政党内の集権と分権

2月28日の日経新聞に、斉藤徹弥・上級論説委員の「自民党改革に権力抑制論を 集権化にポピュリズムの芽」が載っていました。自民党における、県連と派閥の機能として「分権」を指摘しておられます。その上で、

・・・政党として権力集中と権力分立をどう考えるべきか。これは時代背景やどんな政治観に立つかで異なるだろう。
迅速な合意形成を重視するなら強いリーダーシップが必要で集権が適している。冷戦終結で激動する国際情勢を受けた平成の政治改革では、政治に決定力をもたせるため、党本部の力を強める制度が相次いで誕生した。
多様な価値観を反映すべきだという政治観からは分権が望ましい。極端な政策には異なる立場から抑止が働き、ポピュリズムにも耐性がある。いわゆる振り子の論理で、地方組織や派閥はバランサーになってきた。

この30年、決められる政治への改革が進んできた。調整コストが少なく決定が迅速な権威主義国との体制間競争を考えれば、決定力のある集権化は必要かもしれない。
ただ良いことを決めやすい制度は、悪いことも決めやすい。最近、岸田首相が打ち出す政策は一時的な減税、被災地以外に不満の種をまく住宅再建支援など、ポピュリズム的な狙いが見透かされる例が散見される。

現代はポピュリズムや極右政党のような極端に走りやすい。日本は比較的それらに陥りにくいとされてきたが、決定力重視の傾向が強まればリスクは増す。
権力分立は人類が培ってきた統治の知恵である。派閥を解消し、地方組織への統制を強めるなら、それに代わって権力を抑制する仕組みのあり方をしっかり考えたい・・・

国民から見ると、対外的には、代表による集権的な説明が欲しいです。党内事情を理由にした歯切れの悪い説明は、納得されないでしょう。他方で、党としての決定の際には、分権的な過程が必要でしょう。

篠原俊博さん登壇

市町村アカデミーで、総務省と共催で「DX推進リーダー育成セミナー」を開催しました。現在、最先端の課題で重要な研修の一つです。「概要」「時間割

そこでお願いして、篠原俊博さん(元デジタル庁統括官)に、講師として来てもらいました。篠原さんは自治省入省、地方行政分野と電子化分野が専門です。デジタル庁統括官も勤め、現在は株式会社SHIFT DX&戦略プロジェクト本部プリンシパルです。
官と民との経験がある、国と自治体の両方が分かる、行政電子化がわかる数少ない人物です。しかも、デジタル庁統括官(局長級)まで務めた人です。行政にはその分野の専門家は少なく、情報化企業には行政の実務が分かる人がいません。

篠原さんの経験を活かして、行政の電子化で、よかった点、悪かった点を話してもらいました。なかなか順調に進まない行政の電子化。その苦労と欠点を話すには、この人をおいていないでしょう。関係者は、よいことばかりを話す傾向がありますから。
なぜ、マイナンバーカードの保険証利用が進まないか。自治体職員の電子化への消極的な理由。電子化を進めるにはデジタルの知識ではないことなどなど。私も傍聴したかったのですが、本業があって一部しかできませんでした。

市町村アカデミーで講義してもらいましたが、多くの自治体でも(彼が引き受けるなら)話してほしいです。
篠原さんは、「急速に変化する日本の労働慣行」でも紹介しました。

会社で初の賃上げ

2月28日の日経新聞に「モスフードサービス、初のベア実施 定昇含め8%賃上げ」という記事が載っていました。
・・・モスフードサービスは27日、4月に正社員や嘱託社員約650人を対象に賃上げを実施すると発表した。ベースアップ(ベア)の実施は記録が残る限り今回が初めてとしている・・・

よい話だと思いつつ、ベースアップが記録に残る限り今回が初めてということに驚きました。日本では30年間にわたって給料が上がらなかったのですから、このような会社は多いのでしょう。給与担当者も、前例がないので困るでしょうね。

家のツバキが咲きました

3月になりました。2月に暖かい日が続いたあと、また寒い日が戻ってきています。でも、春は近づいているようです。
ご近所の紅梅白梅は盛りを過ぎ、ミモザは今年も鮮やかな黄色い花を咲かせました。お向かいの庭の水仙は、つぼみが膨らんでいます。孫と植えたチューリップは、芽を出して伸びています。

我が家の紅ツバキは、一輪花を咲かせました。去年夏に、チャドクガ対策もあり、伸びた枝を刈り込んだので、今年はつぼみが少ししかついていません。仕方ありませんね。
近所で作業をしておられた庭師さんと立ち話をしたら、「近年はチャドクガが発生しないのです」とのこと。「気候変動なのか、自然の摂理なのでしょうか。アメリカシロヒトリも、かつてほど見かけなくなりました」と言っておられました。

仕事をしない大企業幹部

半導体大手エルピーダメモリの社長を務めた坂本幸雄さんが亡くなられました。2月28日の日経新聞、西條都夫・編集委員の「坂本幸雄氏死去 世界標準の半導体プロ」に、次のようなことが書かれています。

・・・「知る人ぞ知る存在」から、一躍脚光が当たったのが2002年に経営危機にひんしたエルピーダメモリに再建の切り札として招かれ、社長に就任した時だ。同社はもともとNECと日立製作所のDRAM事業が統合して発足。その後、三菱電機の同事業が加わり、寄り合い所帯感が強かったが、坂本氏の剛腕で組織に心棒が通った。

「大企業出身の幹部は何がダメといって、まず仕事をしない。朝来るとお茶を飲みながら同僚と雑談したり、新聞を読んだりする。外資系の長い私にとって、日本企業にはこういう手合いが一定数いて、しかも組織のなかで比較的大きい顔をしていることが新鮮だった」と後々振り返った・・・

皆さんの職場にも、こんな上司がいませんか。