そのほか、「家庭は個人主義の学校」という主張は、眼を開かれました。家族だって、違った主張や個性を持った存在であり、それが同居していることの意義についてです。