10月28日の読売新聞解説欄、ジョセフ・ナイ氏の「台湾防衛 日米の意思示せ」から。
・・・私が日本に来たのは3年ぶりですが、前回は人に会っても台湾が話題に上ることは少なかった。それが今回、誰もがこぞって、台湾について議論していたのが印象的でした。台湾が有事になれば日本も影響を免れない、という認識が広まっているようです。それなら日本も、台湾を守る勢力の一角であることを中国に対して明確にしておくべきです。日台の関係強化が、中国の行動を抑止する一助になると考えるゆえんです。
台湾防衛という場合、中国軍による本格上陸作戦を警戒するだけでは不十分です。本格侵攻が難しいと判断すれば、海上封鎖やミサイル実射演習を繰り返すなどして台湾の貿易活動を妨害することも考えられます。そうした、実戦に至らない「グレーゾーン」の行動も認めない、という意思を中国に伝えることが重要です。例えば、海上封鎖に対抗するため台湾の港湾に艦船を派遣したり、船舶を護衛させたりすることも必要になるかもしれません。
一方で、台湾に対して、「正式な独立に踏み切ることは認めない」というメッセージを送り続けることも重要です。
72年のニクソン米大統領訪中以来続く米国の「一つの中国」政策は、「二重の抑止」とも言えます。中国の台湾武力侵攻は許さないが、台湾の独立宣言は中国をむやみに刺激するものであり、支持しない。バイデン大統領が度々、「中国の侵攻があれば米軍が対応する」と述べているのは前者に力点を置く発言ですが、ホワイトハウスがその都度、「『一つの中国』政策に変更はない」と説明しているのは、「台湾の独立も認めない」というメッセージなのです。台湾の 蔡英文 総統はそれをよく理解し、過去の政権より慎重な態度が続いていると思います・・・