年別アーカイブ:2025年

新居20年

2025年12月27日   岡本全勝

11月末に、新居に移って20年が過ぎました。これだけ住むと、新居ではないのですが。
工務店がよい家を建ててくださり、定期検診をしてくださるおかげで、快適に暮らしています。2度も枯らした夏椿は、ここのところ調子よさそうです。

20年と簡単に言いますが、結構長い時間です。子どもの頃育った家は18歳まで住んだのですから、それより長い時間をここで過ごしたということです。いろいろあったのですが、過ぎ去った過去は短く感じます。
勤め人時代は、ほぼ寝に帰るだけと言っても良い生活でした。常勤職を退き、家にいる時間が増えました。といっても、書斎で原稿の締め切りに追われています。書斎というより、工房・作業場ですね。
新居10年」を見ると、「一番の変化は、書斎が本の置き場と化したことです」と書いてあります。これについては、今年の夏から処分を始め、半分くらい進みました。大きな成果です。

大きな変化は、子ども2人が結婚して出ていったことです。娘家族は近くに住んでいるので、孫がしょっちゅう来ています。
もう一つは、ご近所の変化です。高齢者が亡くなり、新しい家が建って、若い方が来られました。子どもが増えました。20年の変化を感じます。

サッチャー改革の見直し

2025年12月27日   岡本全勝

12月19日の朝日新聞オピニオン欄、長谷川貴彦・北海道大学教授の「サッチャー改革という物語」から。詳しくは原文をお読みください。現在連載「公共を創る」で「新自由主義的改革の代償」を書いています。成熟社会において新自由主義的改革だけでは社会は良くならないことを述べているのですが、その主張に通じるところがあります。サッチャー首相については、池本大輔著「サッチャー-「鉄の女」の実像」(2025年10月、中公新書)が出ました。これも読んだのですが、紹介は別の機会にします。

・・・高市早苗首相が「憧れの人」と公言し、再び注目された英国のマーガレット・サッチャー元首相。サッチャー氏による新自由主義改革が、戦後の福祉国家がもたらした「衰退」を打開した――。そう語られてきた「常識」の見直しが進んでいる。その背景と今日への示唆とは。歴史学者の長谷川貴彦さんに聞いた・・・

――戦後英国史の「常識」が見直されているそうですね。
「まずその『常識』について確認しましょう。第2次世界大戦後、英国では労働党政権によって福祉国家が確立され、国民は『ゆりかごから墓場まで』と称された社会保障を享受した。しかし1970年代に入ると、それが経済的な非効率や硬直性をもたらし、深刻な衰退を招いた。袋小路に陥った英国に登場し、危機から救ったのが、79年就任のサッチャー首相による新自由主義改革だった――。そうした『成功物語』です」
「今でも繰り返し語られる物語で、多くの人の頭に染み込んでいるのではないでしょうか」

――それが、近年どのように見直されているのですか。
「2008年のリーマン・ショック、16年のブレグジット(英国の欧州連合離脱)と米大統領選の衝撃を経て、17年にロンドンで開かれた研究集会『英国のネオリベラリズム再考』以降に、再検討が進みました」
「『常識』は、二つの物語から構成されています。一つ目が、戦後の社会民主主義、福祉国家、ケインズ主義は『失敗』であり、その結果、『衰退』がもたらされたという認識です」
「二つ目は、新自由主義の政策的な『成功』という物語です。サッチャー政権は個人の自由を基礎に、国有企業の民営化や労働組合への規制強化、金融市場の自由化などを断行し、それにより英国は景気循環から解放され、持続的な経済成長を成し遂げたというものです」

――まず「衰退」の物語は?
「当時の政治家やジャーナリズムは『衰退』の物語を強調しましたが、経済は70年代にかけて成長していた。生活水準も向上しており、歴史家ジム・トムリンソンは、むしろこの時代を、経済成長を遂げた黄金時代の一部と捉えています」
「さらにトムリンソンは、英国が経験していたのは『衰退』ではなく、『脱産業化』であるとも言っています。経済の構造変化を捉える重要な視点です」

