お詫びの仕方・形も大切

有名企業での事故や不始末が相次ぎ、幹部がお詫びする映像や写真がニュースで流れています。あれを見るたびに、「みんな下手だなあ」と思います。
私は、富山県総務部長の時に、何度もお詫びをする機会がありました。ある年は、1年に4回記者会見しました。「日本の記録保持者だ」「お詫びのプロだ」と変な自慢をしていました。
記者会見場で、テレビカメラが回り、フラッシュがたかれ、頭を下げている間中、前から横から写真を撮られるのです。翌日はその写真が、地元紙に大きく載ります。ふだん仲良くつき合っている記者からも、厳しい質問が突き付けられ、長時間受け答えするのです。緊張する場面でした。こんな経験は、ない方が良いのでしょうが、勉強になりました。
富山では大ニュースなので、夕方6時の地方ニュースの間、ずーっと私のお詫びがテレビに流れるのです。当時私は、お茶とお花を習っていました。謝罪記者会見を見たお師匠さんから、「私はあんな頭の下げ方を教えていません」と、おしかりを受けました。しかられたのは頭の下げる角度ではなく、手の置き方です。テーブルに手をついたままだったり、資料を持ったままだったのです。お茶やお花の時は袴が正式ですが、スーツの場合は、両手の指をズボンの前の折り目に沿わせるか、横の縫い目に沿わせるのが作法です。「ああそうだった」と思いだし、次の回は早速これを実行したのです(すぐ実行する機会があったのが悲しいです)が、今度もおしかりの電話。「指先が開いていました。ちゃんとそろえて伸ばすのです」。とほほ。
お詫びの内容も重要ですが、形も大切ですよね。私も心して、濃紺のスーツ、白いシャツ、暗い色のネクタイで臨んだのですが。作法が身に付いていませんでした。
記者会見の最初に、簡単に「主文」を読み上げ、直ちに起立して頭を下げたことは、後で記者さん達にほめてもらいました。また、カメラが光っている間、ずーっと頭を下げていたこともほめてもらいました。
ほとぼりが冷めたころ、知人に誘われ初めて入った居酒屋で、女将から「私、あなたを知ってます」と言われました。「僕は、この店初めてです」と言ったのですが、いすを引くとき前かがみになったら(頭を下げる格好になったら)、「ほら、よくテレビに出てて、名字は陳謝とかいう人でしょ」と。場は盛り上がりましたが、ちっともおいしくなかったです。
10年ほど前の話です。続きは、次回に