その2 政府のパフォーマンスへの疑問

このように、マネージメントは組織(会社、政府)の内部に着目したものです。一方、ガバナンスは、その組織を作った者との関係まで視野を広げます。すなわち、組織を株主や国民から委託された代理人と見なして、どれだけ委託者(株主、国民)の意向を反映しているかを見るのです。
このような議論が始まったのは、次のような背景があります。企業にあっては、会社は株主のもの(アメリカ的考え)か、経営者と従業員などのもの(日本的考え)か、という議論がありました。所有と経営が分離された段階で、所有者(株主)と経営者(会社)との関係が、問題になったのです。オーナー社長の場合は、これが問題になりません。
政府にあっては、国王が国家・国民・政府の所有者である場合は、オーナー社長です。しかし、民主主義になって、国家と政府の所有者が国民になると、委託者である国民と受託者である政府の関係が問題になります。
政府にあってガバナンス論が大きくなったのは、政府の機能不全があります。1970年代まで、日本を筆頭に西欧先進諸国では、政府・経済・社会が蜜月時代にありました。好調な経済成長に支えられ、政府は行政サービスを拡大し、また国民から信頼されていました。しかし、その後、経済成長の低下とともに、財政赤字の拡大、政府の非効率が目立ち、政府のパフォーマンスに疑問が持たれるようになったのです。
行政改革、新自由主義的改革、NPMなど、いくつものアイデアが持ち込まれました。そして、行政機構内部の改革(スリム化・効率化)から出発して、政府の生産物(政策や行政サービス)を問うところまで議論が広がりました。スリム化は、現在のサービスを前提として、効率化を目指します。生産物を問う場合は、そもそも政策が国民の期待に応えているかが、問われます。顧客重視です。続く。