復興庁オーラルヒストリー

復興庁が、東日本大震災の教訓継承の一つとして、当時の関係者に聞いて「東日本大震災に関するオーラルヒストリー」を記録しています。
私も、2024年11月11日に受けました。それが文字になって、復興庁のホームページに載りました。ほかにも聞き取りを受けた人もいて、順次このホームページに載るとのことです。

復興庁は、すでに「東日本大震災 復興政策10年間の振り返り」をまとめました。これは立派な記録です。このときも取材を受けて、当時のことを話しました。
それに対し今回の聞き取りは、それぞれの人がその立場で、どのように見ていたか、どのように行動したかがわかります。偏っている恐れはありますが、「血が通っている」といったら良いのでしょうか。実感がわきます。

他の人の分を読むと、私の知らないことや、間違って覚えていたこと、忘れていたことがいくつもあります。このような記録を残すことは、価値があるとわかります。
私は、他人を傷つける恐れのある内容は削除したのですが、良いことばかりでは後世の参考にならないと思い、辛口のことも残しておきました。
ところで、原発事故対応や新型コロナ感染対応などは、このような記録は残っているのでしょうか。

アイケンベリー教授、トランプ現象

2月23日の読売新聞、アイケンベリー教授の「米主導の国際秩序 揺らぐ」から。

・・・第2次大戦後の米国主導の国際秩序が近年危うさを増している。4年目を迎えるロシアのウクライナ侵略はその表れだ。
米国はロシアの暴挙に際し、自由主義に対する権威主義の挑戦と糾弾し、西側諸国は団結して対露制裁を科し、ウクライナ支援に回った。ところが米大統領に先月返り咲いたドナルド・トランプ氏は、この対立構図には無頓着で、ウクライナの頭越しの対露交渉による戦争終結を急いでいる。
米プリンストン大学教授で国際関係論の泰斗、G・ジョン・アイケンベリー氏に戦後80年の世界について見解を聞くと「世界秩序は危機に陥っている。トランプ米政権は戦後体制を信じていない。奇妙な時代です」と語り出した。

トランプ氏の復活に憤慨している米国民は多くいます。ただ歴史的に見ると彼の出現は突然変異ではありません。18世紀後半の対英独立革命期から存在する「オルト・アメリカ(もう一つの米国)」という勢力の末裔といえます。
2世紀半の米国史は、より良き自由民主主義体制の構築を試みる実験の連続でした。その土台は1776年の独立宣言で掲げた「すべての人の平等」と「生命・自由・幸福を追求する権利」という原則です。奴隷制の廃止・黒人差別法の廃止などは「すべての人」を包容する開かれた社会の実現をめざす近代化の営みでした。この進歩に対し、白人男性支配の崩壊を恐れる南部の守旧派らが抵抗した。20世紀前半、大恐慌対策としてニューディール政策が導入されて社会改革が進展すると、富裕層の一部が抵抗した。自由主義的近代化を拒む勢力がオルト・アメリカです。いわば彼らは今日も南北戦争を戦っているのです。

トランプ氏の再登場は米国式近代化の一時停止を意味します。彼の支持基盤の中核はオルト・アメリカですが、先の大統領選を決したのは一般の有権者です。物価上昇に苦しみ、先行きに不安を抱き、為政者の失政に不満を募らせる民衆です。社会が分極化を深める一方で、親世代よりも子世代が豊かになるという「アメリカン・ドリーム」は逆夢になってしまった。民衆を動かしたのは希代の扇動政治家トランプ氏のエリート批判でした。近代化に代わる未来志向の米国像を示したわけではない。自由民主主義の伝統に背を向けただけです・・・