――脱産業化とは。
「英国は19世紀に世界で最も早く工業化を達成し、20世紀後半には他国に先駆けて脱工業化の道を歩み始めました。70年代に本格化するこの現象では、従来の基幹産業だった鉄鋼業や造船業などが競争力を失って製造業の拠点が海外に移り、経済の主軸が金融サービスなどの第3次産業へと移りました」
「これにより、基幹産業で働いていた労働者たちが、職を失ったり、より賃金の低いサービス業に移らざるを得なくなったりした。人々の皮膚感覚としても、『衰退』として認識されやすかったでしょう」
「だが、これは後に多くの先進国も体験する構造転換だった。なのにそれを労働組合の存在や公共部門の拡大が招いた『衰退』とするのは、福祉国家の『失敗』を強調したい人々によるイデオロギー的な虚構であり、それが実態を見る際の阻害要因になってきた、と指摘されるようになりました」

――「衰退」の部分が再検討されれば、おのずと「新自由主義」の見方も変わりそうです。
「その通りです。事実、新自由主義の『成功物語』も再検討されています。新自由主義の英国版がサッチャリズムですが、その改革は、実は戦後の福祉国家が築いたストックや遺産を前提として成立したという評価が有力です」
「例えば、サッチャー政権は『資産を所有することで、個人の自立を促し社会を安定化させる』との考えで、公営住宅の個人への売却を進めましたが、公営住宅を大量に建設したのは福祉国家の時代でした。脱産業化で膨れあがった失業者を支えたセーフティーネットも、福祉国家時代の政策によるものでした」
「つまり、前の時代に蓄積された社会インフラや制度のストックがなければ、サッチャリズムの『改革』による生活への打撃はより深刻なものになっていたでしょう。この観点からすれば、新自由主義の『成功』は、福祉国家の遺産に寄生していたことになり、その持続可能性に疑問符がつけられています」

「公共を創る」目次の変更

2025年12月26日   岡本全勝

ホームページが不具合の間に、連載「公共を創る」は、きちんと発行されました。各回の概要は、おいおい遡って載せる予定です。
それとは別に、全体構成を見直し、目次を変更しました。現在執筆している「3 政府の役割の再定義(連載第151回~)」が長くなりすぎたので、次のように分割しました。
(1)社会の変化と行政の役割(2)官僚のあり方(第170回~)(3)政治の役割(第199回~)(4)政治主導に向けて(第226回~)(5)新自由主義的改革の代償(第240回~)

なんと、第151回は2023年5月の記事です。長くなったものです。
この節が終わると、いよいよ、まとめに入るつもりです。

連載「公共を創る」第244回

2025年12月26日   岡本全勝

12月25日に、連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第244回「政府の役割の再定義ー地方自治体の「内包と外延」」が発行されました。新自由主義的改革の行き過ぎを反省し、地方自治体の在り方を、その役割にさかのぼって考えています。

官共業三元論で見ると、政府部門、市場部門、非営利部門がそれぞれ得意なものを提供し、公的・私的といったサービスの区別はなくなります。そしてこの三つの部門の「上に」、政府がもう一度出てきます。こちらの政府の役割は、公共的なサービスが継続的かつ安全、公平に行われるよう、ルールを設定すること、各主体を誘導し監視することです。また、企業やNPOだけで提供できない場合は、支援するという役割を持ちます。
地域の経営という視点で考えると、地方自治体の役割は、地域の暮らしに必要なサービスが提供されるよう、それら全体について目配りし、足りない部分を補うことです。

これからの地方自治体の在り方を考える際には、役所そのものを対象としているだけでは不十分であり、地域の状態とその中での役所の役割を対象としなければならない、ということになるでしょう。私は、この違いを「内包と外延」と表現しています。専門的な定義は置いておいて、ここでは「内容を深掘りすること」と「周囲を見渡して置かれた立場を考えること」と理解してください。
人口が減少し活力が低下する地域では、役所が従来の施策を実施するだけでは、地域を維持できなくなりました。総合計画もそのような観点から、見直す必要があるでしょう。もっとも、行政の範囲外の分野は民間の力に頼るので、目標や手法について同じような位置付けにはできませんから、新たな整理が必要になります。
例えば、福島県の総合計画(2021年策定)は、県の事情により、東日本大震災からの復興・再生と、地方創生・人口減少対策を重要課題としています。そして目標を、ひと・暮らし・しごとの3分野それぞれについて掲げています。課題と目標は明確です。その際に、SDGs(持続可能な開発目標)の理念を踏まえて、目指す将来の姿を描いています。