連載「公共を創る」119回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第119回「「戦後民主主義」の罪」が、発行されました。

日本は戦後、日本国憲法の施行とそれに沿った民主的改革によって、主権在民にふさわしい民主主義を手に入れました。それは基本的人権の尊重、法の下の平等、生存権の規定などとともに「この国のかたち」をつくり、経済発展と併せて、その後の国民の幸せをもたらしました。しかし、徐々にその民主主義の運用の難しさが出てきて、輝いていた「戦後民主主義」は批判の対象に転化しました。

一つは、平和主義です。それは崇高な理念と国内では理解していたのですが、有事の際には他国に守ってもらう、そして世界で経済的利益を追求しながら世界の紛争には関与しない一国平和主義でした。それが破綻し、国際社会で物笑いになったのが、1991年の湾岸戦争です。
もう一つは、世論への迎合です。さらに「結果の平等」を求めるあまり、多様性を認めず、目立つ人の足を引っ張ります。

国民識別番号の拒否も、変な話です。新型コロナウイルス感染拡大の際、各国はこの仕組みで個人の所得と口座の把握ができ、直ちに現金給付できたのに対し、日本はそれができませんでした。また、個人が特別定額給付金(1人当たり一律で10万円)をオンライン申請するときにも、マイナンバーカードが行き渡っていないので、円滑にできませんでした。
北欧では社会民主主義政党が行政手続きの効率化や平等社会の実現のために国民番号制度を進めたのに対し、日本では「進歩的で市民の立場に立っている」と主張する政党や勢力が導入に反対し続けてきたのです。

そこには、「政府は国民の敵であるという建前」からの議論があるようです。それでは「政府は私たちのものである」という意識が強くなりません。