私は、アイケンベリー教授の「リベラルな国際秩序」を信奉しているのですが。

吉見俊哉著『アメリカ・イン・ジャパン』

吉見俊哉著『アメリカ・イン・ジャパン』(2025年、岩波新書)を読みました。
この表題では、多くの日本人が何らかのことを思い浮かべ、述べることができると思います。私も、自分なりに考えてみました。多くの人は、ペリー来航、太平洋戦争、占領と憲法、戦後のアメリカ生活文化の流入、豊かさと自由の目標としてのアメリカ、を要素として入れるのではないでしょうか。

本書の内容は、目次を紹介するとわかりやすいでしょう。
第1講 ペリーの「遠征」と黒船の「来航」――転位する日本列島
第2講 捕鯨船と漂流者たち――太平洋というコンタクトゾーン
第3講 宣教師と教育の近代――アメリカン・ボードと明治日本
第4講 反転するアメリカニズム――モダンガールとスクリーン上の自己
第5講 空爆する者 空爆された者――野蛮人どもを殺戮する
第6講 マッカーサーと天皇――占領というパフォーマンス
第7講 アトムズ・フォー・ドリーム――被爆国日本に〈核〉の光を
第8講 基地から滲みだすアメリカ――コンタクトゾーンとしての軍都
第9講 アメリカに包まれた日常――星条旗・自由の女神・ディズニーランド

どうですか。あなたの考えた「アメリカ・イン・ジャパン」と、どの程度共通していましたか。私は、私の考えていたことと少々異なっていたので、驚きました。それは、私の中にある「アメリカ・イン・ジャパン」が、一方的な日本人の「憧れ」であって、現実にはアメリカのアメリカ中心主義に巻き込まれた、それも被害意識なく巻き込まれた日本に気づかされたことです。
先住民を虐殺し、不法に土地を奪いながら、「自由の国をつくる」と説明し、西海岸に到達します。その続きで、ハワイやフィリピンを支配し、日本にも触手を動かします。今のトランプ大統領のアメリカを見ると、自国中心主義は素直に理解できます。

なお、73ページ後ろから2行目、「ギリス帝国」とあるのは「イギリス帝国」のまちがいでしょう。

「カローラ買えない」停滞ニッポン映す鏡

2月27日の日経新聞に「「カローラ買えない」年収の半分に 停滞ニッポン映す鏡」が載っていました。

・・・トヨタ自動車の「カローラ」が日本の貧しさを映し出している。価格を平均年収で割った「カローラ価格指数」を算出すると、高度成長期を経て年収の2割台(0.2)まで下がったが、今は5割まで高まった。米国では3割のままで差が際立つ。大衆車の象徴の歴史を振り返ると、物価上昇に賃金が追いつかない日本の姿が見える・・・

1966年に売り出されたときは、495,000円。平均年収548,500円の0.9でした。
1979年には85万円で、平均年収279万円の0.27まで下がりました。1982年には、価格は同じですが、平均年収が319万円になって0.27まで下がりました。
その後は0.3程度で推移しましたが、2000年代に入って指数は上昇し、2019年では価格が240万円で、年収は436万円。指数は0.55になっています。
アメリカではこの指数は0.30で、日本の賃金の低さが目立ちます。

嫌な自分?

変な表題です。
初めて、自分の声をテープレコーダーで聞いたときのことを、覚えていますか。変な声だったでしょう。「え~、私って、こんな声で話しているの。違うわ」とです。

これは、音声についてですが、内容でも同じことが起こります。発言を文字に起こして、読んでみるときです。講演会や聞き語り(オーラルヒストリー)を文字起こししてもらい、それを加筆することがあります。これは、もっと落ち込んでしまいます。「こんなええかげんなことを話していたんだ」とです。

内容が間違っているかどうか以前に、主語と述語が一致しない、長々と続いてどこで切れるのかわからない文章など。他人に通じない話になっていることもあります。「これじゃ、聞いている人もわからないだろうな」と反省します。重要な箇所は繰り返し話すようにしているので、少しは理解を助けていると思うのですが。

文字起こしを、読んでもらえるように加筆するのですが、それが一苦労です。「これなら、最初から文字で書けば良かった」と思うこともあります。