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企業の社会的責任

東京財団の亀井善太郎研究員が、「CSR再論―いま、改めてCSRを問い直す」を書いておられます。なかなか興味深いです。
公共空間が、行政だけでなく、企業(市場経済)やボランティア(非営利活動)によって成り立っていることは、このホームページでも、何度も主張しています。また、復興の過程においても、それらが必要であることも取り上げています。例えば、「被災地で考える「町とは何か」~NPOなどと連携した地域経営へ~」(共同通信社のサイト「47ニュース」2012年8月31日)。
企業の社会への貢献は、大きく分けると「善意による支援」と「本業を通じた貢献」の2つになるのでしょう。しかし、多くの人には、前者の義援金、物資の提供、社員のボランティア派遣が、想起されるようです。後者の本業による貢献も、大きいのですが。そこで、復興庁で整理した「民間企業の支援活動の分類」では、最初に事業活動=本業による貢献を書いてあります。
少し範囲が広がりますが、アメリカの大学の教科書に『企業と社会』(邦訳、2012年、ミネルヴァ書房)があります。企業の社会的責任を、広い観点から整理してあります。私は、読みかけて途中で放棄してありますが(反省)。

復興庁の組織と運営の特殊性、その2

次に、仕事の仕方です。
3 これまでにない仕事=上司が仕事をする。 事態がどんどん変化する=上司が仕事をする
既存の府省では仕事が進まないので、復興庁が作られました。すなわち、各府省でできる仕事は、私たちが手を出す必要はありません。復興庁の取り組む仕事は、これまでにない課題で対応する制度がないものや、各府省では片付かない課題です。すると、部下から「前例通り」「去年通り」に決裁が上がってくるような、仕事の運び方にはなりません。参事官が、最初から乗り出さなければならないような課題ばかりです。
そして、現地で復旧が進むと、課題は変化します。3か月前に力を入れた課題は、それによって解決し、次の課題が生まれるのです。また、原発事故からの復興は、これまでにないことなので、あらゆることが初体験です。
国会答弁案も、前例に従って作ればよいものは、ほとんどありません。
仕事の進め方は、ボトム・アップでなく、トップ・ダウンになります。朝早く出勤すると、何人もの参事官が、パソコンをたたいていることがあります。部下職員がいない中で、ポツンと仕事をしています。(その参事官たちに新しい指示を出すために、岡本統括官は土曜日曜に出勤して、指示書を書いています。苦笑)
世間の皆さんが思っておられる「役所仕事」と、全く違った世界があります。でも、民間企業や世界を見渡せば、こんな仕事場も、たくさんあるのでしょうね。

復興庁の組織と運営の特殊性

復興庁は、大震災からの復興という目的のために作られた、臨時の組織です。その任務の特性から、組織や仕事の運び方が、他の官庁と違った性質を持っています。
1 司令塔=「頭でっかち」な組織
現地での復旧は、個人、企業、市町村が主体です。そして、その主体に不足しているもの(財源、人、ノウハウ)を提供し、現地の課題を解決していきます。また、国がそれらを支援する際にも、各論は各省に担ってもらいます。道路の復旧や住宅の再建は、国土交通省というようにです。復興庁は、司令塔として全体を管理し、各省にまたがる課題を解決します。
すると、復興庁の組織は、「頭でっかち」になります。本庁には約200人の職員がいますが、参事官(課長)が28人もいます(このほかに、各省に席があって併任をかけている課長も多いです)。企画官と補佐は約70人です。あわせて、全職員の半数近くになります。各省に指示を出し調整をすることが仕事なので、それなりの経験と知識、そして格(職位)をもった職員が必要なのです。
机の配置も、良く言えばフラットになります。各省だと、課長補佐が座っているような席に、参事官が座っています。

2 調整=執務室は大部屋
各省にまたがる課題を、解決しなければなりません。すると、関係する参事官が複数になります。また、津波被害地にしろ原発事故被災地にしろ、街を作り替えたり、町全体を復旧しなければなりません。インフラ、住宅、産業、サービス、その財源、市町村との調整、住民意向調査・・。たくさんの参事官が関係してきます。
各市町村担当の参事官も決めてあるので、各課題担当(縦割り)参事官と調整します。町や住民の立場に立って、タテ(専門行政分野担当)を、ヨコ(市町村担当)が集約するのです。
私もしょっちゅう個室から出て行って、「××の件やけど、これって○○参事官だっけ。△△参事官も関係しているよね」と、尋ね歩きます。
「部屋が分かれていて、課題ごとに会議室に集まって調整する」なんて悠長なことでは、仕事が進みません。そこで復興庁の執務室は、大部屋です。職員を見通せるような席の配置で、いつでも関係者が議論できるようになっています。
みんながあちこちで議論しているので、この職場は、正直言って「うるさい」です。声の大きい職員(私の他にK参事官やM参事官など)がいるだけではありません(笑い)。
かつて、民間の先輩が訪ねて来られたときに、「全勝君の職場は、高度成長期のころの会社を思い出すよ。活気があって」と、誉めて?くださいました。
この項続く。

被災地での企業の復興

各企業が、悪条件を克服して事業を再開したり拡大した事例を、調べて発表しました「企業による復興事業事例集」。悪条件を、「人材やスキルの不足」「用地や設備の不足」「資金不足」「事業環境の変化」の4つに分けて整理してあります。
代表例としては、トヨタの生産方式「カイゼン」を取り入れて生産効率を上げた水産加工会社。
工場を流された醸造会社が、同業他社の設備を借りて生産を再開した事例。さらに、この会社は、NPOの仲介で、大手企業と共同で新製品を開発しました。
放射線で全村避難した地区で、健康管理を徹底しながら操業を再開している金型会社もあります。
被災地では多くの企業が同じような悩みを抱えています。これらの先行事例を参考にしてもらって、事業が再開され拡大されることを期待しています。

今回の大震災からの復旧に際して、インフラや住宅の復旧だけでなく、サービスや産業の再開にも力を入れています。国土が復旧しただけでは、生活は再建できません。
もっとも、道路の復旧や公営住宅建設のように、政府が自治体とともに直接取り組む分野と違い、働く場や事業の再開は、民間の分野であって、政府が直接行う分野ではありません。しかし、個人や企業が事業を再開する際に、お手伝いをしたり条件を整えることは、政府ができます。手法としては、補助金や税の減免、施設の貸し出しといった「カネやモノの提供による誘導」だけでなく、優良事例の紹介、企業が求めているモノと別の企業が提供できるモノをつなぐといった「情報の提供」「つなぎの場の設営」などもあります。(復興庁の企業連携

桜を見る会

今日は、キョーコさんのお供をして、総理主催の「桜を見る会」に行ってきました。東京は、あいにくの寒い曇り空の天気でしたが、大変な人出でした。1万人を超える人が、参加したそうです。
今年は、例年になく桜の開花が早かったので、桜は八重桜を含めて、葉桜になっていました。