1月6日の日経新聞オピニオン欄、ハビエル・ソラナ・スペインESADE世界経済・地政学センター長の「民主主義国、対立超え協調を」から。
・・・民主主義はまだ生きているが、明らかに弱体化する兆しをみせている。米人権団体フリーダムハウスによる各国の自由度を測る指数は2020年、15年連続で低下した。
バイデン米大統領は21年12月、オンライン形式による「民主主義サミット」を開いた。権威主義の台頭に対抗するため、約110カ国・地域を招き、世界的な民主主義の強化を目指した。国々が集まり、地球規模の具体的な問題に取り組むのは悪いことではないだろう。だが、国際関係の構図を、単なる民主主義国家と専制主義国家の衝突と定義すべきではない。
重要なのは、こうした集まりを問題解決につなげることだ・・
・・・民主主義と専制主義の分断は、地球規模の問題を管理する基盤となる国際機関に及ぶ可能性もある。世界貿易機関(WTO)が機能不全に陥って久しい。先進国と途上国の対立などが深刻になっているからだ。既に存在する対立に、民主主義国と非民主主義国の分断という要素が加われば、解決はさらに難しくなる。ほかの国際機関では世界保健機関(WHO)も、新型コロナウイルスの危機に立ち向かうには資金不足だった。
民主主義国は、非民主主義国とのイデオロギーの違いを強調するのではなく、自らと世界に対する責任を認識すべきだろう。最初の課題は、国内の経済格差の縮小だ。第2次大戦後、民主主義国は主に福祉国家を建設し、経済成長と社会的結束を保証することで存在意義を示した。だが社会的な一体感は最近の数十年で大きく後退し、特に08年の世界金融危機や20年からの新型コロナ危機などで弱くなったようにみえる。
社会・経済の格差は、民主主義への脅威だ。他人と隔たりのある生活をすることで、集団的な政治参加は難しくなってしまう。多くの国で民主主義が後退しているのは、経済の低迷を政治システムが反転させられるという信頼感を失った、市民の不満が一因になっている。
民主主義国の第2の課題は、「グローバル・サウス」と呼ばれる発展途上国の一層の開発に求められる社会・経済的な整備を、明確に主導することだ。途上国での民主主義的な価値観への支持を維持することにもつながる。例えば途上国の新型コロナのワクチン接種を迅速化することは、民主主義の力を示すのに有効だ・・・
・・・民主主義を強化する必要があるのは明らかだが、最も急を要する国際的な課題を解決するための他国との協力が妨げられるべきではない。価値観の異なる国々との協力が、民主主義に求められていることだ・・・