自分で市場価値を高める社員

2月5日から、日経新聞2面に「ワクワク働いていますか」という連載が載っていました。6日の第2回は「働くZ世代「頼れるのは自分」 市場価値向上に貪欲」でした。

・・・都内のシステム開発会社に勤めるエンジニアの日高僚太(24)は午後7時半に仕事を終えた後、再びパソコンに向き合う。ここからは副業の時間。クラウドを使って働きたいエンジニアのメンターとして、IT(情報技術)スキルを教えている・・・本業ではプロジェクト責任者として働く。
「社内外で多くのことを吸収し、成長するのが喜び」と日高。目まぐるしく必要な技能や知識が変わるITの世界で「頼れるのは自分」とも強調する・・・

・・・若者は仕事で何に成長を感じるのか。取材班が働くZ世代(1990年代半ば〜2010年代初頭生まれ)50人に聞くと、「知識や経験値が増えること」と「結果を残すこと」との回答がそれぞれ約3割にのぼった。
Z世代は多感な時期にリーマン・ショックや東日本大震災を経験した。最近は新型コロナウイルス禍が起き、経済や社会の不安定さを目の当たりにした。芽生えたのは組織に身をすべて委ねることへの不安。目に見える実績や数字を追い求め、自分の市場価値の向上に貪欲だ・・・

・・・機能性衣料品を手がけるスタートアップ、TENTIAL(テンシャル、東京・中央)で働く石川朝貴(28)は中国の消費者に熱心に問いかける。石川は同社の海外展開の責任者。現地の消費者のニーズを聞き取る市場調査に奔走する。「自分にしか出せない結果を残したい」と目を輝かせる。
販売職で入った前職の大手メディアは残業がないなど職場は「ホワイト」だった。うんざりしたのは何をするにしても色々な上司の承認が必要な「はんこリレー」。仕事のスピード感が遅く3カ月で退職した・・・

・・・今の若者は成長に「タイムパフォーマンス」(時間効率)も求める。
転職サービス「doda(デューダ)」では、入社直後の2023年4月に転職サイトへ登録した新社会人が11年から23年にかけて約30倍に増えた。スキル向上や責任ある仕事の機会を与えなければ、熱意ある若者は企業から去っていく・・・

日本のGDPが世界4位に

内閣府が、2023年の国内総生産の数値を公表しました。各紙が「ドイツに抜かれた」と伝えています。
・・・2023年の国内総生産(GDP)は、物価の影響をふくめた名目GDPが前年より5・7%増え、591・4兆円だった。米ドルに換算すると1・1%減の4・2兆ドルで、ドイツ(4・4兆ドル)に抜かれて世界4位に転落した。1968年に西ドイツ(当時)を追い越して以来、55年ぶりに日独が逆転した・・・「日本GDP、4位に転落 円安響きドイツ下回る」2月16日の朝日新聞。

報道では、第4位に転落したことを強調していますが、問題はそこではありません。ドイツの人口は8000万人余りで、1億2000万人の日本の3分の2です。すなわち、一人あたり国内総生産では、日本はドイツの3分の2なのです。それは、個人の豊かさと言い換えることができます。

2月17日の日経新聞5ページに、「物価を考える 名目GDP600兆円」という記事が載っていて、各国の名目GDPの伸びがグラフで出ていました。
このグラフでは、1993年を起点に100として、日本やアメリカ、ヨーロッパ先進国の名目GDP(自国通貨建て)の伸びを示しています。アメリカ、イギリスは3倍以上、フランス、イタリア、ドイツが2倍以上、日本は横ばいです。毎年2~3%程度の伸びがあると、30年間でこれだけの差が出るのです。日本だけが独自の道を歩んでいます。

30年間とは結構長い時間です。どこに問題があったのでしょうか。昭和後期に奇跡のような高度成長を遂げ、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われて自慢していたのに。
数字では見えない、悪いことがあります。企業はリストラという名の下に社員を解雇し、非正規や派遣社員に置き換えました。役所も行政改革の旗印の下、職員を非正規職員に置き換えました。そして、就職氷河期、年越し派遣村、子どもの貧困、結婚できない若者という言葉に象徴されるような、不安な社会を作ったのです。子どもの数が減るのも、これが大きな要因でしょう。
数字の上では横ばいですが、正規と非正規の間の格差、社会の分断を生んでいるのです。社会は悪くなっています。

