年別アーカイブ:2024年

大月規義記者、東北の「失敗例」継承して2

2024年3月1日   岡本全勝

大月規義記者、東北の「失敗例」継承して」の続きです。復興庁幹部を務めた林俊行さんの反省も載っています。

・・・震災から2年後の13年、復興庁で住宅再建を担当していたときに、苦い経験を味わった。
津波を避けられる高台などに整備する宅地がどれだけ必要か、連日調べていた。岩手県と宮城県で被災した自治体が「必要」とした宅地を積み上げると、計約2万6千戸分に達した。
「多すぎる。手遅れかもしれない」。故郷に戻らないと決めた世帯が反映されているか疑問が湧いた。被災自治体に、本当に必要な戸数を報告してほしいと頼んだ。

すでに自治体は土木系のコンサルタント会社などと一緒に、「立派な」復興計画を作り上げていた。岩手県陸前高田市のように、震災前より人口が増える計画をつくった自治体もあった。
大幅に修正する自治体もあれば、まったく変更しない自治体もあった。1年後、必要な宅地は2県で11%減った。最終的には初期の計画から36%減った。

「それだけ縮小しても、誰も利用しないままの宅地が残っていた」。林さんは19年に再び復興庁に戻った。津波を受けた被災地に、広大な「空き地」ができているのを目にした。
「建設業界にとって復興は『稼ぎ時』のため、コンサルはきれいな復興の絵を描く。自治体がそれを真に受けて計画が一度走り出してしまうと、止めるのは難しい」。自戒を込めて語る。「巨大な公共工事をみると、誰のための復興だったのかと思う」・・・

朝日新聞、論壇時評で取り上げられました

2024年2月29日   岡本全勝

今朝2月29日の朝日新聞「論壇時評」、「能登地震から考える 人口減少、持続可能な社会とは」で、宇野重規・東大教授が、先日のヤフーニュースでの発言を取り上げてくださいした。ありがとうございます。

・・・復興庁の元事務次官である岡本全勝の「能登地震の復興は東日本に学べ」も考えさせられる(〈3〉)。東日本大震災からの復興に約10年にわたり取り組んだ岡本は、「地元から離れたくない」という住民の気持ちと、現実の生活環境の水準との間でいかに折り合いをつけるかがポイントだとする。その際、「市街地」「中心集落」「周辺集落」を区別し、それぞれの持続可能性を考慮した上で、ある程度の選択と集中も必要だという。街を復旧したものの住民が戻らなかったことがあった東日本の経験も踏まえ、住民の議論と合意によって復興計画を策定してほしいとする・・・

〈3〉小川匡則「『能登地震の復興は東日本に学べ』元復興庁・岡本全勝さんの提言 町を元に戻しても人は戻らず」(Yahoo!ニュース オリジナル 特集、2月9日)*

大月規義記者、東北の「失敗例」継承して

2024年2月29日   岡本全勝

2月26日の朝日新聞夕刊に、大月規義編集委員の「誰のための復興なのか、東北の「失敗例」継承して」が載っていました。

・・・大きな被害を受けた能登半島の人たちも、震災前の町をつくりかえる「復興」へ向かう時期が早晩くるだろう。そのとき、東北の復興は参考になるのか――。
11年余り、人口ゼロの状態が続いた福島県双葉町。原発事故という特殊な背景があるが、一から町づくりを強いられているという点で、究極の復興事例と言える・・・

そこに移住した、浜田昌良・元復興庁副大臣、参院議員(公明党)の話が載っています。本論と違った箇所を紹介します。
・・・いま、複雑な気持ちで見ている事業がある。長年帰れなくなった家々の「解体」だ。
約13年前の震災でさほど損傷を受けていなくても、原発事故で長い間住めなくなった住宅は「機能的損壊」として、自然災害の場合の「半壊」の扱いにできる。
「そうするように指示したのは自分だった」と明かす。半壊にするかしないかで、何が違うのか。
半壊認定を受けた世帯が解体を余儀なくされた場合、全壊の家屋と同じように「被災者生活再建支援金」の制度の対象となる。1世帯最大300万円。
もともとは、住宅という私財の再建に公的資金を入れることができなかった阪神大震災をきっかけにできた制度だった。
「福島の避難者によかれと思って復興庁に指示したが、時間がたつにつれ制度本来の目的が見失われ、帰らなくても支援金ほしさに解体を急ぐ人たちが出てきた。原発事故の賠償金をもらって家は再建できているはずだが……」・・・

原発事故で住めなくなった家屋、土地、家財については、東京電力から賠償金が出ています。また、別の場所に家を建てる際にそれだけでは不足する場合にはその差額も補填されます。この方々に被災者生活再建支援金を支給するのは、本来の住宅再建支援とは異なった趣旨になっています。

