7月19日の朝日新聞に「75歳以上高齢者、大都市郊外で増加 10年間の人口分布、「ドーナツ」状に」が載っていました。
・・・75歳以上の後期高齢者の人口分布が10年間でどう変化したのか、朝日新聞のデータ分析チーム(ニュースメディア開発部)が、政府の公開データを使って調べた。増減を分析すると、東京や大阪といった大都市圏では、中心部はあまり変わらないが、郊外で大きく増えていて、「ドーナツ」のような形で変化していることがうかがえた。
分析では、2010年と20年の国勢調査をもとにした1キロ四方ごとの人口分布を記録した「3次メッシュ」を使用。20年の75歳以上の人口が10年と比べて何倍になっているかを算出した。その結果から、減少した地域は青、変化がない場合は白、増加していれば赤で色をつけ、色の変化で地域の増減がわかるようにした。
東京都や大阪府、福岡県などの大都市圏の中心部では変化が少なく、白に近い色だったが、郊外になるほど赤が濃くなった。地方では青の地域も目立った。
大都市圏の郊外で75歳以上人口が大幅に増えている傾向――。何が起きているのでしょうか。高齢社会に詳しい日本福祉大教授の藤森克彦さんに聞きました。
―調査は東京圏、名古屋圏、大阪圏、福岡圏の75歳以上の人口について2010年と20年を比較しました。いずれも郊外の人口が増えたのに対し、その周囲の地方は減少、都市部はあまり変化がなく、大都市圏の「ドーナツ化」現象がみられます。郊外で増えた背景とは?
75歳以上の人口増加とともに、郊外で介護施設が整備されたことが考えられます。要介護度が大きく上がるのは75歳以降です。そして、特別養護老人ホーム(特養)は、原則として要介護3以上でなければ入所できません。
一方、特養などの介護施設は、地価の低い郊外に多く立地しています。実際、厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」によれば、14年から24年にかけての特養の施設数や定員数の伸びは、埼玉県や千葉県が約5割増なのに対し、東京都は約3割増にとどまります。郊外では特養などの介護施設に入りやすい環境が整っていることが、郊外への転入増の一因と考えられます。
―市区町村別の転入超過(20~24年を合算)の状況を人口10万人あたりに換算すると、トップが東京都檜原村(7189人)で、続いて奥多摩町(6526人)、日の出町(3998人)と東京都西部の地域が上位を占めています
これらの地域で人口10万人あたりの75歳以上の転入者が多いのは、介護施設などが比較的充実していることが考えられます。日本医師会の地域医療情報サイトによると、「75歳以上1千人あたりの介護施設の入所定員数」は、前述の3町村では全国平均の4~5倍に達しています。介護職員数も全国平均の約4倍です。
さらに、山間部としては珍しく、訪問介護や地域包括支援センターなど在宅サービスが比較的充実しており、移住の背景として考えられます。
一般に、介護サービスの充実は、自治体の財政負担を増やすことから、地域経済にマイナスのイメージを持たれがちです。しかし、適切に整備されれば、介護分野で働く人の雇用を生み、その雇用が地域の消費を活発にするなど、地域に新たな経済循環を生む役割も果たします。
こうした視点から、介護サービス事業所などを「灌漑施設」にたとえる見方があります。介護保険制度では、高齢者が地方に移住すると介護給付が中央から地方に流れます。さらに、高齢者の年金が地域の消費にもたらす効果も大きく、地方圏では地域経済を下支えする重要な要素になっています。灌漑が土地を潤すように、社会保障給付が地域を元気にするという考え方です・・・