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法律の改正と法律の輸出。自信が遅れを作る

内田貴著『民法改正―契約のルールが百年ぶりに変わる』(2011年、ちくま新書)が、勉強になります。現在進められている民法(契約法の部分)の大改正作業についての本ですが、最初に、民法とはどのような役割を果たしているか、社会における機能をわかりやすく解説してあります。経済と法、社会と法という観点から、民法をとらえています。大学生の時にこの本を読んでいたら、もっと頭に入ったのに。
詳しくは本を読んでもらうとして、ここでは、日本の民法が100年間も大きな改正なしに来たことや、輸出しなかったこと、国際共通化に遅れたことを、取り上げます。

契約法は、市民社会での取引を支えるインフラです。市場や国家が統合されると、あるいは統合する際に、民法典が定められることになります。ナポレオン法典、プロイセンドイツ、明治民法典です。経済のグローバル化が進むと、各国の契約法の共通化が必要になります。今、世界は、その時期を迎えています。

フランス民法典やドイツ民法典は、世界に輸出されました。明治日本も、ドイツ民法を輸入しました。しかし、日本はその後、日本民法の輸出に熱心ではありませんでした。最近は東南アジアで、法典作成のお手伝いをしていますが。
そして、国際取引法(ウィーン売買条約)の批准も遅れました。日本人法学者が事務局長を務めたのに、日本の大企業は、不要だと主張したそうです。
国際条約、契約法の国際標準化は、経済のインフラです。その作業に参加し、日本の主張を取り入れさせるか、他国がつくった制度を輸入する=従うか。日本企業にとっても、大きな違いです。
成功した組織が、新しい改革に乗り遅れる例ですね。民法典を100年間改正しなかったことも、法学界の内弁慶の表れでしょう。

被災地経済、復興の格差

10月8日朝日新聞朝刊経済面、大山健太郎アイリスオーヤマ社長・仙台経済同友会代表幹事のインタビューから。
「大震災から半年が過ぎ、被災地の復興はどこまで進みましたか」との問いに。
・・2つの格差がある。ひとつは業種間の格差。地域の代表だった東北電力や地元銀行、水産業は元気がないが、復旧工事を手がける建設・土木業界は人手が足りないほどに忙しい。応援部隊やボランティアが被災地に入り、ホテルや温泉旅館も活況だ。
もうひとつは地域間の格差で、津波にあった地域はまだ厳しく、それ以外の地域は5月の黄金週間以降、通常のビジネス環境に戻ってきている・・

復興関係予算と特区、復興庁の案

今日10月7日夕刻、総理官邸で、復興本部会合を開きました。議題は、次のように盛りだくさんでした。
1 第3次補正予算(そのほとんどが復興経費)の骨格と復興財源確保法、増税のあらまし(財務省資料
2 第3次補正予算の中の復興関係事業のあらまし、同じく福島県の原子力事故からの復興関係予算
3 復興特区と復興交付金の案
4 復興庁の案
第3次補正予算は、これから正式な政府案となり、次の臨時国会に提出されます。多くのメニューとかなりの金額を、用意しました。地方団体の要望に、お応えできると思います。準備ができたら、地方団体に説明会を行います。
復興特区と復興交付金は、補正予算関連なので、予算案とあわせて提出します。復興庁法案も、臨時国会に提出する予定です。それぞれ、今日お示ししたのは概要なので、詰めを急ぎます。またその過程で、地方団体への説明を行う予定です。

このように最近は、国会審議への対応、制度の詰め、現地視察や意見交換会、現地から持ち込まれる個別課題への対応、今日の会合準備、そのほかにこのホームページに書いていない仕事など、事務局は毎日てんてこ舞いです。職員が手分けをして、頑張ってくれています。

復興、国の役割

記者さんと話していて、時々???と、思うことがあります。何人もの方が、「強力な復興庁ができたら、事業が早く進みますよね」と、おっしゃいます。ちょっと違うんです。
その場合に、どのような事業を、考えておられますか。道路や学校、住宅でしょうか。すると、市町村道は市町村の仕事、県道と国道のほとんどは県の仕事です。国の直轄国道は、そんなに多くありません。幼稚園や保育園と小中学校は市町村の事業、県立高校は県の仕事です。国が建設する学校は、大学くらいです。住宅の多くは個人のもので、商店は個人か会社のものでしょう。市営住宅なら市です。鉄道ならJRでしょう。病院は個人立か市や県立です。
そうなんです、国が直接工事をする事業は、ほとんどありません。復興庁が強力な権限を持っても、する事業はそんなに多くありません。厚生労働省が個人病院を復旧するとか、経済産業省がコンビニを作るのは、想定しにくいです。

このホームページでも何度か書いているように、地域の復興の主体は、住民と会社と市町村役場です。国の役割は、国が市町村の道路や学校を建設することでなく、市町村や個人と会社が復興事業をしやすくすることです。復興庁は、そのために強力な権限や手法、そして組織を持たなくてはなりません。
国から目線でなく、市町村目線で考えてみてください。市町村は、何をしてほしいか、どうすれば街の復興がうまく進むか。町に足らないこと、それはお金、専門知識と専門家です。街の復興を妨げるもの、それは複数にわたる申請、複雑な規制でしょう。
すると、国=復興庁はそれを変える権限と組織を、持てばよいのです。街の復興計画策定の助言をすること、お金を支援すること(補助金や交付金)、規制や手続をやりやすくすること(特区制度)、それぞれの事業の進度を調整することです。

そして、道路や建物を建設しただけでは、街の復興になりません。学校や病院、商店が再開されて、初めて街が機能します。さらに、働く場がなければ、住民は暮らしていけません。それらは、復興庁が権限を持っても、実現することではありません。また、まちづくりの計画策定の際に、住民の同意を取り付けること。これは、強力な復興庁ができても、すぐにできることではありません。

今日は、参議院復興特別委員会審議

今日は、昨日に引き続き、参議院復興特別委員会で、総理出席の集中審議でした。昨日今日と、委員会審議を見守りました。私の出番はないのですが、何か支障が生じた時の備えとしてです。
一方、復興本部事務局では、復興特区制度や復興庁法案の検討を急いでいます。各省は、第3次補正予算の内容を、詰めてくれています。