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経済財政4

20日の東京新聞「新生経済財政諮問会議民間議員に聞く」、伊藤隆敏議員の発言。
「小泉・竹中チームと、安倍・大田チームがよく比較されるが、日本経済が置かれている状況は全然違う。小泉・竹中チームの2002年、03年は不良債権が大問題で、旧体制をまず壊すという改革が重要だった。いまは、経済成長率も高くなり、期待されているのは成長をいかに持続していくかということだろう。壊れた後に新しい建物を建てる、創造する、というのがわれわれの置かれている状況だ」。(10月21日)
今日、経済財政諮問会議が開かれ、重点改革分野と第1回の集中審議・地方の改革が行われました。地方の改革がなぜ1番目に選ばれたかは、定かではありませんが、重要な改革課題と認識されていることは間違いないようです。それは、喜ばしいことです。有識者提出資料(民間委員ペーパー)は、詳しくは本文を見ていただくとして、私なりに考えたことを述べます。
今回のペーパーの特徴です。まず、分権改革(権限と責任を地方に移す一括法)と、その先の道州制を明確に位置づけました。これは、前書き(本文)と、項目1です。次に、その分権改革の具体項目を書いてあります。項目2~4です。数値目標と期間が明示されています。そして、3つめが歳出削減です。これが項目5、6です。このように、3つの部分からなっているようです。
これまでの諮問会議、骨太の方針との違いは、抜本的分権のための、次なる道筋を明らかにしたことでしょう。これまでの到達点(第1次分権改革、三位一体改革)を踏まえ、次なる道筋を示しました。項目1~4までは、これまでの諮問会議、骨太の方針にないことです。もっとも、これは有識者資料であって、まだ骨太の方針や閣議決定になっていません。反対勢力もあるようですから、これからも紆余曲折があるようです。
今朝の新聞に未公表資料が出ていたようで、記者さんから質問(詰問)がありました。
記「なぜ出るのでしょうかね、しかも、いつも同じ新聞社です(私にも教えてくださいよ。そうしないと私の立場がありません)」
全「そう言われてもねえ。有識者が書いておられるし。もし、僕が持っていても、出すわけにはいかないよ」
記「じゃあ誰が出すのですか」
全「第一次当事者でなく、それをもらった人。その人は資料の機密度は知らないから、お気楽に出すね。もう一つは、漏らすことで、つぶしたい人だね」
記「なるほど」
(10月24日)
今朝の各紙は、昨日の経済財政諮問会議を報道していました。日経新聞は「新分権一括法案3年以内に、国・地方の税配分明記」でした。読売新聞は「5兆円移譲議論スタート、自治体格差是正カギ」でした。
民間委員ペーパーで論点が設定され、関係者も同意して方向は定まりました。これからは、その目標に向けて、問題点を解決していく過程に入ります。その問題点は、簡単なものではありません。簡単なら、とっくに解決していました。何かを犠牲にしなければ、みんなが喜ぶ解決はありません。地方団体や分権改革を進めようとする人たちは、その解決策を提案する責任があるのです。それを提案しない限り、守旧派は「問題がある」といって、改革を先送りします。(10月25日)
29日の日経新聞読書欄「経済論壇から」で、大竹文雄教授は次のように書いておられました。
安倍内閣の経済政策を担当する経済学者を紹介して、「今後、政策運営にどの程度経済学的な知識が反映されていくのかについては、まだ不明な点も多い。しかし、経済政策の決定に、専門的な知識が不可欠であるという認識が高まってきたことは間違いないだろう・・・政治的な意思決定が教科書的な経済学ですべて決めることができるほど単純でないのは当然である。しかし、経済学者が政策に参加することのメリットは、経済学的な思考実験を行って、政策のメリットとデメリットを整理することができる点にある」
「経済政策や規制の設計は、日本では利害関係者が調整をするという形で決められることが多かったのではないか。例えば、八代氏は・・・労働市場の改革を、労使間の利害調整に終始する労働審議会だけで審議する時代はもはや終わったのではないか、と述べている。こうした中、政府税調が利害調整の場から専門家集団に衣替えされることは注目すべき変化だ」。(10月30日)
今日は、経済財政諮問会議が開かれ、社会保障改革と公共投資改革が議論されました。有識者ペーパーには、総量削減の他、地方との役割分担についての記述もあります。(11月10日)
