連載「公共を創る」104回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第104回「その理念的な推移」が、発行されました。新年第1号です。

連載第97回(2021年10月28日号)から、社会と政府の関係を再検討しています。
「日本社会が成熟化したのに、私たちの意識と社会の仕組みが追い付いていないことによって、社会の活力と安心が失われている。活力と安心を取り戻すためには、私たちの意識や社会の仕組みを変え、政府の役割を見直す必要がある」というのが、本稿の主張です。その議論の前提として、これまでの歴史の理念的な推移を、簡単におさらいしておきます。

極めて単純化すると、近現代史は、自立した市民像を理想とし、社会や市場に介入しないことが良しとされた自由主義の時代(19世紀)と、自由主義経済を修正し市場の失敗に政府が関与する、併せて弱者に対し社会保障を充実してきた福祉国家の時代(20世紀)から成っていると言えます。
そして、社会の担い手たちはそれぞれに、その時代の社会の問題に対し対策を積み重ね、理論をつくり、さらに対策を進めてきたのです。

市場経済への介入、社会への介入、個人・家庭への介入の三つに分けて説明します。今回は、市場経済への介入です。財政学の教科書に出てくる3機能のほかに、「市場経済が機能する基盤整備」「市場経済の欠陥是正」「国民生活の向上」などもあります。