ひとりミドルの衝撃

4月11日の読売新聞「シングル欄」(こんな欄があるのですね)、宮本みち子・放送大学名誉教授へのインタビュー「ひとりミドルの衝撃って?」から。宮本先生には、私が第一次安倍内閣で再チャレンジ政策を担当したときに、ご指導をいただきました。

・・・ 「東京ミドル期シングルの衝撃」(宮本みち子・大江守之編著、東洋経済新報社)という本が刊行された。東京区部単身者の4割近くを占める35~64歳を対象にした研究だという。筆者もその一人。何が「衝撃」なのだろうかと、研究グループを主導した宮本みち子放送大学名誉教授を訪ねた・・・

――本に、この年代の単身者は行政には見えない存在だった、とありました。
「シングルに対する行政の関心は主に高齢者にあり、現役で働く人たちに政策としてかかわる必要はあまりないという認識が強いと思います。この本は2013年に開始した新宿区の調査を踏まえてその後23区に広げ、約10年に及ぶ研究をまとめたものです」

――何が見えましたか。
「ミドル期シングルには多様性があるとはいえ職業上の役割が生活の多くを占め、人間関係は限定的です。個人化と流動化が進む都市空間で、シングルが孤立せずに暮らすには、“開かれた場所”と“弱い絆”を豊かにする街づくりが必要です」

――調査したシングルたちの関心事は何でしたか。
「一番の不安は、寝込んだ時にどうするか、でした。女性は親きょうだいに頼る意識が強く、日頃から仲良くしてもいます。男性は仕事中心で親族との交流の頻度が低く、行政サービスを頼る意識が強い」
「互いの関心と配慮で結び付く持続的な関係を『親密圏』と呼びますが、これを持たない人が特に男性で目立ちます。家族を基盤にした親密圏が弱まる一方で、会社中心の日々で新たな親密圏の存在が見えない。そうなると孤立、孤独の問題が出てきます」

――どんな親密圏を築けばよいのでしょう。
「二つの方向があって、一つは家族の見直し。法律婚か未婚かという二者択一を脱して、LGBTQ(性的少数者)の人たちも含めた多様な親密圏を広げていくことです。もう一つは住宅。孤立した住宅ではなく、シェアハウスのように、プライバシーを確保しながら共同生活のメリットを増やしていくなど、住まいの多様化を進めることです。どちらも今のところ、期待されたほどには増えていません」