年別アーカイブ:2025年

約8割が管理職になりたくない時代

2025年3月17日   岡本全勝

約8割が管理職になりたくない時代だそうです。日本能率協会マネジメントセンター「77%が「管理職になりたくない」

しかし、この議論の立て方が、間違っているのではないでしょうか。
採用された社員や職員が全員、管理職になれるわけではありません。かつては、管理職になる社員・職員と、そうでない社員・職員は、採用もその後の配属と出世も異なっていました。上級職と中級職や初級職です。学歴と採用試験で、明確に分かれていました。典型は、軍隊です。将校と兵とは、はっきり区別されています。全員が管理職を目指すと、人事課も困るでしょう。
また、社員や職員が全員、職場に全てを捧げているわけでもありません。別に生きがいを持っている人、趣味を優先する人、家族の事情などで職場だけを優先できない人もいます。

大学卒が増えて、学歴による区分が機能しなくなり、他方で「平等主義」によって「差をつけない」ふりをしてきました。多くの人は出世したいでしょう。しかし、管理職は誰もができるような仕事ではなく、本来はそんなお気楽な仕事ではありません。
管理職を目指す競争は、本人の技能を磨く上でも有用であり、組織としても活性化するという利点があります。しかし、いずれ全員が管理職になれないことがわかります。その際の本人と会社側の対応が難しいのです。
冷たいことを言うようですが、それが現実です。

なおこのほかに、管理職とは名ばかりで、業務も変わらず負担が増えるだけ、給料も上がらないといった問題もあるようです。魅力がなければ、目指しませんわね。

アイケンベリー教授、世界秩序の変遷

2025年3月17日   岡本全勝

アイケンベリー教授、トランプ現象」(米主導の国際秩序 揺らぐ)の続きです。

・・・トランプ現象は世界秩序の危機と連なっています。
世界秩序は、20世紀のナチスの台頭・第2次大戦・ホロコースト・広島長崎原爆という一連の危機を経て、米欧民主諸国が国際主義に基づいて構築したのが起点です。戦後の東西冷戦の産物でもあり、西側「自由世界」内部の秩序でした。その成果を幾つか挙げると、第一に米国を盟主とする北大西洋条約機構(NATO)を創設して集団防衛体制を敷いたこと。第二に貿易は自由放任ではなく適度に管理したこと。第三に敵国だった日本とドイツ(当時は西独)を陣営に組み込んだこと。日独は共に非核大国の道を進み、西側の支柱になります。第四は仏独が和解し欧州統合に踏み出したこと。第五は国際通貨基金(IMF)や世界保健機関(WHO)など多国間機構を作り、国際協調を実践したこと。西側は旧来の「帝国の秩序」を脱し、「無政府状態」に陥ることもなく、繁栄を享受します。1989年に冷戦が終わり、91年にソ連が解体すると西側秩序は世界秩序へと一気に拡大します。

しかし21世紀に入ると、この秩序は揺らぎ始める。発端は2003年の米国のイラク戦争。米国はイラクの大量破壊兵器保有を理由として、仏独などの反対を無視して侵攻し、イラク政権を打倒しますが、大量破壊兵器は存在せず、自らの威信を傷つけてしまう。次は08年の米国発の世界金融危機。米国の新自由主義路線が頓挫します。そして中国の台頭。米国は01年、「中国は経済成長すれば、民主化する」と信じて世界貿易機関(WTO)に迎え入れたのですが、見込み違いでした。経済大国化した中国は民主化に向かわず、米国に対抗してきた。実は西側秩序が世界秩序に変容した時、危機は内包されたといえる。自由民主主義・国際主義の価値観が世界で共有されることはなかったのです。

ロシアのウクライナ侵略は戦後秩序の破綻を示しています。ただ地政学上、より重大な脅威は中国の挑戦です。戦後80年の世界は歴史的転換期を迎えたといえます。
人類の運命を左右し得る転換期に米大統領がトランプ氏であることに私は危惧を覚える。喫緊の課題は国際主義の原則を確認し、西側の結束を固めることですが、同氏は関心を示さない。むしろ帝国的勢力圏の拡大を企てているように見える・・・

復興庁オーラルヒストリー

2025年3月16日   岡本全勝

復興庁が、東日本大震災の教訓継承の一つとして、当時の関係者に聞いて「東日本大震災に関するオーラルヒストリー」を記録しています。
私も、2024年11月11日に受けました。それが文字になって、復興庁のホームページに載りました。ほかにも聞き取りを受けた人もいて、順次このホームページに載るとのことです。

復興庁は、すでに「東日本大震災 復興政策10年間の振り返り」をまとめました。これは立派な記録です。このときも取材を受けて、当時のことを話しました。
それに対し今回の聞き取りは、それぞれの人がその立場で、どのように見ていたか、どのように行動したかがわかります。偏っている恐れはありますが、「血が通っている」といったら良いのでしょうか。実感がわきます。

