市町村アカデミー、研修開始

今日4月20日から、市町村アカデミーでの新年度の研修が始まりました。監査委員特別セミナーです。100人を超える方が参加してくださいました。
この時期は市町村役場も新年度が始まり、職員異動もある時期なので、4月早々に職員を研修に派遣することは難しいです。
この監査委員向けの研修は、議会から選ばれたり民間有識者から選ばれた監査委員を対象とします。新たに就任された人も多く、必要な知識や最先端の課題を勉強する機会が重要なのです。とはいえ、各自治体で研修を行うことは効率的ではありません。ここに、市町村アカデミーの役割があります。
総務省の担当幹部、大学教授、弁護士、公認会計士が講師で、これ以上は考えられない方々と内容です。
私も冒頭挨拶で、期待を込めて話をしました。かつてに比べ、自治体の仕事は広く高度になりました。そして説明責任やガバナンスも重要になりました。そこに監査委員への期待と役割が大きくなっています。

市町村アカデミーでは、5月から本格的に研修が始まります。現在募集中の6月開講研修一覧が、ホームページ表紙に載っています。その多さをご覧ください。

堀田力先輩

読売新聞連載「時代の証言者」、4月12日から堀田力「鬼から福へ」が始まりました。堀田さんには、東日本大震災の際に大きな支援をいただきました。私が非営利団体との付き合いに目覚めた一つには、堀田さんがあります。

第1回は「司法30年 福祉に30年」です。
・・・「戦後最大の疑獄」といわれるロッキード事件。米国発、元首相の逮捕という異例ずくめの事件を担当したのが東京地検特捜部の検事だった堀田力さんだ。その後、福祉の世界に転身し、世間を驚かせた。巨悪を追及する「鬼」検事から、助け合いを広める「福」の伝道師となって30年。その歩みと、今の時代への思いを語る・・・

・・・司法の世界で30年、福祉の世界に飛び込んで30年。今日、88歳の誕生日を迎えました・・・
・・・1991年に法務省官房長の職を辞し、「今後はボランティアを広めます」と言ったら反響がすごくてびっくりした。「なぜお前がやるのだ」「検察に不満があるのか」などの質問やお叱り、「もっと検察を元気にしてほしかったのに」と嘆くお言葉もたくさんいただきました。いわゆる出世ルートに乗っていたので、「訳がわからん」と思われた方が多かったようです。
でも、私としてはもう限界、自分が自分らしくあるためには辞めるしかない、このまま続けていたら腐ってしまう、そんな切実な気持ちでした。
検察には感謝こそすれ、不満は全くありません。ただ、東京地検の特捜部長になれないとわかった時、僕の人生はそこで燃え尽きてしまった・・・

コメントライナー寄稿第3回

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第3回「コロナ禍をコロナ成果に」が配信されました。今回は、コロナ禍によって私たちはどのようなことを学んだか、何を教訓にすべきかについて書きました。

人や組織は、困難を乗り越えることで強くなっていきます。自然災害については、阪神・淡路大震災と東日本大震災でたくさんのことを学び、対応力を強化してきました。
今回のコロナ禍にあっても、うまく対応できたこと、まずかったこと、隠れていた問題が見えたことなどがありました。
在宅勤務やオンライン会議が一気に普及したことは、思わぬ効果です。以前から言われていたのですが、機器が整備され、遠慮なく在宅勤務ができるようになりました。一方で、病床があるのに患者が受け入れられないという欠陥も分かりました。

このような経験と問題点については、各分野で検証が始まっています。今回、私が指摘したのは、全体像、司令塔の検証です。緊急時に動員できる資源(人、物、能力)には限界があります。また、感染予防のための行動制限と社会活動の継続は、相矛盾しています。両方同時には成り立たず、またどちらか一方を取るわけにはいきません。「ちゅうちょなくすべての対策を直ちに打つようにすべての担当者に指示」してはいけないのです。東日本大震災での私の経験を踏まえて、提言しました。
次の災害に備えて、コロナ禍を「コロナ成果」にしなければなりません。

