続上司の仕事:新しい価値の創造

上司の仕事として、戦略を立てることを説明しています。今日は、少し違う角度から説明しましょう。それは、仕事の「効率化」と、新しい「価値の創造」とは別だということです。
民間企業を例にすると、わかりやすいでしょう。効率化は、現在与えられた仕事と組織を前提にして、どうしたら「少ない労力」で「良い結果」を出すことができるかです。民間企業で「コストカッター」と呼ばれる人が、象徴です。
行政組織の効率化も、ここに入ります。やっている仕事をより少ない人数と予算で行うこと、さらには、時代遅れになった仕事をやめることです。民間企業と比べ、官庁の場合は、売り上げ・利益・他社との競争がないため、効率化は進まないことが多いです。組織にとっても、上司にとっても、効率化のインセンティブが働かないのです。予算や定数を増やした方が、高く評価されることすらあります。

官庁の管理職にとって、効率化は重要な任務です。しかし、それだけでは、管理職として不十分です。
企業の場合、新しい製品や新しいサービスを提供しないと、企業は生き残れません。コストカッターだけでは、企業は成功しないのです。
官庁の場合、任務は法律で決まり、内閣や大臣から与えられます。しかし、官僚は与えられた仕事を執行するだけが、任務ではありません。環境の変化を読み、新しい課題にどう対応するかを、考える必要があります。
社会の環境は、どんどん変わっていきます。公務員が担っている仕事の重要性は変わらなくても、新しいより重要な課題が出てくると、その仕事の相対的重要性は低くなります。
各課長はそれぞれの仕事を、「世の中で最も重要な仕事」と考えて、取り組んでいます。それは、尊重しましょう。しかし、局の任務が変化している時、従来通りの仕事をしていては、国民の期待に応えることはできません。これまでにない課題を発見し、部下に指示する。これも、上司の重要な役割です。
その際に、予算や人員には限りがあるのですから、古い仕事で優先順位の下がったものは、切り捨てる必要があります。課長が自分で、自分の仕事を切り捨てることは、できません。上司が、指示をする必要があるのです。