投稿者アーカイブ:岡本全勝

人事院初任行政研修その2

2025年7月3日   岡本全勝

今日7月3日は、人事院の人事院初任行政研修で、入間市の研修所に行ってきました。先日の基調講義を基に課題を与えてあり、その発表です。研修生たちは6人から7人の班に別れて、与えられた課題を議論し、発表します。課題は3種類あり、各班はそのうちの一つを与えられます。合計18班です。

今回は3つの教室に分かれ、指導教官は私のほかに、被災者支援本部で一緒に苦労してくれた、福井仁史・国立公文書館首席調査員と、辻恭介・内閣人事局総括参事官にお願いしました。それぞれ6班ずつ担当します。休憩を挟みつつ、13時半から17時までの、長丁場でした。

各班ともよく調べてあります。班によって、論点の整理や対応策が異なるのですが、資料の作成、発表も良くできていました。採用されてまだ3か月ですが、しっかりしています。
これまでにない事態に、どのように対処するか。その場合は、想像力の勝負になります。各課題とも、正解のない問題です。各課題の論点それぞれについて、正解は期待していません。まずは、必要な論点を漏らさず書き出すことが重要です。

もう一つは、他省庁の職員、初めて出会った人たちが議論をして、一定の結論を出します。司会者、論点整理担当、記録、発表担当、質疑応答担当などを、自分たちで決めていかなければなりません。そして進行を管理する人がいないと、前に進みません。その過程が重要なのです。

家産制国家の復活?

2025年7月3日   岡本全勝

6月13日の日経新聞経済教室、野口雅弘・成蹊大学教授の「根源に「家産制」の復活」から。

・・・法の支配の反対は人の支配である。このときの「人」は特定の個人の信条、パーソナルな好み、あるいは気まぐれなどを指す。
権力者のパーソナルな命令に従いたくない。少なくとも命令の理由について議論する機会が欲しい。法の支配を支えるのは、理由なき支配を押し付けられたくないという個々人の気持ちである。そしてこうした気持ちが持続的に共有されることで成り立つエートス(倫理的な構え)によって、法の支配は維持される・・・

・・・ところが近年、法の支配の危機がいわれることが増えた。とりわけ大統領に返り咲いたドナルド・トランプ氏の言動を巡っての指摘である。行政機関の縮小・解体のため設置された「政府効率化省」(DOGE)は権限の不明確さや利益相反で批判されている。政権の方針に従わない人々、組織への制裁も露骨だ・・・
・・・トランプ氏の統治について、いま注目されている言葉がある。長らく忘れられていた家産制(パトリモニアリズム)である。ウェーバーが「支配について」で100年前に論じたものだ。父による家族の支配を意味する家父長制を国全体に拡張したシステムが、家産制である。これにより国家は巨大な「ファミリービジネス」になる。政治リーダーは従順なフォロワーをえこひいきし、恭順を引き出す。近代的な意味での法の支配は「人がだれかを問わず」が原則だが、家産制では逆に「人しだい」で対応が変わる。

ウェーバーによれば、家産制は近代的な官僚制以前の伝統的な支配形態である。合法的支配の典型である官僚制では、恣意性が可能なかぎり除去され、計算可能性が高められる。過去、行政課題が増大し、業務が複雑になり、専門性が求められるようになると、権力者のパーソナルな要素に依拠した家産制は行き詰まった。とりわけ財政、軍事、司法の分野で、素人の判断が通用しなくなるからだ。
家産制はしだいに官僚制の論理に席を譲っていった。当時、ウェーバーが危惧したのは恣意的な支配ではなく、むしろ過剰な官僚制化のほうであった。

1970年代にはイスラエルの社会学者S・N・アイゼンシュタット氏らによって「ネオ家産制」の概念が用いられた。アフリカなどの途上国で、形式的には近代国家だが実際には縁故や個人的なネットワークが政治的決定や利益の配分に重要な役割を果たしていることに注意が向けられた。
一方、今日の家産制論の主たる対象は前近代的国家や途上国ではない。米国の比較政治学者スティーブン・E・ハンソン氏とジェフリー・S・コプスタイン氏は共著「国家への攻撃」で、ハンガリー、イスラエル、英国、米国などで進行する家産制化による近代国家の原則の破壊について論じている。親近者やお気に入りを要職に登用すること、司法制度への介入、性的マイノリティーや多様性の否定といった現象を、彼らは家産制の概念と関連づけて説明している。
なぜ21世紀になって家産制がリバイバルしているのだろうか。私がとくに強調したいのは、この体制が、新自由主義以後の状況で可能になっている点である。定期的に繰り返されてきた官僚制批判や公務員バッシングが、えこひいきのない公正な行政という理念をおとしめてきた背景がある・・・

