年別アーカイブ:2023年

最低賃金千円に思う

2023年7月30日   岡本全勝

7月28日に中央最低賃金審議会が最低賃金の平均を時給千円に決めたことが報道されています。例えば、29日の朝日新聞「最低賃金、1002円に引き上げ
・・・中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)は28日、最低賃金(時給)を全国加重平均で41円(4・3%)引き上げて1002円とする目安をまとめた。過去最大の引き上げ額となり、政府目標でもある1千円を超えた。物価が高騰するなか、実質的な賃金水準を維持するため、物価上昇率を上回る引き上げが必要だと判断した・・・

この報道の問題点を、いくつか指摘しておきます。
1「過去最大の引き上げ額」と書かれ、いかにも高くなったように思えますが、先進国では最低水準です。欧米では多くの国が日本の倍近いです。それを指摘してほしいです。

2 また、この金額は審議会が決めたもので、政府が決めたものではありません。そして、この後、各県の審議会が、県ごとに数字を決めます。政治が責任を持っていないのです。仕事に就けない人の生活保障が「生活保護基準」とすれば、働く人の生活保障が「最低賃金」でしょう。審議会に丸投げせずに、内閣が金額と方向を決めるべきです。
このような重要なことを審議会で決めるのは、政治主導への転換の忘れ物です。審議会の決定では、国会での審議もできません。

3「中小企業が困る」との意見があります。それはもっともですが、賃金の引き上げは、価格に転嫁すべきです。「売り上げに響く」との意見もあります。これも一部には正しいでしょう。しかし、コンビニやファストフード店は、どの店舗も同じように人件費が上がります。競争条件は同じです。そして、そのような店で働いている従業員の賃金が上がり、消費が増えるのです。赤福餅も紅葉饅頭も、同じでしょう。国内の賃金が同じように上がるのですから。
経営者の「値上げするしかない」という声を、困ったことのように伝える記事もあります。(給料が同じなら)物価は上がらない方が良いのでしょうが、物の値段が上がらず、給料が上がらないことが、この30年間の経済停滞を招いた、あるいはその結果だったのです。そして世界に取り残されました。物の値段が上がらないことは、必ずしも生活者の味方ではありません。

4 問題は、海外との競争する製造業です。しかしすでに、日本の賃金はアジアでも高くありません。この欄で時々取り上げるビッグマック指数で、ソウルやバンコクに負けているのです。低賃金で海外との競争で負けるようでは、申し訳ありませんが将来性はありません。「賃金を上げると、安いアジアに負ける」という言説は、過去のものです。

5 急に最低賃金が上がると、企業も困るでしょう。そこで、中長期の見通しも示すべきです。
政府が行うべきは、「今後毎年2%ずつ最低賃金を上げる」という方針を示すことであり(これでも先進各国に追いつくには時間がかかります)、各年度の金額も審議会に投げずに内閣で決めることです。そして、それに耐えられない中小企業に対する支援策です。

事務局の発表資料で記事を書いていては、物事の本質や位置づけは見えませんよ。

最初から完璧を求める社会

2023年7月30日   岡本全勝

7月15日の朝日新聞夕刊、藤田直哉のネット方面見聞録」「マイナ問題、世代分断と完璧主義を越えて」から。

・・・もちろん、個人情報は保護されるべきで、不利益を被る人が少ない方がいい。だが、そのことによってデジタル化(DX)や効率化が進まないことの損失も大きい。ここには、単なるシステムの不備よりも、大きな社会的・政治的ジレンマが横たわっているように思われる・・・

・・・二つ目は、細部にこだわりがちな日本社会の神経症的な性質と、IT業界やシリコンバレーなどの「やってみて、ミスがあったら修正していく」やり方の齟齬である。IT系のサービスは前例がないことも多いので、最初からミスなく提供することは困難である。だから、サービスを始めて、問題があったら修正していくという手法を採ることが多い。それに対し、日本は、企業や行政に最初から完璧であることを求めがちであり、組織も防衛的になりがちである。しかし、もはや日本はバブル崩壊前のように豊かではなく、人材の数にも余裕がない。産業構造も大きく変わった。かつてのように細部にこだわり完璧を求める文化を維持するだけの体力がないのかもしれないし、それに合理性もないのかもしれない。

現状の危機感を、年長世代も理解し、協力する姿勢が、分断や敵対を越えるために必要である。そして、政府が「ミスがあれば必ず補償する」と約束し安心感を醸成することを前提に、最初から完璧を求めるのではなく、多少のミスを織り込んだ上でダイナミックな改革を進めていくことに対する国民的な合意と文化を形成していく必要があるのではないだろうか・・・

