黒田日銀10年、低金利なのに伸びない設備投資

12月7日の朝日新聞経済欄「黒田日銀10年 異次元緩和の光と影:下」「低金利なのに、伸び悩む設備投資」から。

・・・日本銀行が金融緩和で狙ったのは、人々が財布のひもを緩めて消費を拡大させることに加え、企業がお金を使って投資を増やすことだった。緩和で企業の行動は変わったのか・・・
・・・緩和前に超円高に見舞われ、低迷していた企業業績は緩和下の円安もあって回復。上場企業全体の2022年3月期決算は、最終的なもうけを示す純利益が過去最高となった。民間企業の国内の設備投資(名目)も、12年の76兆円から20年には86兆円に増えた。
ただ、設備投資は主要先進国より伸び悩む。内閣府の年次経済財政報告によると、各国の設備投資額(00年=100)を比べたところ、日本は12年の100から21年に108・7となったが、米国は131・1から177・5になるなど、他国の伸びはより大きかった。
日本が伸び悩む一因に、投資先が国内より成長が見込める海外に向かっていることがある。

「低金利だからということで、設備投資が増長されることはない」
11月、中間決算を発表した東レの大矢光雄副社長は記者説明会で、緩和が設備投資の判断に影響するか記者に問われ、こう否定した。世界29カ国・地域に拠点があり、売上高の海外比率は56%。22年度までの中期経営計画に盛り込んだ5千億円の設備投資も、6割が海外での投資だ・・・

・・・ 低金利環境で企業が助かった面もある。資金繰りが改善し、倒産件数は抑えられている。
東京商工リサーチによると、21年度の倒産(負債額1千万円以上)は5980件で1964年度以来の少なさだ。12年度に1万1719件だった倒産は緩和下で減少傾向が続き、19年度には8631件まで下がった。コロナ下の政府による金融支援もあり、歴史的な低水準に抑えられている。

一方で業績が悪く、本来なら経営が行き詰まりかねないような企業の延命につながったとの指摘もある。
倒産が抑えられれば雇用などにプラス効果がある半面、新陳代謝が滞れば、経済成長にマイナスの影響も出かねない・・・