15日の朝日新聞時々刻々は、「さえない最長景気」を解説していました。1965~70年のいざなぎ景気、86~91年のバブル景気、2002年~現在の最長景気の比較が、わかりやすい表になっています。平均実質経済成長率は、順に、11.5%増、5.4%増、2.4%増です。物価は、27.4%増、8.5%増、今回は0.4%減です。月給も、79.2%増、12.1%増、1.2%減です。景気拡大、好景気が続いているといっても、内容が全く違います。(11月15日)
29日の朝日新聞「どうする財政」は、「借金大国。果実、返済か分配か」でした。「不況時の財政悪化は仕方ないが、警戒回復期の税収増でその穴を埋める、というのが財政学の基本だ。ところが日本では国債発行を始めた1965年度以来、普通国債残高(国の借金)が減ったことが一度もない。不況時だけでなく、好況時にも税収増の果実をばらまき続けたからだ。典型がバブル期の・・」
その通りです。これについて、2点指摘しておきます。
この記事にあるように「不況時には国債を発行し、好況時にはそれを返す」と、経済学の教科書は書いてあります。これがケインズ政策の有効需要創出策です。しかし、日本はケインズ政策をつまみ食いしてきました。不況期には国債を増発して需要を作りますが、景気回復時に国債を繰り上げ償還しないのです。すべて60年償還なのです。ところが、このことを指摘した本が見あたりません。私の勉強不足で、書いてある本があったらお詫びします。私は、新地方自治門」p121~でその点を解説しました。ようやく、気がついてくれたかと、喜んでいます。
もう一点は、国はしませんでしたが、地方はバブル期に借金を繰り上げ返済しました。これも同じくp122に書いてあります。詳しくは「地方交付税-仕組と機能」p85をご覧ください。国がバブル期にそれまでの国債を繰り上げ償還しておけば、こんなに借金は貯まっていなかったはずです。(11月29日)
今日の諮問会議では、予算編成の基本方針も決定されました。今週はそれに先立ち、与党審査が続きました。基本方針は閣議決定されるので、与党の事前審査が必要なのです。説明側の一員として出席しましたが、再チャレンジや地方財政で質問が飛んできて、私の出番もありました。(2006年11月30日)
国民一人あたりのGDPの最新数字が、公表されました(13日付け日経新聞など)。それによると、日本は35,650ドルで、世界では14位に後退しています。1993年には35,000ドルで世界一位、その後4万ドルを超しましたが、現在では90年代前半の金額まで減少しました。
「新地方自治入門」p6では、2001年までのグラフを示しています。日本の金額はさらに減っています。問題なのは、「西欧各国は日本の3分の2」と示してあるのが、現在では、日本と同程度または追い抜いているということです。すなわち、「日本は欧米先進諸国を目標に、追いつき追い越した」と説明していましたが、「その後日本は後退・低迷した」のです。この部分は、記述を変えなければなりません。
(日本社会の構造改革)
無理をしてまで、世界一になる必要はありません。また、経済成長だけが日本社会の目標でない、というのが拙著の主張です。しかし、絶対額として低下することは、日本の活力を損ないます。一時的なものは許容できますが、長期的構造的なのは問題です。もちろん、日本が構造改革をするために必要な過渡期「ため・たわみ」ならば、それはよいことも言えます。
そうしてみると、この長期不況は、バブルの崩壊という高い授業料をはらう時期だった他に、遅れた金融改革とその後の改革によるもの、グローバル化による日本経済の護送船団方式から競争への転換、アジアの追い上げによる産業の転換などの時期だったのです。
それらの波は、銀行の破綻から、今議論されているように、労働市場改革に及んできています。働き方、子育て、年金まで広がるのでしょう。これらの変革をうまくできるか、遅れたり先延ばしにして、さらに世界から取り残されるかです。すでにバブル崩壊から、15年が経ちました。第二次世界大戦後は、11年で「もはや戦後ではない」と政府が宣言しました。明治維新(廃藩置県、地租改正、徴兵令、学制、経済制度改革)や戦後改革では、制度改革はもっと短期間にやっていますから、そのスピードはすごかったのですね。今回は、勉強期間としては、長すぎるとも思えます。(2007年1月13、14日)