障害児の親への支援

2月5日の日経新聞ダイバーシティ欄に「障害児の親への両立支援に光」という記事が載っていました。

・・・世の中には仕事との両立を阻むハードルが多数存在しているが、これまで支援の網から漏れていた課題にようやく光が当たろうとしている。障害児や医療的ケア児を育てる保護者の両立問題だ。一般的な子育てと違って成長とともに親の負担が軽くなるとは限らず、既存の子育て支援では追いつかない。国が育児・介護休業法改正案に支援拡充を盛り込むなど官民が動き始めた・・・

詳しくは本文を読んでいただくとして。障害を持っていて特別支援学校などに通う児童生徒数は約62万人、全体の6.5%になります。その親の多くは、仕事と子どもの世話を両立させる苦労をしています。他方で、多くの企業は特に配慮していません。

健康な人にとっても、障害は他人事ではなく、誰もが持つ可能性のあることです。これまで、見てみないふりをしていたこと、配慮しなければならないことがたくさんあります。

『市政』2月号「地域でこどもを守り育てる」

全国市長会の機関誌『市政』2月号の特集は、「地域でこどもを守り育てる」です。
こども食堂支援で活躍している湯浅誠さんが、「こども食堂から考える こどもの居場所づくりと行政支援の在り方」を寄稿しておられます。

子ども食堂は、家庭の事情で食事が満足に食べられない子どものために開設されていますが、子どもの居場所つくりというより大きな目的があるようです。そして、子どもだけでなく、年齢を問わない居場所を目指しているところも多いようです。
この特集にもあるように、子どもを孤立させない対策が広まっています。

現代社会の大きな問題である孤独・孤立対策のために、子どもだけでなくすべての世代に対して開かれた居場所が求められています。
そして、居場所という概念にとらわれず、地域のつながりという機能を強くする必要があります。これが、地域の安心を作る次の課題です。

ひきこもる人の心の中

2月2日の朝日新聞夕刊に、池上正樹さんの「ひきこもる人、その心の声は」が載っていました。ひきこもり状態にある人(15~64歳)はいま、全国に146万人います。

ひきこもる人は、いまだに「家族に甘えている」「働かないで楽をしている」と言われることが多いが、「それは全くの誤解。実態はまるで違います」と強調する。
では、ひきこもりとは何か。「過酷な状況を生き延びるための防御反応であり、そんな状況はいつ誰に訪れてもおかしくありません」と語る。
例えば、学校や職場でのいじめやハラスメントで尊厳を傷つけられる。厳しい労働環境で心身の健康を脅かされる。様々な事情が重なり他人が怖くなると、人との関わりを避けざるを得なくなる。「それでも自死を選ぶのではなく、何とか生きようとしている。それがひきこもっている人の心の内です」
そうした実情を踏まえた上で、ひきこもり状態からの回復には何が必要なのか。まずは、傷ついた心と体をじっくりと癒やすことだが、実際は本人や家族は、社会的なプレッシャーにさらされ続けている。
働かないのはいけないこと、親の収入に依存し迷惑をかけている……。何より本人が「ふがいない自分」を責め、苦しい思いで日々を送る。「これではいつまでも気持ちが休まらず回復は遠のく」と指摘する。

取材を続けてきたこの30年近く、ひきこもる人が増え続ける問題に対応できない福祉行政の姿を目の当たりにしてきた。
ほとんどの福祉窓口の職員は傾聴はしてくれる。だが、何をしたらいいかは教えてくれない。職員たちもどうしたらいいか分からない様子だった。親が相談に行くと「本人を連れてきて」と言われることも多い。それができないから苦しんでいる親子をたくさん見てきた。
厚生労働省は09年から、都道府県と政令指定市に、一次的な相談の窓口となる「ひきこもり地域支援センター」を設けた。22年にはそれを拡充し、市町村単位に窓口を置く「ひきこもり支援ステーション」事業などを始めた。だが、全国1724自治体のうち、新たな事業に手を挙げているのは1割強の210余にとどまる。
根拠となる法律がなく、支援するかどうかは自治体の裁量となる。なかには、独自の施策を打ち出す熱心な自治体もある一方、ほとんど関心を示さないところもあり、地域間で格差が大きいのが実態だ。