他の人の分を読むと、私の知らないことや、間違って覚えていたこと、忘れていたことがいくつもあります。このような記録を残すことは、価値があるとわかります。
私は、他人を傷つける恐れのある内容は削除したのですが、良いことばかりでは後世の参考にならないと思い、辛口のことも残しておきました。
ところで、原発事故対応や新型コロナ感染対応などは、このような記録は残っているのでしょうか。

アイケンベリー教授、トランプ現象

2025年3月16日   岡本全勝

2月23日の読売新聞、アイケンベリー教授の「米主導の国際秩序 揺らぐ」から。

・・・第2次大戦後の米国主導の国際秩序が近年危うさを増している。4年目を迎えるロシアのウクライナ侵略はその表れだ。
米国はロシアの暴挙に際し、自由主義に対する権威主義の挑戦と糾弾し、西側諸国は団結して対露制裁を科し、ウクライナ支援に回った。ところが米大統領に先月返り咲いたドナルド・トランプ氏は、この対立構図には無頓着で、ウクライナの頭越しの対露交渉による戦争終結を急いでいる。
米プリンストン大学教授で国際関係論の泰斗、G・ジョン・アイケンベリー氏に戦後80年の世界について見解を聞くと「世界秩序は危機に陥っている。トランプ米政権は戦後体制を信じていない。奇妙な時代です」と語り出した。

トランプ氏の復活に憤慨している米国民は多くいます。ただ歴史的に見ると彼の出現は突然変異ではありません。18世紀後半の対英独立革命期から存在する「オルト・アメリカ(もう一つの米国)」という勢力の末裔といえます。
2世紀半の米国史は、より良き自由民主主義体制の構築を試みる実験の連続でした。その土台は1776年の独立宣言で掲げた「すべての人の平等」と「生命・自由・幸福を追求する権利」という原則です。奴隷制の廃止・黒人差別法の廃止などは「すべての人」を包容する開かれた社会の実現をめざす近代化の営みでした。この進歩に対し、白人男性支配の崩壊を恐れる南部の守旧派らが抵抗した。20世紀前半、大恐慌対策としてニューディール政策が導入されて社会改革が進展すると、富裕層の一部が抵抗した。自由主義的近代化を拒む勢力がオルト・アメリカです。いわば彼らは今日も南北戦争を戦っているのです。

トランプ氏の再登場は米国式近代化の一時停止を意味します。彼の支持基盤の中核はオルト・アメリカですが、先の大統領選を決したのは一般の有権者です。物価上昇に苦しみ、先行きに不安を抱き、為政者の失政に不満を募らせる民衆です。社会が分極化を深める一方で、親世代よりも子世代が豊かになるという「アメリカン・ドリーム」は逆夢になってしまった。民衆を動かしたのは希代の扇動政治家トランプ氏のエリート批判でした。近代化に代わる未来志向の米国像を示したわけではない。自由民主主義の伝統に背を向けただけです・・・

私は、アイケンベリー教授の「リベラルな国際秩序」を信奉しているのですが。

吉見俊哉著『アメリカ・イン・ジャパン』

2025年3月15日   岡本全勝

吉見俊哉著『アメリカ・イン・ジャパン』(2025年、岩波新書)を読みました。
この表題では、多くの日本人が何らかのことを思い浮かべ、述べることができると思います。私も、自分なりに考えてみました。多くの人は、ペリー来航、太平洋戦争、占領と憲法、戦後のアメリカ生活文化の流入、豊かさと自由の目標としてのアメリカ、を要素として入れるのではないでしょうか。

本書の内容は、目次を紹介するとわかりやすいでしょう。
第1講 ペリーの「遠征」と黒船の「来航」――転位する日本列島
第2講 捕鯨船と漂流者たち――太平洋というコンタクトゾーン
第3講 宣教師と教育の近代――アメリカン・ボードと明治日本
第4講 反転するアメリカニズム――モダンガールとスクリーン上の自己
第5講 空爆する者 空爆された者――野蛮人どもを殺戮する
第6講 マッカーサーと天皇――占領というパフォーマンス
第7講 アトムズ・フォー・ドリーム――被爆国日本に〈核〉の光を
第8講 基地から滲みだすアメリカ――コンタクトゾーンとしての軍都
第9講 アメリカに包まれた日常――星条旗・自由の女神・ディズニーランド

どうですか。あなたの考えた「アメリカ・イン・ジャパン」と、どの程度共通していましたか。私は、私の考えていたことと少々異なっていたので、驚きました。それは、私の中にある「アメリカ・イン・ジャパン」が、一方的な日本人の「憧れ」であって、現実にはアメリカのアメリカ中心主義に巻き込まれた、それも被害意識なく巻き込まれた日本に気づかされたことです。
先住民を虐殺し、不法に土地を奪いながら、「自由の国をつくる」と説明し、西海岸に到達します。その続きで、ハワイやフィリピンを支配し、日本にも触手を動かします。今のトランプ大統領のアメリカを見ると、自国中心主義は素直に理解できます。

なお、73ページ後ろから2行目、「ギリス帝国」とあるのは「イギリス帝国」のまちがいでしょう。