原発避難者の医療費支援段階的廃止

4月9日の朝日新聞に「復興庁、段階的廃止を発表 原発避難者の医療費支援 27年度までに」が載っていました。

・・・東京電力福島第一原発事故で避難を求められた住民の医療費支援をめぐり、復興庁は8日、2027年度までに一部を除いて段階的に廃止すると発表した。地元自治体からは「激変緩和の措置は評価したい」という声もあがった。
原発事故後、政府は避難指示などが出た福島県の13市町村の約15万人(11年8月時点)を対象に、医療・介護の保険料や窓口での支払いの全額または一部を免除してきた。支援廃止の対象は17年4月までに避難指示などが解除された11市町村。それぞれ解除から約10年後にむけて段階的に支援を打ち切る。帰還困難区域と原発がある大熊、双葉の両町では支援を継続する・・・

医療費無料化は、津波被災地では発災数年後に終了したのですが、原発避難者については、なお継続していました。避難指示が順次解除され、医療費を負担している人との不公平が問題になっていました。今回、段階的に廃止することとなったのです。関係者の理解も得られたようです。

余裕がなくなった霞が関

霞が関官僚の地位の低下が言われてから、久しくなります。しかし、嘆きの声は聞かれても、対策が打たれてはいません。官僚機構が不要、あるいは現在の状況がよいというならそれまでですが。世界と社会で次々と起こる課題の対策のために、政治家だけで対処できず、官僚の役割も重要です。
日本が経済発展を遂げたことで、かつての官僚の役割(先進国をお手本にした産業振興と公共サービス充実)は終わりました。また、政治主導が進みました。すると、過去への復帰は考えられません。官僚が機能するためには、官僚に何を期待するのか、そしてそのためには何を変えるべきなのかを議論すべきです。

私は、現在の官僚の機能不全は、大きく2つの理由があると思います。一つは、目標が不明確になっていることです。もう一つは、余裕がなくなっていることです。前者についてはしばしば書いているので、省略します。余裕がなくなっているとは、次のようなことです。

一つは、時間的な余裕です。
長年の職員数削減、他方で心の病を抱える者の増加、働き方改革。長時間残業が当たり前だったところに、これらが重なりました。
そして、業務は増えこそすれ減っていません。新しい法律がつくられ、調査統計なども増えています。企業なら儲からない業務はやめるのですが、行政は法律に基づき業務を行っているので、簡単には廃止できません。
人員や予算は総数が示され、その範囲内でやりくりします。すなわち、どこかを増やせばどこかを減らすしかないのです。しかし業務は総量を示すことはできず、総量規制が効かないのです。法律の数は一つの指標ですが、それで霞が関の業務量を表すことはできません。で、法律の数は増えこそすれ減っていません。国会対応も変わっていません。

もう一つは、政策を考える余裕です。
その原因の一つは、官邸主導が進んだことです。かつては、官邸は大きな政策の方向を示したり、外交において主導権を持っていましたが、最近ではより下位の政策もたくさん官邸から指示が出ます。かつては、官僚が新しい政策を考え、予算に盛り込んだり与党に持ち込んで、実現しました。しかし、官邸の意向をおもんぱかることが増えて、官僚が自由に政策を考えることが少なくなっているようです。
その一つの表れが、新聞の一面に、大臣が出なくなりました。各省が新しい政策を提示することがなくなったのです。新しい政策は、官邸が提示することになりました。
官邸の指示を待ち、官邸の意向に沿った政策をつくることになると、「自分で考えなくてもよいから楽だ」とはなりません。指示待ち職員には、楽な状況ですが。多くの官僚にとって、自由に政策を考えることが少なくなります。しかし、世の中の課題は数多く、官邸がすべて把握し対策を考えることができるようなものではありません。
官邸と各省の役割分担、政策の分別ができていないことが、この原因です。