年別アーカイブ:2023年

電話相談に答える

2023年3月3日   岡本全勝

2月18日の朝日新聞「メディア空間考」、浜田陽太郎記者の「患者家族の応対体験 AIに勝る「安心感」、自分は?」から。

・・・先日、認定NPO法人「ささえあい医療人権センターCOML(コムル)」の電話相談の研修に参加した。1990年の設立以来、6万6千件以上の相談に応じ、それを礎にして、患者やその家族の視点から情報発信や政策提言などを行ってきたのがCOMLだ。
この日のハイライトは、参加者同士で行うロールプレーで、私は初めて「電話を受ける側」の役割を与えられた。
架空の患者家族を演じる先輩相談員から「差額ベッド料」についての質問を受けて回答。COML理事長の山口育子さんから指導を受けた。山口さんは自身で2万5千件以上の相談を受けている大ベテランだ。
まず、自分の知識がいかにあやふやだったか痛感。伝えるべきポイントをいくつも落としていた。しかし、これはジャブが入った程度。

ノックアウト級のパンチは、相談を受ける姿勢がてんでなっていなかった、という指摘だった。
応答が早口。相手を説得するような、畳みかけるような口調。相づちの仕方も「はい、はい」ばかりのワンパターン。一番の衝撃パンチは「相談の途中で笑ったらダメ」という指導だ。「相手はばかにされたと思います。気をつけて」・・・

そして、浜田さんは、次のように書いておられます。
・・・今どきのAI(人工知能)は、質問すると人間との自然な会話のように文章で返事をくれるという。そんな時代でも、電話の向こうに人がいることの価値は何だろう。一つは相談者が「誰かに話せた。聞いてもらえた」ことで得られる安心感と思う・・・

「平成の地方制度改正をひもとく」2

2023年3月2日   岡本全勝

山﨑重孝・元自治行政局長を中心とした座談会「平成の地方制度改正をひもとく」(月刊『地方自治』)、2023年2月号は職務執行命令訴訟の改正についてです。(1月号

2000年に行われた分権改革以前は、機関委任事務という分類がありました。地方公共団体が処理するのですが、首長(知事、市町村長)が法令に基いて国から委任され、「国の機関」として処理する事務です。
機関委任事務について国は包括的な指揮監督権を有し、知事が機関委任事務の管理執行について違法や怠慢があった場合に職務執行命令訴訟を経て主務大臣による代執行を行うことができるうえ、総理大臣による知事の罷免が可能でした。公選による知事の身分を奪うことはおかしいので、知事罷免制度は1991年の地方自治法改正により廃止されました。

なぜ機関委任事務や職務執行命令訴訟という仕組みがあったのか、そしてなぜ廃止されたのか。この座談会を読むと、よく分かります。

オンライン講演の違和感

2023年3月2日   岡本全勝

2月21日の日経新聞夕刊コラム「あすへの話題」、斎藤真理子さんの「オンライン会議」に、次のような話が載っています。

・・・最初のうちは、オンライン会議に出るだけでへとへとになった。でも徐々に慣れた。3年経ってもいまだに慣れないのは、オンラインの講演などでさんざん話し、会が終了した直後のいたたまれなさだ。
「お疲れ様でしたー」でブツンと切れて、見回せばいつもの自宅、いつもの部屋で一人ぼっち。いい気になって喋った言葉が頭の中でぐるぐる回り、熱をもっている。一人だから言い訳も照れ隠しもできないし、反省会もできない。

講演会やシンポジウムに自宅から参加して話すと、会場で話すのとは全く違う種類の疲れを感じる。移動の時間や控え室、他の参加者やスタッフとの会話などで心の準備をするプロセスがなく、終了後に余韻を分け合う仲間もいない。滑走路のないフライトのようなものなので、離陸も着陸も衝撃が大きいのだ・・・

同感です。私はオンラインや録画での講演は苦手ですが、話すときだけでなく、その前後の「移行時間と空間」がないことも原因だったのですね。控え室での打ち合わせ、そこから会場への入場。そこで「アドレナリンの分泌」と「電圧の上昇」が起きて、気持ちが乗るのです。

JICA、イエメン政府研修講師

2023年3月1日   岡本全勝

今日3月1日は、独立行政法人国際協力機構(JICA)の、イエメン政府幹部向け研修講師に、横浜に行ってきました。
イエメンは、アラビア半島南端部にある国です。1990年に、それまで分かれていた南北2つのイエメンが統一されたのですが、2011年のアラブの春の影響を受け、大統領が失脚。その後、内戦が続いています。日本大使館も避難し、日本人は引き上げています。
まだ停戦など未来は見えていないのですが、将来の復興に向けて、日本に来てもらい、日本の復興を学んでもらうという企画です。

アラブの人たちには、かつて何度か大震災復興の講義をしたことがあります。資料をアラビア語にしてもらうのですが、ちんぷんかんぷんです。通訳も同じ。
当時の写真を使った説明なので、理解してもらえたと思います。話の途中でも、質疑の時間でも、たくさんの質問が出ましたから。

国外の大災害の際には、国際緊急援助隊が出動します。まずは人命救助です。現地ではその次に、復旧・復興が始まります。この分野でも、日本は経験と知識をもっているので、それを提供して支援できると思います。そのような仕組みをつくるべきでしょう。

話す力、自分との対話を重ねる

2023年3月1日   岡本全勝

2月21日の朝日新聞夕刊「取材考記」、大阪スポーツ部、堤之剛記者の「16歳で全豪テニス準V 自ら俯瞰し培う「話す力」」から。

・・・16歳とは思えぬ「力」に驚かされた。
テニスの4大大会、1月の全豪オープン車いす部門男子シングルスに初出場した小田凱人(ときと)が準優勝した。攻撃的なスタイルも目を見張ったが、興味深かったのが記者会見やスピーチで発する言葉だった。
決勝後の会見。小田は優勝したアルフィー・ヒューエット(英)を巧みに言語化した。「アルフィー選手はコートの外からでもコートの隅を狙うことができる。警戒していたが、慣れていなかった。そのボールに対応できなかった」
4大大会4度目の出場で初の決勝を終えたばかり。並の16歳ならば興奮は冷めていないだろう。だが、この種目の最年少出場者は、試合の局面などについての質問に、丁寧にすらすらと答えた。大会を通じて自らを俯瞰していた。

なぜ、大勢の前でよどみなく話せるのか。「最初は全然話せなかった。ただ、10代で4大大会を経験し、記者会見という場を設けられたことで話すのが苦でなくなった」
とはいえ、10歳で競技を始め、昨年5月の全仏で4大大会デビューを果たしたばかり。スピーチトレーニングもしていない。言葉に詰まってもおかしくないが、そんなそぶりは見せない。心がけていることがあるという。「答えるときに、自分の気持ちをどう伝えるかを考えている」

取材を続けていくうちになぜ「話す力」があるのか、少しわかった。一つ一つのプレーに明確に根拠があり、内なる自分と対話を重ねているから。だから、他者に聞かれてもすぐに答えられる。
小田は対戦相手と自己を分析しながら、試合を進めていた。相手を上回る方法はあるのか。指導者に頼ることなく、コートの状況に合わせて勝機を探った。

他競技の高校年代の選手を取材すると、「自分たちの野球」「自分たちのサッカー」といった言葉を使う。それが具体性を欠き、目指しているものが不透明なことがある。小田は「自分のテニス」とは言わない。具体的で柔軟な思考。こんな高校年代の選手が増えれば、日本スポーツ界は変わると思った・・・