1月29日の朝日新聞から、浜田陽太郎・編集委員の「55歳の「逃げ恥」体験」が始まりました。第1回は「俺って役に立ってないよな」です。
・・・55歳を超え、「自分は会社で役立っていないのでは」と悩み始めた記者。選択したのは、病む前に転地療養する「予防的休職」でした。会社を離れ、九州・大分で1年間、働きながら考えた定年後の生き方を、7回にわたり伝えます・・・
・・・私は現在56歳。アラ還の一記者だ。管理職のポジションとはほぼ縁が無く、出世とはほど遠い生活を送ってきた。そんな私が2021年春から会社を休職し、大分県にある社会医療法人で1年、無給の「研修生」として過ごした。
「長年取材してきた医療・介護の専門性を深めるため」。これが世間体のいい説明だ。だが、もっと差し迫った理由があった。新型コロナを引き金にメンタルがまずくなっていた。
当時の所属部署では中高年が居場所を探すのに苦労した。自らに「有用感」を持てず、心に疲れがたまっていった。ステイホームが続き、リアルに人に会う機会がなく、悩みや愚痴を吐き出すこともできない。
「俺ってあんまり役に立ってないよな」と落ち込んだ。以前、精神医療の取材をして、予兆があれば早めの対処が肝要と学んでいた。思い出したのが、会社の「自己充実休職」という制度だった。
「恵まれた正社員だからできることで、世間はぜいたくと思うだろうな」という内なる声も聞こえた。だが正直、このまま仕事を続けるのは無理だった。人間、思わぬ病で仕事を長期に休むことはある。病む前の転地療養は「予防的休職」と呼べるのではないか・・・
浜田さんは有能な記者で、福祉関係の専門家です。たくさん記事を書いておられます。「「高齢ニッポン」をどう捉えるか: 予防医療・介護・福祉・年金」(2020年、勁草書房)という著書もあります。このホームページに登場してもらったこともあります。
仕事ができる人で50歳前後に精神的に苦しくなった人を、何人か知っています。浜田さんの「予防的休職」が世間に認知されると、予防になるかもしれません。