日本経済はどこで間違ったか

川北英隆・京都大学名誉教授のブログ、4月19日の「日本経済はどこで間違ったか」から。

・・・日本経済の地位低下がますます明瞭である。国内総生産(GDP)でドイツに追い抜かれるとの観測が現実化しつつある。いずれインドにも抜かれるらしい。当然、アメリカと中国の背中は遥かに遠くなった。トップ集団から脱落するマラソン選手を見ているようだ。
何回書いたように、日本がトップ集団に位置することを切望している僕としては悲しい。それを他人事のように語る政策担当者や企業経営者が情けない。自己責任で対処するしかないようだ・・・

・・・1980年代後半のバブルの時代から金融システム危機を経て、日本経済の長い凋落が始まった。バブル崩壊の後、10年で立ち直るはずの日本経済だったのに、30年経った今も立ち直れていない。
その根本的原因は勇気を持って叫び、行動した者が少なかったことにある。目先の保身と事なかれに徹した者が多すぎた。
バブルの頃、日本に人口減少時代が到来するのは明らかな予測だった。その時代に向けて本気で対応した企業はごく少数だった。生産力人口の減少(1995年がピーク)とバブル崩壊の重りが不運だったと言えばそれまでだが、生産力人口減少の経済的な意味を本気で考える企業や政策担当者が皆無に近かったのが本質だろう。
むしろ企業は1990年代中盤まで続いた円高に恐れ慄き、海外進出を怠った。バブル崩壊に縮こまり、グローバルな競争に打ち勝つための設備投資を遅らせた。後者に関して、バブルと崩壊の主因が不動産投資や財テクと称された株式投資にあったのに、精算設備の積極的な増強と刷新まで同類とみなしたのである。羹に懲りて膾を吹いたわけだ・・・

・・・このサラリーマン的対応は近年、ますます大手を振っている。多くの対応が責任逃れ的になり、過去を踏襲し、誰も新たな決断しようとしない。これが2008年のリーマンショック以降の日本において、とくに目立つ特徴ではなかろうか。だから経済マラソンで先頭集団から置き去りにされ、後続に抜かれようとしている・・・

全国消防長会関東支部消防職員意見発表会

今日4月27日は、全国消防長会関東支部消防職員意見発表会に、幕張のホテルに行ってきました。審査委員長を仰せつかったのです。
消防に関しては、消防大学校長を勤めたことがあります。職員がキビキビしていて、素晴らしい組織です。火災現場という危険な場所に行くのですから、命がけです。新型コロナ患者の救急搬送という、危険な業務もあります。気を緩めることができない仕事、それを日々訓練しています。

11人の職員が発表しました。なるほどと思う点を指摘する発表がいくつもありました。現場でのトイレの必要性、外国人への防災教育、消火活動での職員の除染、若手職員の育成などなど。
みなさん、発表の態度、発声も立派で、甲乙つけがたかったです。最優秀賞に選ばれた2人は、全国大会に進みます。

仕事で必要な能力

4月12日の日経新聞夕刊「グローバルウオッチ」に「インドネシア 日本の規律性、教育に導入」が載っていました。

・・・地元で「就職率100%校」として人気になっている職業専門学校がある。ジャカルタ郊外の「ミトラ・インダストリMM2100」だ。日本の工業高校と商業高校を組み合わせたような私立校で、丸紅を退社した小尾吉弘さん(64)が2011年に現地の元仕事仲間と共同で創設した。
同校は仕事で必要な能力を「知識(知っている)」「技能(できる)」「態度(やり切る)」の3つに分ける・・・

鋭い分析です。知っている(筆記試験でよい成績を取る)だけでは、仕事はできないのですよね。頭がよく他人の仕事を批判するのに、自分ではできない職員。やらせればできるのに、積極的には取り組まない職員。みなさんの職場にもいませんか。

生成人工知能2

生成人工知能」の続きです。
では、どのような悪影響があるか。自分で計算せず電卓を使って算数の答えを書いた人は、日常生活で簡単な計算ができず、電卓なしでは暮らせなくなります。でも、電卓を持ち歩けばよいのでしょう。

人工知能で答案をつくって試験を通った人は、どうなるか。仕事場に人工知能を持っていけば、文章を作ることができます。電卓で計算することと同じです。すると経営者は、人工知能を持って出勤する労働者を雇う必要はありません。人工知能の機械を買えば、安上がりです。
当面、コンピュータ・人工知能にできないことは、過去の蓄積を超えて、新しいことを考えることです。人の能力は、機械に置き換えることができるような従来の延長ではなく、何か新しいことを付加することに使うべきです。

これに関して、「人間ワープロ」と私が読んでいる事象を指摘しておきます。会議の際に、出席者のおつきの人たちが、後ろに座って一生懸命メモを取っています。記者会見でも、記者たちが一心不乱に発表者の発言をワープロで打っています。これは、現時点でも、機械に置き換えることができるでしょう。

かつて部下が出席した会議の報告を求めた際に、「結論だけ言ってよ」とお願いしました。ところが。「今、全文を文字に起こしているので待ってください」「要旨をまとめるのは大変なのです」との答がありました。
そうです、単純な速記は機械にでもできる作業で、要旨をまとめるのは頭脳が必要です。あなたは、機械にもできる「人間ワープロ」ではなく、要旨をまとめる「頭脳」になってください。

負担増はいや

4月10日の朝日新聞に世論調査結果が出ていました。「負担増「よくない」60% 「異次元の少子化対策」財源 朝日新聞社世論調査

・・・ 8、9日に実施した朝日新聞の世論調査で、政府の少子化対策の費用にあてるために国民負担が増えてもよいかを尋ねたところ、「増えるのはよくない」が60%で、「増えてもよい」の36%を上回った。岸田文雄首相の唱える「異次元の少子化対策」の実現には膨大な財源が必要となるが、国民負担の行く末には厳しい視線が注がれている・・・
・・・防衛費の大幅な増額と、そのために1兆円の増税をする方針への賛否も尋ねた。防衛費の増額は賛成41%、反対50%と割れたのに対し、増税方針には反対68%が賛成26%を大きく上回った。防衛費増額に賛成の人でも、増税には4割が反対と答えた・・・

では、財源はどこから調達するのでしょうか。