中野三敏「和本には身分がある」(「図書」2008年8月号)に、和本の中に上下があったことが書かれています。手書きの写本が上で、出版物の板本が下です。板本の中にはさらに身分があって、「物の本」「草紙」「地本」の区別があります。物の本は、仏典・漢籍・古典です。草紙は、娯楽的な通俗読み物です。地本はその中でも、京都に比べ文化的後進地である江戸で出版されたものだそうです。
ふーんと、納得しながら、ふだん使う「物の本に書いてある」という表現が、ここから来ていることを知りました。「ものの」という修飾語が何だろうと思っていたのです。広辞苑を引くと、「・・草紙に対して然るべきことの書いてある本。学問的な本・・」と書いてありました。