年別アーカイブ:2024年

人工知能の弊害

2024年5月10日   岡本全勝

4月28日の日経新聞に、マイケル・ウェイドIMD教授のインタビュー「AIの弊害、企業は責任ある行動を」が載っていました。

膨大な電力消費や偽情報のまん延など、生成AI(人工知能)の弊害が目立ち始めた。課題を乗り越えて新技術を社会に定着させるには、利用者側の意識変革が欠かせない。スイスのビジネススクールIMDの教授でデジタルトランスフォーメーション(DX)の権威として知られるマイケル・ウェイド氏は企業は新たな責任を直視すべきだと提言する。

――生成AIの爆発的な普及をどうみるか。
「生成AIは仕事の生産性を大幅に向上させ、これまで2時間かかっていた仕事を10分で終わらせられる。企業のDXにとって可能性の大きさは計り知れず、非常にエキサイティングだ」
「ただ、どんなテクノロジーにも負の側面がある。AIにおける課題の一つが大量の電力消費だ。米オープンAIは無数の画像処理半導体(GPU)を使ってAIを学習させている。GPUは計算時に大量の熱を放出するため、設備の冷却にも膨大なエネルギーが必要になる」
「ユーザーが『Chat(チャット)GPT』に質問を投げかけるたびに、データセンターではコップ1杯分の冷却水が必要になる。同様に生成AIに1回画像を描かせるには、携帯電話を充電するのとほぼ同じ量の電力が必要だ。AIなどのデジタル技術は世界の温暖化ガスの排出量全体の6%を占める」

「AIの普及によってデジタルと現実世界の垣根が崩れ、今は2つの潮流が交錯するようになりつつある。両者が相いれない概念というわけではない。状況が変わったと考えるべきだ」
「デジタル技術を使う企業にも意識改革が求められる。産業界に広く浸透した企業の社会的責任(CSR)の考え方では、企業は環境や社会、次世代に配慮した行動を実践するよう求められてきた。私はこうした取り組みに加えてAIなどの先端テクノロジーに焦点を当てた『企業のデジタル責任(CDR)』という新たな概念を提唱している」
「例えば生成AIの開発企業は学習用のデータから人種的な偏りや差別的な情報を排除し、AIが出力するコンテンツに可能な限り偏見が含まれないよう努めなければならない。知的財産権への配慮も重要なテーマだ」

 

連載「公共を創る」第185回

2024年5月9日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第185回「政府の役割の再定義ー広く日本の在り方を考える必要性」が、発行されました。
第183回から、私が所管を越えて広く日本のあり方を考えるようになった経験を話しています。

今回は、1993年に、カンボジア国連平和維持活動で警察官が死亡した際に国家公安委員長に同行した件。1998年に、中央省庁等改革推進本部事務局で全省庁の課の数を削減した作業。2006年から、自民総裁候補のマニフェスト作成に参画したこと。2006年に、経済財政諮問会議に関与したこと。2008年の総理秘書官の経験を書きました。
このあと、東日本大震災の経験が続きます。

こうして振り返ると、自治省に入ったのにそれを越えて、国家官僚としてさまざまな広い経験をさせてもらいました。官僚生活の後半は、私の「本籍」であった自治省(総務省)財政局ではなく、内閣府や官邸などでの仕事がほとんどでした。「内閣官僚」と自称しています。

このことは、日経新聞夕刊一面コラムにも「内閣官僚」として書きました。
・・・1978年に自治省に採用され、2016年に復興庁事務次官を退任した。38年間の勤務のうち、自治省と再編後の総務省で16年、自治体勤務が11年、内閣、内閣府、復興庁が11年になる。後半は、省庁改革本部、総理秘書官、復興庁と、内閣の近くで仕事をすることが多かった・・・
その後の内閣官房参与・福島復興再生総局事務局長の4年余りを入れると、内閣近くでの仕事の期間は、42年のうち15年とさらに長くなります。

プラスチックごみ半分は、56企業が製造

2024年5月9日   岡本全勝

4月27日の朝日新聞夕刊に「プラごみ半分、56企業製造 海岸・公園に廃棄、元々の生産者は――米大学など調査」が載っていました。

・・・屋外に捨てられたプラスチックごみの元々の生産者を調べると、その半分は56の企業で、食品や飲料、たばこの企業が目立つ。そんな調査結果を、米カリフォルニア大や、環境NGO「グリーンピース」などの研究チームが発表した。
チームは、2018~22年に84カ国の海岸や公園、川などであった計1576回の清掃活動のデータを分析。5ミリメートルより大きいプラごみは約187万個見つかったという。
回収されたプラごみのうち、企業名が確認できたのは約半分で、56社の名前が判明したという。企業名が確認されたプラごみの上位5社は、食品・飲料メーカーのコカ・コーラ(11%)、ペプシコ(5%)、ネスレ(3%)、ダノン(3%)、たばこ大手のアルトリア(2%)だった・・・

