朝日新聞デジタル、磯野真穂さん(人類学者)の「私たちがコロナ禍に出会い直さねばならない理由」(4月19日掲載)から。
・・・私は人類学の観点から、かつて狂牛病と言われたBSE問題、年単位で接種率が低迷した日本脳炎ワクチンやHPVワクチン問題、そしてコロナ禍など、国内で起こった健康をめぐるいくつかのパニックを分析してきた。すると、これらの現象には一つの共通点があることがわかる。
それは、パニックを沈静化させるためにとられた極端な対策が、長期にわたりダラダラと続くことだ。私はこの傾向を「和をもって極端となす」と呼んでいる。
極端な対策により社会の調和がそれなりに取り戻されると、その和を保つことが最優先事項となる。おかしいと感じる人は内部に複数いるものの、波風を立てることを恐れ、あからさまな反対運動には至らない。結果、対策の副作用として深刻な問題が生じても、それは見過ごされたままとなり、対策は漫然と続いていく・・・
・・・さらにバーマンは、中根に加え、政治学者の丸山眞男、心理学者の土居健郎も参照しながらこうも語る。
「日本社会はその仕組みからして、真剣に現状の問い直しを行う機構が備わっておらず、物事が一旦(いったん)ある方向に動き始めると、基本的に行き着く先まで行ってしまうより他ないとする丸山(そして土居と中根)の主張を肯定しておきたい」・・・