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東南アジアの日本観

NHKニュースによると、外務省が東南アジアの6か国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)で行った世論調査で、日本は信頼できるとした人は90%を超えました。ただし、今後の重要なパートナーとしては中国をあげた人が最も多く、日本は2位でした。

2008.05.01

5月1日の日経新聞に、中西晴史編集委員が、今回のガソリン税の暫定税率復活に関して、「地方、受け身に終始。国頼り、民意向き合わず」を書いておられました。
・・最大の理由は、住民と首長、議員との意識のギャップが大きいことだ。各種世論調査でも、ガソリン税復活に賛成する人は半分以下だ。7割以上が反対という結果もあった。国会に復活を求めるだけの自治体関係者は、ガソリン値下げを求める住民に向かって、道路の方が必要だと説得する気迫は感じられなかった
・・本当に危機感があるのなら、地方自ら何ができるのかを真剣に考えるべきだった。国が暫定税率を廃止する場合、例えば47都道府県で一斉に法定外税を設ける手段もあったろう。法定外税に腰が引けるのは、住民の支持を得られぬまま、増税する自信がないということだろう。
ならば、やはり国に悪者になってもらって、一律にという安易な道を選択することになる。住民と向き合わないままでは、いつまでたっても自治・分権の道は開けない。

保育所に市場原理を

5月1日の日経新聞経済教室は、鈴木亘准教授の「待機児童対策、市場原理で。大幅な財政削減可能、質向上と効率化同時達成」でした。
・・厚生労働省は待機児童数は1.8万人とするが、全国的には100万人近い供給不足がある。8,000億円の財源が必要とされるが、厚労省は財源が確保できないと改革の議論はできないとして、改革をサボタージュしてきた。
しかし、その考え方は全くの間違いである。政府の規制改革会議が提案しているのは、直接契約・直接補助方式の導入と、保育に欠ける要件の見直しの2点である。これで、追加財源はいらず、供給量を増やし、質の向上もできる。
認可保育所入所者は運営費の4分の1程度しか保育料を払っておらず、残りが公費補助である。一方、認可外保育所への補助金はわずかで、これは官業の民業圧迫である。保育所に補助金を出すのではなく、利用者に利用券を与える方式にすれば、競争条件が均等になる・・
提案のように、施設補助から利用者補助に変え、措置から契約に変えた前例として、介護保険があります。詳しくは、原文をお読みください。

その2 政府のパフォーマンスへの疑問

このように、マネージメントは組織(会社、政府)の内部に着目したものです。一方、ガバナンスは、その組織を作った者との関係まで視野を広げます。すなわち、組織を株主や国民から委託された代理人と見なして、どれだけ委託者(株主、国民)の意向を反映しているかを見るのです。
このような議論が始まったのは、次のような背景があります。企業にあっては、会社は株主のもの(アメリカ的考え)か、経営者と従業員などのもの(日本的考え)か、という議論がありました。所有と経営が分離された段階で、所有者(株主)と経営者(会社)との関係が、問題になったのです。オーナー社長の場合は、これが問題になりません。
政府にあっては、国王が国家・国民・政府の所有者である場合は、オーナー社長です。しかし、民主主義になって、国家と政府の所有者が国民になると、委託者である国民と受託者である政府の関係が問題になります。
政府にあってガバナンス論が大きくなったのは、政府の機能不全があります。1970年代まで、日本を筆頭に西欧先進諸国では、政府・経済・社会が蜜月時代にありました。好調な経済成長に支えられ、政府は行政サービスを拡大し、また国民から信頼されていました。しかし、その後、経済成長の低下とともに、財政赤字の拡大、政府の非効率が目立ち、政府のパフォーマンスに疑問が持たれるようになったのです。
行政改革、新自由主義的改革、NPMなど、いくつものアイデアが持ち込まれました。そして、行政機構内部の改革(スリム化・効率化)から出発して、政府の生産物(政策や行政サービス)を問うところまで議論が広がりました。スリム化は、現在のサービスを前提として、効率化を目指します。生産物を問う場合は、そもそも政策が国民の期待に応えているかが、問われます。顧客重視です。続く。