朝の集団ラジオ体操

2023年7月29日   岡本全勝

先日、小学生の孫娘が泊まりに来て、翌朝、集団ラジオ体操に連れて行かれました。近くの小学校の運動場です。高齢の方と、子どもと、子どもの保護者が、大勢集まってこられました。
私は、固まった筋肉をほぐし、70肩(40肩)を治し予防するために、職場で「NHKテレビ体操」をやっているのですが。朝の集団ラジオ体操に参加するのは、久しぶりです。あの開始の元気の良い歌(新しい朝が来た・・・)も久しぶりに歌いました。

その日は、北海道本別町からの生放送でした。第一体操と第二体操の間に、音楽に合わせて首を回す運動をします。その音楽は、松山千春さんの「大空と大地の中で」を編曲したものでした。なるほど。

政治の行方 地盤沈下の中央省庁

2023年7月29日   岡本全勝

7月13日の日経新聞「「安倍後」政治の行方⑤ 地盤沈下の中央省庁」「霞が関のボトムアップ遠く 政策立案「コンサルに外注」から。

・・・官邸と中央省庁との関係は安倍政権下で変質した。「政治主導」を掲げた安倍氏が2014年に内閣人事局を発足させ、官僚の人事権にも深く関与するようになった。
同時に首相官邸が政策の司令塔となり、切り盛りをした経産省出身の今井尚哉秘書官らは「官邸官僚」と呼ばれた。官邸への行きすぎた「忖度」が生まれやすい環境となり、森友・加計学園問題などでは政と官の距離に批判が集まった。
当時、こうした問題は「政治主導」に起因する安倍政権特有の現象との見方が多かった。
発足時に「ボトムアップ」をうたった岸田政権で確かに人事権への関与は一部にとどまるようになったものの、官邸に抜てきされた一部の官僚が政策を動かす構図は変わっていない。
東大の牧原出教授は霞が関について「各省の官僚が政策を打ち出す流れになっていない」と指摘する。「かつて各省の官僚は政権の動向をみながら政策の弾込めをしていた。現在はそもそも政策立案に抑制的になっているのではないか」と分析する・・・

・・・ある政府高官はこんな内情を明かす。「主要官庁が政策立案をコンサル企業に依頼するようになってきた。かつては比較的単純な作業だったが今では重要政策も含まれる」
人材はかつてのようには集まらない。政策を動かすモチベーションも湧かない。そこへ国会対応などを中心とした膨大な作業がのしかかる。「日本最大のシンクタンク」といわれる霞が関が政策立案を外部委託するのは、行政機関が機能不全に陥ったに等しい。

衆院選が小選挙区制になってから四半世紀、中央省庁の再編からは20年が経過した。官僚主導から政治主導への転換を進めるにつれて中央省庁は地盤沈下していった。
「ボトムアップ」の掛け声だけでなく、公務員の働き方改革や国会改革なども含めた対応をとらなければ日本の活力を取り戻すような政策は出てこない・・・

部下に慕われる上司

2023年7月28日   岡本全勝

霞が関の定期人事異動が行われ、異動した人とともに、退職した人もいます。そのお祝い会やら、送別会が続いています。
ある後輩の送別会で、彼の仕事ぶりが話題になりました。仕事もでき、部下からの信頼が厚かったのです。仕事はできて当たり前なのですが、部下から慕われる人と、そうでない人がいます。何が良かったのか。本人は気がつかないので、その部下だった出席者に聞きました。いくつも長所が挙げられましたが、要約すると次のようなことでした。

・判断が速い
部下が相談に行くと、その場で方向を決めてくれたことです。「よし、これで行こう」とか「これは、××さんに相談に行こう」とです。必ずしも結論が出るわけではないのですが、次への段取りを示してくれます。すると、部下は次の段階に進むことができます。それがないと、もやもやが貯まります。

・話を聞いてくれる、一緒に考えてくれる
部下が相談に行くと、まずは話を聞いてくれます。多くの上司は部下の話を聞きますが、たぶん彼は、部下の目線まで降りて、相談に乗って、一緒に考えてくれるのでしょう。すると部下は、どんなことでも相談に行くことができます。「こんなことを相談して良いのだろうか」と、悩まなくてもすむのです。

・別の上司の前で助けてくれる
別の上司に案を持っていったときに、その上司は厳しい質問をするときがあります。部下たちは、立ち往生してしまいます。そんなときに、彼は、横から助け船を出してくれるのです。これは部下たちは助かりますよね。