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予算を審議しない予算委員会
知事が地域の雇用を考えるとき
21日の朝日新聞「私の視点」に、平井伸治鳥取県知事が「ハローワーク、地域に合った住民本位の工夫を」を書いておられます。
・・昨年11月末になって、今度は県内5か所のハローワークのうち2か所を閉鎖するとの国の方針が出され、怨嗟の声が上がった。狙われたのは県内でも求人倍率の低い地域で、昨年12月には0.36倍まで低下したところもある。地域を挙げて産業振興を図り、働く場を何とか確保しようとしている矢先に、仕事を探し求める場が閉ざされてしまう不条理。年末にこれらの問題を国に訴え、求人開拓員を雇う県など他にない、と桝添厚労大臣に閉鎖撤回を直談判したところ、撤回こそならなかったが、求人開拓の職員増をはじめ閉鎖代替支援の特別の温情が国から示されるに至った・・そこで新年度から、閉鎖される区域に鳥取県独自で「ふるさとハローワーク」を創設することにした。ハローワークは国の組織という固定観念にとらわれず、国の支援を活用し、県職員も加え、市町も協力して新組織をつくるのである・・
知事が、地域の雇用を考えることさえ、「国の温情」にすがらなければならないのです。
社会を安定させる、つきあいと生き甲斐
大村敦志『フランスの社交と法』(2002年、有斐閣)が、勉強になりました。先生は、東大法学部の民法の教授です。フランスでの暮らしをもとに、社会(Societe)をつくっている社交(societe)とそれを支える「法」について、日仏の違いを分析しておられます。その切り口は、「余暇」「近隣」「結社」です。
個人は、一人では生きていくことはできません。近代社会は、個人を束縛から自由にすることを目指しました。しかし、農村社会や大家族から解放されたとき、個人は国家や市場とむき出しで付き合わなければならなくなりました。
フランス革命を経て、近代市民社会に入ったフランスは、いち早くこれらの問題に直面しました。教会、ギルド、身分制社会でなりたっていた旧体制を打破するため、革命はあらゆる結社を禁止したのだそうです。
個人を社会とつなぐものが、付き合いであり、中間団体です。NPO(フランスではアソシアシオン)、地縁などが、再認識されたのです。
先生は、「つきあい」と「生き甲斐」を副題にしておられます。個人の外面を捉えると、つきあい・社交の重要性です。内面では、生き甲斐です。これは、豊かになったが故に、職業生活だけでは満足が得られなくなった、あるいは働くことだけであくせくしなくて良くなったからです。
私はこのことを、「新地方自治入門」第8章「公の範囲は」で、中間団体の機能を中心に述べました。
かつての日本では、地域社会、お寺や神社の行事などで、社交とつきあいがありました。それが急速になくなりました。そのような、地域での半強制的なつきあいでなく、新しい形の社交が求められているのでしょう。
先進地視察
19日の読売新聞夕刊「介護の心」に、三好春樹さんが「先進地視察、行き先は日本」を書いておられます。
・・福祉や介護の関係者は、かつてはよく、海外視察に出かけたものだ。ヨーロッパ、特に北欧の施設を見学するものが多かった。今では下火になったとはいえ、まだまだ「先進地視察」といえば北欧である。
私は、海外旅行は趣味だが、仕事がらみで海外に行ったことはない。文化の違う外国に行くより、日本の中でいいケアをしている現場を見た方が、よほど役に立つと思っているからだ。
すると、大手の旅行会社が、三好春樹と行くほんとのケアを訪ねるツアー、というのを企画してくれることになった・・
そのうち、かつて私たちが学びに行ったヨーロッパからも見に来るようになるだろう、と私は本気で思っている・・
このツアーは好評で、キャンセル待ちも出ているそうです。
読んで、我が意を得たりです。もう日本は、発展途上国ではないのです。諸外国に学ぶ謙虚さはよいですが、外国だけをお手本にするのはやめたいですね。
(これからは、日本が受け入れる番)
かつて私も、ヨーロッパに視察に行きました。北欧のある国で、「日本人は勉強熱心だ。毎年たくさんの人が、視察に来る。熱心にメモを取るし、資料もたくさん持って帰る。でも、なぜ日本人同士で、情報を交換しないんだ。ヨーロッパまでこなくても、視察に来た人に聞けばいいのに」と聞かれたことがあります。
「イヤー、視察という名目で、海外旅行を楽しんでいるんですよ」とは、言えませんでした。
さて、これからは、世界各国から、視察団を受け入れる番です。日本の進んだ行政をお見せして、ホテルや観光地で稼ぎましょう。これまで日本人が、パリやロンドンに落としたお金を、回収しなきゃ。
国内から視察団を受け入れるという、ビジネスモデルもあります。福祉や環境行政で、先進的なことをするのです。それを新聞や雑誌でPRして、各市町村からの視察団を受け入れるのです。条件は、市内に泊まること。安い費用で、儲かりますよ。