7月22日の読売新聞夕刊「言葉のアルバム」は、大山晃弘・アイリスオーヤマ社長の「マスク供給 応える使命」でした。
・・・2020年3月。前年に中国・武漢で確認された新型コロナウイルスの感染が、日本でも急速に拡大し始めた。情報が不足する中、人々はマスクを求めて殺到し、売り切れが続出していた。
「何としても安定供給しなくては」。アイリスオーヤマ自体、生産設備のある中国からの輸入が滞り、思うような供給ができなくなっていた。中国政府から、国外へは輸出しないように要請を受けたためだ。交渉の末、日本向けも一定量は確保したが、全く足りない。
家電からペットフードまで幅広い生活用品を手がけるメーカーにとって、消費者が必要としている製品を安定的に届けるのは使命だ。
日本政府からの要請もあり、3月下旬、マスクの国内生産を決断した。それからわずか4か月後の7月、角田工場(宮城県角田市)での本格生産にこぎ着けた。工場を報道陣に公開し、「国内に安全安心なマスクを届けたい」と力を込めた。現在、マスクの国内生産は月1億5000万枚。18年7月の社長就任後、最大のピンチを乗り切った。
グループ売上高8000億円の企業の先頭に立つ。胸に刻んでいるのは、半世紀にわたって社長を務めた父・大山健太郎会長の口癖だ。
変化はチャンス、ピンチはビッグチャンス・・・
・・・2011年3月、東日本大震災が襲った。晃弘さんも角田工場で被災。自ら復旧作業の陣頭指揮にあたりながら、被害を正確に把握し、的確な指示を出す父の姿を見た。震災後、父はLED照明の増産に取り組んだ。電力不足という「変化」に対応するためだ。省エネ性能に加え、大手メーカーより安い価格が支持され、大ヒット商品となった。
「会社がピンチに陥った時、経営トップに求められるのは行動力とリーダーシップであることを痛感した」。ピンチをチャンスに変える父のかじ取りを間近で見てきた経験が、マスク生産に生かされた・・・
この欄は、かつて私も出たことがあります。