10月8日朝日新聞1面「問う2017衆院選」、大月規義・編集委員の「原発事故6年 直視されぬ教訓」から。
・・・政権は復興にあたる上で、福島を「沖縄にしない」「チェルノブイリにしない」という意図で進めた。米軍基地問題のような地元との対立は避ける。旧ソ連の事故処理のように原発を「石棺」にしない。福島原発の周辺にはいずれ人が住めると説き伏せた。除染や復興の予算、賠償金の上積みは惜しまなかった・・・
投稿者アーカイブ:岡本全勝
長谷川貴彦著『イギリス現代史』
長谷川貴彦著『イギリス現代史』(2017年、岩波新書)が、勉強になりました。
かつて、近藤康史著『分解するイギリス―民主主義モデルの漂流』(2017年、ちくま新書)を紹介しました(2017年7月2日)。後者は、民主主義の母国イギリス政治の変容を分析した本です。前者は、第2次大戦後のイギリスを、首相と政党・その政策の変化によって説明した本です。
ただし、狭い政党政治の世界だけでなく、それを生みだした社会の変化、あるいはその政策が変えた社会を説明しています。戦後の福祉国家とケインズ政策から、サッチャー首相に代表される新自由主義、そしてその延長としてのブレア首相の「第三の道」。二大政党制の機能不全。
社会は、経済成長を続けつつも、アメリカの台頭と帝国の解体による栄光の低下、ポンドの価値の低下が続きます。イギリス病とサッチャリズム。製造業から金融情報業への転換。リーマン・ショック。上流階級と労働者という階級区分が、中間層の増加で薄くなり、他方でアンダークラスと呼ばれる漏れ落ちた白人層が生じ、製造業の衰退は活力のない地域を生みます。移民の増加も、社会を変えていきます。既成秩序に異議を申し立てる若者、パンクロック。スコットランド独立運動、北アイルランド問題。
社会の亀裂、地域の分裂。それを、政治がどのように扱っていくのか。やはり、イギリスは一つのお手本です。
イギリス社会の変化を分析した本としては、アンドリュー・ローゼン著「現代イギリス社会史、1950-2000」(2005年6月、岩波書店)を紹介しました。これも、伝統と秩序の国が大きく変化したことを、様々な分野から分析しています。
本書は、新書という制約の中で、というか新書という形の故に、わかりやすい時代区分と、鮮やかな切り口で、イギリス社会と政治の変化を説明してます。分厚い本より、この方がわかりやすいですよね。もちろん、大胆に特徴づけ分析するのは難しいことです。
戦後の日本社会、あるいはもう少し時期を絞って高度成長期以降の日本社会の変化を、簡潔に分析した本はありませんかね。社会がどのように変わったか、その際に経済や政治がどのように関与したかです。そこを、どのような角度から切り取るか。そこに、筆者の力量が示されます。
運慶展
上野の東京国立博物館に、「運慶展」を見に行ってきました。良かったです。
800年前(1200年頃)に、これだけすばらしい彫刻があったのです。奈良や京都の仏さんは、現地のお寺で見ているのですが、解説付きの美術品としてみると、また違いますね。照明を落としてあるとは言え、博物館ではお寺より間近でよく見えます。お勧めです。
四天王像の手や足の躍動感は、すばらしいです。仏様はお顔は穏やかで、体は衣をまとっておられるので、仏師の勝負は顔つきになります。しかし、四天王像になると、甲(よろい)は技巧としても、筋肉や指先がでてきます。しかも、剣闘士ですから、武器を持ったり力を入れているのです。仏様の静に対して、これらは動です。
あり得ない話ですが、運慶が、西欧の女神像やダビテ像のように裸体の像を造ったら、すばらしいものができたでしょうね。ミケランジェロと勝負して欲しかったです。ミケランジェロも、運慶の作品を見たら、お手本としたでしょう。
最も大きな作品である、東大寺南大門の仁王像は、運んでこられていません。ちょと無理ですかね。
無著、世親像は、数年前興福寺北円堂で見てきました(。天灯鬼と竜灯鬼は、好きなので、仕事場にミニチュアを飾っています()。
四天王の足に踏みつけられている餓鬼たちも、興味があります。子どもの頃、友達と「おまえにそっくりだ」と言って、からかっていました(笑い)。でも、多くの場合、餓鬼たちはかなり手抜きをされています。上に立っている四天王像に比べ、リアル感が少ないのです。多分、お弟子さんが作ったのでしょうね。
もう一つ勉強になりました。1186年を鎌倉時代と表示してあります。1192年が鎌倉幕府が開かれた年(いいくにつくろう)と覚えていたのですが、近年は1185年頃を鎌倉時代の初めとしているのですね。
重力波
昨日に続き、ノーベル賞の話を。2017年の物理学賞は、重力波を世界で初めて捉えることに貢献したアメリカの研究者が選ばれました。
先日、出版されたばかりの、高橋真理子著『重力波発見! 新しい天文学の扉を開く黄金のカギ』(2017年、新潮選書)を読んだところでした。
宇宙(大きい世界)や物質(小さい世界)がどうなっているのか、どうしてできたのか、知りたいですよね。また、人体はどうなっているのか、意識はどうしてできるのか。で、時々自然科学の本、といっても専門書でなく「読み物」を読みます。
この本も、朝日新聞記者が書かれたものなので、読みやすかったです。でも、「わかった!」とはなりません。古事記や日時計まで出てくるのです。う~ん。アインシュタインの相対性理論も、読む度に分かったような、分からないような・・・。時間と空間がゆがむと言われても、ぴんときません。
それより、どうして重力(引力)が働くのか。目に見えない「こびとさん」(粒子)が引っ張り合っていると思うのですが。重力子が発見され、私の目に見えたら、「なるほど」と納得するでしょう。
慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第3回目
今日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第3回目でした。
前回、予算の概要を説明しました。相模原市役所から提供いただいた冊子は、学生から「わかりやすかった」との評価でした。
予算書で見えることと見えないこととあわせて、フローとストックを説明しました。「今まで分からなかったのが、分かりました」と書いた学生がいました。経済学や財政学を履修していないと、知らないでしょうね。
今日は、予算の機能をお話ししました。機能の一つは、税金を中心とした歳入と歳出予算によるサービスの執行、資金の調達と支出という観点です。これは経済(学)です。もう一つは、住民の要望、議会による審査(予算案と決算)という、民主主義的統制です。これは、政治(学)です。
「地方財政」の「財政」は、経済(財)と政治(政)の結節点です。主体と作用を図示したので、学生からは「わかりやすかった」との感想をもらいました。経済学、財政学における「地方財政の地位と役割」は、地方財政学の主要論点の一つなので、日を改めてじっくり説明しましょう。