・・・メーカーなどの責任を、生産や消費段階だけでなく、廃棄やリサイクルまで広げる「拡大生産者責任」という考え方が認知されてきている。研究チームの1人で、米ムーアプラスチック汚染研究所のウィン・カウガー氏は「この56のグローバル企業には、プラスチック汚染に対して断固とした行動をとる責任がある」と指摘する・・・

『政治はなぜ失敗するのか 5つの罠からの脱出』

2024年5月8日   岡本全勝

ベン・アンセル著・砂原庸介監訳『政治はなぜ失敗するのか 5つの罠からの脱出』(2024年、飛鳥新社)を紹介します。

宣伝文には、次のように書かれています
「政治はなぜ常に私たちを失望させるのか? 古代ギリシャから気候変動条約、ブレグジットまで、私たちが集まると近視眼的選択の「罠」に落ちてしまう。それを回避す
べく、直感に反する最近の研究成果、例えば政治・社会的平等の増加が大きな不平等をもたらし、不平等の高まりが民主主義を促す逆説などを活用して、現実政治の罠から脱出する方法を生き生きと説明する。」

監訳者である砂原庸介教授の解説が、わかりやすいです。
民主主義、平等、連帯、安全、繁栄という5つの概念が、それぞれに罠を抱えています。民主主義にあっては、集合的な意思決定と個人の選好がが必ずしも一致しないこと。平等にあっては、結果の平等が個人の自由を求める行動によって損なわれること。連帯にあっては、人びとの連帯にただ乗りして利益を得たいと思うこと。安全にあっては、安全を守るための制約から自分だけは自由になりたいこと。繁栄にあっては、将来の繁栄を実現するために抑制すべきなのに当面の利益を確保したいこと。
よりよい社会を実現するために、いずれも集団と個人との間で、あるいは将来と現在の間での「我慢すべきこと」を、我慢できずに個人や短期的な願望を選択してしまうのです。
では、どうすればこの罠から脱出できるのか。重要視されるのが、制度と規範です。公式、非公式に私たちの行動に方向付けを与えてくれて、罠に陥ることを防ぐのです。

このように、政治の分析だけでなく、処方箋を提示するのです。砂原教授は次のように指摘しています。
「近年の政治学研究は、他の社会科学分野と同様に、方法論の精緻化が進んでいる。それによって、少しずつ因果関係を理解することができるようになっているのは確かで、特に政治制度がどのように人々の行動に影響を与えるかについての知見は広がっている。しかし、発見された因果関係が社会の中でどのような意味を持つのかは確定しにくく、得られる知見は技術的な性格が強くなっていて『このようにすべき』という指針を生み出すことが難しくなっている。そのような中で、本書の素晴らしいところは、実証研究の積み重ねの上に立ちながら、その含意を引き出して包括的な社会ビジョンを示し、そこに至る道筋を議論していくところだ。」
参考「実用の学と説明の学」「文系の発想、理系の発想

小学生、知らない人とSNSでやり取り

2024年5月8日   岡本全勝

4月26日の読売新聞東京版に、「「知らない人とSNSでやり取り」小学1~3年生の22%、うち3割は自分の画像送受信…都調査」が載っていました。

・・・SNSなどで知らない人とやり取りしたことがある小学1~3年生のうち、約3割が自身の画像を送受信していたことが、東京都の調査でわかった。都はSNSの使用を制限できる「フィルタリング」を使うなどして、トラブルを防止するように呼びかけている。

調査は今年1月5~19日、小中高生にスマートフォンやタブレット端末を持たせている保護者2000人を対象に行った。
子どもがSNSなどで知らない人とやり取りしたことがあるかを尋ねたところ、19・0%が「ある」と回答。年代別では、小学1~3年生が22・6%に上り、高校生が20・6%、中学生が18・4%、小学4~6年生が14・2%と続いた。
知らない人とやり取りした内容を聞いた質問では、全体の61・7%が「メッセージの送受信」と回答。次に多かったのが、「ゲームでの対戦やチャット」の37・5%だった。「顔や身体の写真・動画の送受信」は20・3%。年代別で最も多かったのは、小学1~3年生で33・6%だった・・・