現実逃避が進めるゲーム中毒

これも、定番になってきました。スマホ依存症についてです。8月30日の日経新聞に「スマホ依存防げ、自主対策広がる 各国の規制議論に対応」が載っていました。詳しくは、記事を読んでいただくとして。

スマホ依存症が、大きな問題になっています。生活が困難になるほどオンラインゲームなどに没頭する「ゲーム障害」は、2019年に世界保健機関が、ギャンブルなどと並ぶ依存症として国際疾病分類に加えたそうです。

子どもも大人も、たくさんの人が「中毒」になっているようです。面白いのでしょうね。ゲームの作成者は、そのようにつくっているのですから。
私は、もう一つの要因があると思います。それは、中毒になる人の精神状況です。それは2つあります。
一つは、「やめる」意志の強さです。面白いゲームでも、のめり込む人と、とどまる人がいます。これは、勉強を続ける集中力がある人と、投げ出す人がいるのと同じでしょう。この点で、子どもは、親や周囲が指導しないと危ないです。

もう一つは、現実からの逃避です。記事にも例が出てくるように、実生活がうまく行かない場合に、それからの逃避として、ゲームにのめり込むのです。たぶん、その人も「これではいけない」と思っているのでしょうが、それがまた、その現実からの逃避に逃げ込むという悪循環を呼ぶのでしょう。
学校が面白い、友達と遊ぶのが面白い、仕事が充実しているなど、ゲーム以外に生きがいや楽しみがあれば、中毒になることはないと思うのですが。孤立が、中毒を悪化させます。

衰退途上国

8月31日の日経新聞経済コラム「大機小機」は「「衰退途上国」から脱却するには」でした。

・・・本年5月に行われた日本経済学会春季大会のパネル討論でパネリストの1人が、日本は「衰退途上国」になってしまったと指摘していた。「発展途上国」が先進国よりも高い経済成長率を続けて先進国に追いついていくのに対して、「衰退途上国」は低い成長率を続けて世界から取り残されていく、そんな国になってしまったというのだ。
今日、日本の1人当たり国民所得は、かつてアジアの小竜といわれたシンガポール、香港などに抜かれてしまっている。このままでは、タイやインドネシアに抜かれるのも時間の問題だろう・・・

「発展途上国」「先進国」という言葉は、これまでよく使いましたが、「衰退途上国」という言葉は初めて聞きました。しかし、良くできた言葉だと思います。
それが実現しないように、しなければなりません。

組織運営の要諦3

組織運営の要諦2」の続きです。組織運営では、「集中と分散」「社風」の二つが肝ですが、これらは内部に関してです。それとともに、外部との関係、すなわち発注主との信頼関係や関係者からの信頼も重要です。

その組織に仕事を与えた「発注主」(官邸であったり大臣です)の信頼を確保する必要があります。
うまく進んでいる場合は、その報告だけですみますが、うまく進んでいない場合にそれを報告し、対策を相談することです。そして、発注主の「威を借り」て、組織を改編したり、関係機関に協力を得るのです。

また、時に現場を理解せず理不尽な指示を出す発注主に対して、「それはできません。代案は・・・」と反論することも必要です。無理な指示を引き受けると、困るのは幹部であり部下です。組織と部下を守るためにも、できないこととできることを、はっきりと発注主に伝えなければなりません。そのためにも、発注主の信頼が必要なのです。
「こいつが『できません』と言うからには、それだけの理由があるのだろう。ほかの人に任せてもダメだろう」と思ってもらえるかどうかです。

新設組織や××本部は、これまでにない課題を担い、また総理や大臣の関心ある重大事項を担います。そう簡単には進まないのです。進むくらいなら、組織を新設する必要はありません。
うまく進まない場合にも、発注主の理解を得て、信頼してもらうこと。これが幹部に必要なのです。それがないと、部下たちは不安になります。できない指示を跳ね返したことが分かると、部下は幹部を信頼して、ついてきてくれます。

さらに、関係者や報道機関の理解を得ることも重要です。「××事務局は仕事が進んでいない」と言われるのか、「××事務局は難しい仕事に取り組んでいる。当初は混乱したが、徐々に進みつつある」と言ってもらうかの違いです。

日本経済停滞の原因、大企業の保守化と起業の低調

8月28日の日経新聞1面は、「設備投資、ルーキー不在 企業の新陳代謝鈍く成長停滞」でした。
・・・日本企業の設備投資が低迷している。過去最高水準の利益の下でピークに届かず、米欧と比べても伸び悩む。金額のトップ10を集計すると、通信や電力、鉄道などインフラ系が目立つ。エレクトロニクス関連企業は順位を下げた。次の成長をけん引するルーキーは見当たらず、日本経済の活力の低下を印象づける・・・

経済協力開発機構の調べでは、過去30年間の企業の設備投資は、アメリカが3.7倍、イギリスが1.7倍、ドイツが1.4倍ですが、日本は1%増と横ばいです。日本企業は儲けていても、新規投資に慎重なのです。

他方で、開業率と廃業率を足し合わせた「代謝率」は、アメリカ、イギリス、ドイツが20%前後で推移しているのに対し、日本は5%程度です。新しい企業が出てこないのです(他方で廃業も少ないのですが)。
アメリカの大企業ではGAFAが有名ですが、これらも新しい企業です。老舗大企業は伸び悩むか、つぶれています。すると、日本の経済活性化に必要なのは、経団連加盟企業のような老舗大手企業の頑張りではなく、新しい企業の出現でしょう。
ここには、日本の若者が就職に際して大企業を目指す風潮、親も社会もそれを良しとする風潮も寄与していると思います。

組織運営の要諦2

組織運営の要諦1」の続きです。組織を動かす要諦の2つめは、「社風」です。

霞が関の各省は、民間企業から見ると「公務員」として、同じような「人種」に見えるでしょう。同じ公務員試験を受け、国家と国民のためという同じ目標に向かって仕事をしています。ところが、省によって社風・組織文化がかなり違うのです。新しいことに挑戦するか、しないか。上司への相談の仕方や、内部での決裁の仕方など。
これは、他省に出向すると痛感します。しかし、郷に入っては郷に従う必要があります。でないと、仕事が進みません。

難しいのは、各省からの出向者で構成された組織であり、新設組織です。
核となる省の社風がないので、それをつくらなければなりません。放っておいても、自然と社風はできあがりますが、それは困ったものとなる可能性があります。
職員たちは、よるべき社風がない、言ってみれば暗闇の中を手探りで進みます。ある案件について、積極的に進めるのか、しばらく様子を見るのか。そのような困ったときに、誰に相談したらよいのか。これが分からないのです。
すると、多くの職員は、しばらく様子を見ることになります。それでは、任務は進まないのです。他方で、意欲に燃える職員は張り切りますが、周囲から「浮いてしまう」ことがあります。

どのようにして、社風をつくるか。既存の組織なら、幹部は個室に入っていて、部下が決裁や相談に入ってくるのを待ちます。しかし新設組織や混成職員からなる組織では、それでは部下たちがどのような社風をつくっているのか、そのまえに何に困っているのかが分からないのです。幹部が自分から部下のところに出ていって様子を聞く、あるいは機会を捉えて事情や困りごとを聞く必要があります。
参考「組織の能力、6。仕事の仕方と社風を作る、2