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日本はどこへ行くのか・その4

しばらく放ってあった「日本はどこへ行くのか」の続きです。今回は、要因の3「リーダー」です。
私は、社会を発展させるのは国民の活動であって、リーダーではない、と書きました。例えば、キャッチアップ型発展を選んだ後、高度成長の成功は、リーダーの判断によるというよりは、国民の働きによるところが大きいでしょう。
しかし、いま、第3の転換点を迎え、リーダーの役割が重要になっています。なぜ、矛盾したようなことを言うのか。それは、国民が進むべき道を悩んでいる、これまでの道では解決しないからです。そこで、リーダーの出番が出てきました。
リーダーの判断には、二つの次元のものがあると思います。日々の判断と、大きな変革期のものと。いま問われているのは、後者のものであり「進むべき道を示すこと」です。
近代日本の3つの転換点とは、よく言われるように、明治維新と戦後改革と、今回です。3つの成功の後に来た、停滞と危機です。最初は、徳川幕府による平和と安定の後に来た、列強からの遅れと植民地化の危機。これを、開国と明治維新で、転換に成功しました。次は、明治国家の成功の後の来た敗戦です。これを、民主化と開発型成長に転換しました。そして、いま、高度経済成長の成功の後に来た停滞に悩み、次の転換を模索しています。
国民に対し、進むべき道を指し示すのがリーダーだとすれば、現時点でのリーダーには、次のようなことが期待されます。一つは目標を示すことです。裏から言えば、戦うべき敵を示すことです。もう一つは、その目標を達成するための道筋です。そしてそれを国民に納得させることでしょう。
国民は、エネルギーを持っています。それを引き出し、ある方向に導く。明治維新の時も、戦後改革の時も、国民は自信を失いどう進んだらよいか、大いに悩みました。議論は別れ、路線対立も激しかったです。それを統一する過程が、リーダーの力量なのでしょう。大久保利通と吉田茂を、代表にしておきます。
明治国家の成功を、司馬遼太郎さんは「坂の上の雲」という小説にしました。そこでは、雲が一つでした。そして上る坂道も。もし国民が、一人ずつ違った雲を目指して、別々の山を登ったら、国家としては、これほどまでに成功しなかったでしょう。
目標を示し、道筋を示す。そして、国民のエネルギーを導くこと。過度に自信を失っている国民に、自信を取り戻させること。これが、転換期のリーダーの仕事です。

ガラパゴス化する日本

吉川尚宏著「ガラパゴス化する日本」(2010年、講談社現代新書)を読みました。
吉川さんも、日本の失われた20年の原因はガラパゴス化にあると、述べておられます。そして、日本製品のガラパゴス化、日本という国のガラパゴス化、日本人のガラパゴス化の3つを、分析しておられます。
ガラパゴス化という言葉は、携帯電話から始まりました。それは、工業製品にとどまらず、医療、大学といったサービスもガラパゴス化しています。
本では、脱ガラパゴス化した例を、いくつか紹介しておられます。ヤクルトレディや公文式(算数塾)といったサービス業が、国外で大きく成功していることは、初めて知りました。
なぜ、日本でガラパゴス化が起こったか。私は、次のように考えています。モノが国際化しているだけでは、ガラパゴス化は起こりませんでした。昔から日本は、石油を輸入し、製品を輸出していたのです。先進国に追いつこうとしていた時代は、欧米の製品を目標に、欧米で売れる製品を作りました。
ところが、日本が世界に追いつき追い抜いた時、世界最先端の技術と、1億人のマーケットという条件が、国内での満足を生み、皮肉なことに日本をガラパゴス化させました。
しかし、それだけでは、日本は取り残されません。1990年代以降、アジアや東欧の国々が国際経済に参入して、日本のもの作りの優位性は失われました。合わせて、モノの国際化にとどまらず、サービス、カネ、ヒト、規準などの国際化が進みました。
日本の特殊に優れたモノとサービスは、置いてきぼりを食らいます。新しく広がる新興国のマーケットに、食い込めません。一方で、日本の市場は飽和し、人口は減少しつつあるのです。
世界で競争せず、国内で満足する。これが、日本のガラパゴス化が生む、経済社会の停滞です。

卒業式の楽しみ

昨日26日は、幹部科の卒業式でした。約2か月間の教育訓練を終えて、77人の学生が、各消防本部へ帰っていきました。
卒業式では、一人ひとりに、私から卒業証書を渡すのですが、その際に密かな楽しみがあります。まず、壇上で演台をはさんで、学生と向き合います。そして、証書を渡す前と渡した直後に、学生の顔と目を見ます。学生からすると、校長からにらみつけられる、に近いでしょうが。
それぞれ顔つきは違いますが、みんな「良い顔」「よい面構え」をしています。私をにらみ返す眼力にも、力が入っています。これで、彼らは立派な幹部を務めてくれると、安心し、うれしくなるのです。もちろん、制服姿、背筋は伸び姿勢もよいです。
成績優秀者には、別に表彰もします。表彰状を受け取る際の、学生の晴れやかな顔も、良いですね。
校長にしか味わえない、楽しみです。

最近のホームページ

ある知人との会話
彼:ホームページを再開してから、かなり頻繁に書いていますね。
全:そうやね。時間に少し余裕ができたから。
彼:でも、地方行財政に関する記事が、少なくありませんか。
全:確かに。このホームページは、地方行財政が中心だったんだけどね。ここのところ、私の仕事が違う分野になって、動きを追いかけていないのよ。
交付税課長を離れてからは、官房総務課長で国会関係を2年半。その次は内閣府官房審議官で2年間、経済財政諮問会議や再チャレンジの仕事。2か月間の自治財政局審議官を挟んで、総理秘書官1年だからね。
彼:話題が、いろんなところに、広がっていますね。
全:広がると言うより、発散している。反省しています。近年、いろんな仕事をさせてもらったから。それも、広く行政を見るという立場だった。感謝してます。
もう一つは、とてつもなく忙しい仕事から解放されて、その反動で、たくさん本を買い込んで、読んでいる。その本もいろんな分野にわたって、とりとめがなくなって。さらに、少し読んでは、次の本に手を出すから、収拾がつかなくなっているのよ。
書斎の床や寝室の隅に、読みかけの本や買って読んでない本が、積み上がりつつある。困ったものだ。どこかで戦線を縮小して、範囲を絞り込まないといけないね。