「目標設定と職場のマネジメントの実践」の講義

2025年7月2日   岡本全勝

今日7月2日は、市町村アカデミー「管理職を目指すステップアップ講座」研修で、「目標設定と職場のマネジメントの実践」の講義をしました。
教授陣の意見を取り入れて、今回は班別討議を充実しました。2時間半のうち前半を私の講義、後半が班別討議です。5~6人の班を9つ作り、3班ずつ、違う部屋に分かれます。それぞれの部屋で、違う課題を与えます。職場で起きそうな問題です。対応策を考え、各班ごとに発表します。それに対して、残る2班が質問をします。

さすが、管理職を目指す人たち、そして自治体から送られてきた人たちです。どんどん議論が進み、白板に整理し、そして発表をこなしました。それに対し、鋭いツッコミが入ります。もちろん、正解が一つあるような事例ではありません。みんなで考えることで、一人では出てこないような発想が出てきます。
各班とも、賑やかでした。その様子を見ていて、今回の研修は成功だったと確信しました。

補足
講義の際に触れた「お詫びの仕方」は、このページです。

東日本大震災復興予算、2026年度から5年間1.9兆円

2025年7月2日   岡本全勝

6月21日の朝日新聞が「復興予算1.9兆円、政府決定 26年度から5年間 立ち入り制限緩和検討、課題山積」を載せていました。

・・・東日本大震災の復興政策を決める政府の復興推進会議(議長・石破茂首相)は20日、2026年度からの5年間(第3期復興・創生期間)に投じる予算規模を、総額1・9兆円とすることを決めた。
東京電力福島第一原発事故からの復興事業が中心で、福島県への事業に1・6兆円を充てる。ハード面での整備がほぼ完了した岩手・宮城両県にも1千億円ずつを配分するが、「中長期的に取り組むべき課題」としている心のケアや被災した子どもへの支援は「真に必要な範囲」に縮小する。
復興予算は25年度までに33兆円が使われる見通しで、30年度までの20年間では34・9兆円になる。

原発事故の影響で福島県の大熊町や双葉町など7市町村に残る帰還困難区域では、立ち入り制限の緩和も目指す・・・
・・・福島県内には、原則立ち入りが禁じられている帰還困難区域が残る。面積は東京23区の半分ほどで、境界にはバリケードなどが設置されている。中に入れるのは元々住んでいた住民や防犯パトロールなどに限られ、自治体などの許可も必要だ。
国は区域内を除染して人が住めるようにする取り組みを進め、22年6月以降、役場周辺など区域全体の約8%で避難指示を解除。今はそのほかのエリアでも29年までに帰還希望者が戻れるように自宅などの除染を始めている。ただ、除染されずに残る約9割のエリアをどうしていくかの具体的な計画はない。国が基本方針に盛り込んだように、安全確保を前提に自由に活動できるようになれば大きな転換となる・・・

ベトナム政府戦略的幹部研修の講義

2025年7月1日   岡本全勝

今日7月1日は、政策研究大学院大学で、ベトナム政府戦略的幹部研修の講義をしてきました。今回の参加者は、副大臣級をはじめとする中央政府と地方政府の幹部の13人です。6月29日に来日し、30日から7月9日までの研修です。

私の講義は、リーダーシップと危機管理です。東日本大震災の経験を、スライドを使ってお話ししました。
地震や津波のない国の方には、地震の仕組みを説明する必要があり、千年に一度の津波は、写真を見てもらうのが一番わかりやすいです。皆さん、熱心に聞いてくださいました。
質疑も充実していました。「一番困ったことは何ですか」「どのようにして災害対策を強化してきたのですか」などなど。日本の危機管理については、『Public Administration in Japan』(2024年、Palgrave Macmillan)に載せた「第19章 Crisis Management」をベトナム語に翻訳して読んでくださいと、紹介しました。

ベトナム政府行政改革、地方行政単位の統合は、今日から実施されたとのことです。職を失った幹部の処遇など聞きたいこともあったのですが、時間がありませんでした。