管理職が管理職の仕事をしない

2024年2月28日   岡本全勝

職場の悩みは人間関係」の続きです。豊田自動織機の調査報告書では、次のようなことも指摘されています。豊田自動織機「調査報告書(公表版)」2024年1月29日

・・・当委員会のヒアリングにおいて、これらの管理職は、「設計グループ出身であり、適合業務の経験がなかったため、適合業務に詳しい適合グループの担当者らや高浜工場の担当者を信頼し、劣化耐久試験に関する業務を一任していた。」、「船舶用エンジンの出身なので、フォークリフト用エンジンのことは分からない。」、「適合業務に関する知識や経験がなかったため、適合業務の担当者に対して、日程に関するコメントや設計者の視点からのコメントはしていたものの、基本的には担当者に劣化耐久試験を含む適合業務を一任していた。」等と述べ、自身が経験してこなかった業務やエンジンについては、知見・経験がないため、管理職としてのチェック機能を果たせていなかったと述べている。
しかし、管理職のこれらの発言は、管理職としての責任を全く自覚していなかったことを自認するに等しいものである。
管理職が自らの所掌する業務を全て担当者として経験することは、むしろ稀である。その上で、管理職としては、所掌する業務の基本的な知識や管理上の要諦を身につけ、部下からの報告の内容に耳を傾け、問いを発するなどして問題の有無の発見に努め、適正な業務執行がなされるよう管理する必要がある・・・(169ページ)

「管理職のこれらの発言は、管理職としての責任を全く自覚していなかったことを自認するに等しいものである」という指摘は、厳しいですね。しかし、指摘の通りでしょう。
「管理職が自らの所掌する業務を全て担当者として経験することは、むしろ稀である。その上で、管理職としては、所掌する業務の基本的な知識や管理上の要諦を身につけ、部下からの報告の内容に耳を傾け、問いを発するなどして問題の有無の発見に努め、適正な業務執行がなされるよう管理する必要がある」とは、当然のことです。
これまでは「部下に任せる上司」が、よい上司と考えられてきました。しかし、それでは、いてもいなくても一緒です。

能登半島地震のみ給付金倍増、公平さ欠く住宅再建支援

2024年2月28日   岡本全勝

2月22日の日経新聞に、斉藤徹弥・編集委員の「能登半島地震のみ給付金倍増、公平さ欠く住宅再建支援」が載っていました。詳しくは原文をお読みください。

・・・能登半島地震で被害の大きい石川県の奥能登地域を対象に、住宅再建の支援金を実質的に上乗せする政府の方針が波紋を広げている。災害大国の日本は誰もが被災者になり得る。被災した地域や時期、居住形態で手厚さが異なる制度は、公平性などの観点から十分な検討が必要だ。
住宅再建への公的支援は被災者生活再建支援法に基づき、300万円まで支給される。これに加えて政府は奥能登6市町の高齢世帯などに、さらに最大300万円を給付する新制度を打ち出した。支給額は最大で2倍の600万円になる。

支援金は国と都道府県が折半で出資する基金から拠出している。総務省は全国知事会に引き上げを打診したが、知事会は「引き上げる根拠はない」と否定的だった。
引き上げは知事会でもかつて議論したことがある。ただ過大な公的支援は地震保険加入や耐震改修などの自助を損ないかねない。地域事情に応じて独自に上乗せする都道府県もあり、財政負担を考えれば全国一律の制度は最低限が望ましい。
議論の末、知事会は「自助、共助、公助のバランスが重要」「支援金は見舞金的なもの」として300万円の上限を維持する報告をまとめた。今回の対応もその方針に沿ったものだ。

「できる限り支援したい気持ちはみな持っている。その中でなぜ能登半島地震の被災者にだけ、これだけ多額の税金が投入されるのか。政府の説明は十分でない」。千葉県の熊谷俊人知事はこう注文をつけた。
熊谷氏が挙げる問題点は住宅支援を巡る課題の本質を突く。
まず過去の災害や今後の災害との整合性だ。昨今の物価高を反映するのはよいが、被災した時期で額が2倍も異なるのは公平性を損なう。
次に地震保険に加入したり自費で耐震改修したりした人との間にも不公平感が生じかねない。被災後、賃貸を選んだ人への支援は最大150万円で、持ち家世帯と数百万円の差がつくことをどう考えるか。

行政は本来、住宅などの私有財産の形成に公費を投じるのは避けるべきだという考え方がある。
被災者生活再建支援法は、住宅は復興に不可欠で公共性があるとして住宅再建への公的支援に踏み出した。だが、防災の基本は自助、共助、公助。それぞれが機能するよう常にバランスに気を配る必要がある。
政府は新給付金を奥能登に限った特例としている。だが災害時の特例は新たな前例として踏襲されやすい。南海トラフ地震や首都直下地震で上乗せするなら給付金は巨額になる。丁寧な議論が欠かせない。

鳥取県知事時代、国に先立って住宅支援制度を設けた片山善博氏は「軽はずみだ。公的支援には経緯もバランスもあり、個人財産に税金を使う根源的な問題もあるのに、そうした議論を素通りしている」と指摘する。
被災地に寄り添う姿勢を見せることで政権浮揚を狙ったと見透かされれば、多くの地域の反感を買い選挙にも逆効果だ。行政の公正さこそ、信頼回復の第一歩である・・・

私がコメントライナーに書いた「工程表のない政治」の問題とも共通します。