このページでは、私の勉強術、資料の整理や執筆の方法を、書いてあります。皆さんそれぞれに、技術をお持ちだと思いますが。もちろんこの表題は、梅棹忠夫先生の名著を借りています。
文章の書き方のコツは、「明るい係長講座」に書いてあります。書斎については、新居顛末記をご覧下さい。

(紙)
私は、近年は原稿などはパソコンのワープロで書くのですが、その骨子は手書きです。まずは、紙に書かないと始まらない、考えがまとまらないのです。紙に項目を並べて、それをつないで骨子を考えます。このしかたは、「明るい係長講座」に書いてあります。
ペンの場合は、指先と脳とがつながるのですが、パソコンのキーボードと脳とはつながっていないようです。一番の理由は、手書きの場合は、平面に絵を描くように事項を書き並べ、それをつないでいきます。事項の配置が、私の脳の中の画面とつながるようなのです。その点、パソコンの画面は、字はきれいですが、配置は自由にならず、単線的に並んでしまいます。まあ、紙に鉛筆で書くように、配置を決めて打ち込めばできないことはありませんが。
そこで、次に、紙とペンが問題になります。紙はどんなものでも大丈夫です。どうせすぐに捨てるのですから。コピーした紙の裏で十分です。もっとも、職場では罫紙を使います。旧自治省には、線が赤い罫紙と線が薄い青の罫紙がありました。私は、目に優しい青の罫紙が好きでした。これは、コピーしても罫線が出ないので、重宝していました。資料を切り貼りするときには、罫線が切り抜きを貼り付ける際の基準線になるのです。
総務省になったら、青い罫紙がなかったので、会計課にお願いして作ってもらいました。罫線の幅も広くて、字の大きい私には好都合でした。内閣府には、線が薄い草色の罫紙があるので、それを使っています。やや罫線の幅が狭いようで、これが少し難点です。紙の質も、総務省の方が良かったような気がします。まあ、メモを書く分には問題ありません。
上司に重要な相談をするときは。万年筆で書きます。そうしないと、私の意思が伝わらないような気がして。その際には、愛用のペンの滑りが良い紙が好ましいのです。簡単な報告はワープロで良いのですが、そんなのは私が打たず、部下が作ってくれます。
家では、これに似た市販の罫紙を使っています。紙質が良すぎるのが欠点です。丸めて捨てる時に、あまり紙質の良いのは困りものです。しょっちゅう書いては捨てるのですから。かつては、出版社からあてがわれた原稿用紙を使っていました。B4判で200字は、ちょうど手頃でした。さすがに本職用なので、紙質も良く、といって丸めて捨てるにもちょうど良い程度だったのですが。もう見なくなりました。

書斎ではゆっくりできない?

今日は、東京財団の月刊誌日本人の力に載せる地方分権の実行力と推進力を校正。別に頼まれていたエッセイやら、メモを作成。いくつもきていたメールでの問い合わせに返事を書き・・・。それはそれで、充実しているのですが、何か変なのです。それを、先日から考えていました。
書斎を造って、そこでゆっくりと好きな本を読むというのが夢でした。そして、書斎を造るまでは成功しました。しかしなぜか、ゆっくりと本を読む方は、実現しません。それはどうしてだろうか。答は、私の書斎は趣味の場でなく、仕事の場になっているということです。余暇・消費としての読書でなく、仕事・義務としての原稿書きが主なのです。いつになったら、書斎が余暇の場になるのやら。午後の紅茶を運んできてくれた娘が、「そんなの、当分無理やわ」。そうでしょうね。

新しい仕事7

18日の朝日新聞は、大きく再チャレンジを書いてくれました。ありがたいことです。政府が本腰を入れていることが伝わるだけでも、効果があると思います。再チャレンジ施策は、ハードパワーでは解決できない問題です。道路整備は、予算があればできます。預金者を守ることは、金融庁が銀行に業務停止命令(規制)をかければできます。これらは、ハードパワーです。再チャレンジ施策は、これから有効な方法を整理しますが、予算と法律だけで解決できる課題ではなさそうです。それは、採用形態・労働慣行・社会の意識まで変える必要があるのです。政府がどれだけそれを誘導できるかが、問われるのでしょう。ソフトパワーを、動員しなければなりません。その点、記事などで関心を喚起してもらうことは、ありがたいです。
もっとも、今朝の記事は、「再チャレンジはや失速?」という見出しです。友野賀世記者、この見出しはひどいんじゃないですか。私たち担当室は、先週発足したばかりです。再チャレンジ飛行機は、滑走路に向かって走り出したばかりです。失速する以前に、まだ飛んでいないのです。記事の次の見出しは、「対策室設置し本腰」と書いてあるじゃないですか。二つの見出しが、矛盾してますよ。お礼とともに、抗議しておきます。