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現地職員の休息

この仕事に就いて、いろんなことを勉強しました。その一つに、R&R(Rest and Recreation)があります。これは、被災地や紛争地で支援活動を行う際に、職員が一定期間の活動した後、少し離れた土地で休息や気分転換をする制度です。NGOや国連などで、採用されています。もとは、アメリカ軍が始めた制度だそうです。
被災地などでは生活環境が悪い上に、休息が取れません。休日というのが無く、休みを取ってもゆっくりできませんよね。そこで、近くで安全な場所に強制的に引き上げさせ、休息を取らせるのだそうです。そうしないと、職員の疲労がたまり、活動水準が落ちるのです。
海外の例では、スーダンでの紛争地で活動する場合は、ケニアのナイロビに引き上げさせる。アフガニスタンでの活動の場合は、タイのバンコクに引き上げさせる例を教えてもらいました。8週間、現地で活動すると、8日間の休暇をとらせます。そのために、交通費や宿泊費を出すのだそうです。

NGOの人たちと意見交換をした時に、教えてもらいました。それは、被災市町村の役場職員の健康を、気遣ってのことです。職員は、住民のために休みを取らず仕事をしています。聞くと、休みを取ると、住民から批判される場合もあるのだそうです。そして、職員も多くは被災しています。自宅が流された場合は、役場に泊まり込んでいます。最初の頃は着替えもなく、風呂も入れず、大変な環境でした。
その状況を、NGOの方が心配してくださったのです。「県庁や東京に呼び出して、3~5日の休暇を与えられないか」という提案もありました。現地説明会では、私も提言したのですが、実現しなかったでしょうね。日本人はきまじめですから。でも、長い目で見ると、この制度は合理的ですよね。精神主義だけでは、長続きしません。

政党の役割

朝日新聞6月25日朝刊オピニオン欄は、佐々木毅先生と宇野重規先生の「地に落ちた政治、求心力を取り戻せるか」でした。
佐々木:選挙とか支持率とか、目先のことを優先して政治権力をつくってきた。その結果、政権、権力が摩滅するプロセスが4、5年続いていますね。「権威」はかなり前になくなっているが、「権力」もすぐに不安定化、弱体化することが繰り返されている。与党であれ野党であれ、選挙以外ほとんど何もしない政党の限界だと思います。
・・・制度改革の中で「政党」はブラックボックスでした。楽観していたわけではないが、立ち入らないでいました。でも、ここまでくると、外部がどこまでかかわるのか議論はあるが、政党にお任せだとおかしくなってしまいかねない・・
宇野:民主党はまさに政治改革の結果、生まれた政党といえますが、いかなる価値や理念を目指す政党なのか、いまだに分からない。右から左までまとまりがなく、自民党がもう一つできたようなものだという人もいます。
佐々木:「自民党に代わる政権政党」が民主党のアイデンティティーでした。政権につかなければ、党内秩序のうえでも党を成熟させるうえでもそれで十分だった。しかし、政権を取っちゃった以上、それでは不十分です・・
宇野:民主党は政策を煮詰める前に政権につき、迷走した。社会保障はその象徴ですね。

宇野:グローバル化が進むなかで、雇用が流動化し社会不安定化している。それにどう向き合うかというときに、日本政治はリアリティーを欠いたまま迷走している、と。
佐々木:最近の政治家はすぐに処方箋の話をするけど、その前に診断がない。「こうだから、こうしたらこうなる」と詰めて議論する習慣が失われ、「こうすればいい」とだけいうのが目に余る。これはやぶ医者です。丸山真男さんは「現実は可能性の束」と言ったが、どういう可能性がどこまであるかを追求するというのは、ぎりぎり頭を使う作業です。そうした現実にしつこくこだわり、それを変えていくという政治的習俗が弱体化している。ちょっと気が利いたことを言って終わりという、根無し草的な政治になっています・・
詳しくは、原文をお読み下さい。

平常化への進捗状況、被害額推計

5月20日に、「被災地における生活の平常化に向けた当面の取組方針」をつくりました。1か月経ったので、主な項目の進捗状況をまとめました。それぞれは、既に随時公表しているものです。
また、内閣府防災統括官が、今回の大震災の被害額の推計を発表しました。それによると、約17兆円です。阪神淡路大震災は、約10兆円でした。農林水産関係の被害が大きいです。

被災地の人口減少と高齢化

今回の被災地は、過疎地域も多く、人口減少や高齢化に悩んでいる地域が含まれています。その数字を、まとめてみました。人口減少については、過去10年間とこれから10年の見込みです。高齢化率も、10年前、現在、10年後の予想を並べてみました。特に人口減少が激しい市町村が目立ちます。これらの数字は、大震災前のものです。大震災がどのように影響するのか、心配です。

現在の執務室

広報チームが、記録のために、現在の執務状況を写真に撮ってくれました。「現状・取組」の下についている写真です。そのうち上の2枚は運営会議の様子、下の左2枚は当初の講堂での執務風景です。これは、かつて紹介しました(4月21日の記事)。
下の右が、現在の状況です。手前で資料を見ておられるのが上田審議官、その左奥で立って腕まくりをしているのが私。私の前に写っているのは、プレハブ庁舎で熱いので、机の上で回っている扇風機(とほほ・・)。その右に写っているのは、手前から、N企画官、H参事官(後ろ姿)、M参事官、E参事官(後ろ姿)、M参事官たちです。

申し訳ないことに、私は両袖机(引き出しがあります)ですが、職員たちは会議机で引き出しもありません。机に載らない書類などを、横に置いたパイプ椅子や床に並べています。元の省にいたら、課長として立派な机にいた職員も、ここでは会議机です。30数人が、ここに詰め込まれています。適当な部屋がなかったので、こういう状態です。
良い点もあります。私も、個室ではなく大部屋に職員と一緒にいるので、仕事の様子がよくわかります。職員も、すぐに私に報告や相談ができます。私も、すぐに職員に声をかけることができます。ちょっとしたことを聞くのに、次長の個室に入る、あるは私が個室から出ていくのは、めんどうですよね。その点、大部屋は便利です。
もっとも、それは悪い点でもあります。職員にとっては、一日中、目の前にうるさい上司がいるのです。さらに、一生懸命仕事をしているときに、私がつまらないギャグを飛ばすので、迷惑でしょう。たぶんこの写真も、みんなは仕事をしている、私はそれを邪魔しているという状況でしょうね(苦笑)。