新しい試みに反対する人、後押しする人、実現する人4

新しい試みに反対する人、後押しする人、実現する人3」の続きです。
不思議なのは、明治の官僚、終戦直後から経済発展期の官僚は、進取の気風を持っていたことです。先進国に遅れた日本が追いつくために、敗戦で荒廃した日本を立て直すために、新しいことに次々と挑戦しました。それが、いつの間にか現状維持派に変質したのです。
たぶん、先進国に追いついたと思ったときから、制度を輸入し完成させたと思ったときから、この変質が進んだのだと思います。この問題を「制度を所管するのか、問題を所管するのか。」で解説したことがあります。

官僚志望者が減っていること、東大卒業生の優秀な人たちが官僚を選ばなくなっているとのことです。それは官庁にとっては困ったことですが、日本社会にとって喜ばしいことかもしれません。
現状維持だけなら、優秀な職員は不要です。新しいことに挑戦したい若者は、それが活かせる職場に行くべきです。他方で、優秀な職員を採用したいなら、官庁も彼らが能力を発揮できる職場に変える必要があります。

さて、どのようにしたら、改革派(変えてみよう派)を主流にすることができるか。
一つには、政治主導がその役割を果たすことでしょう。改革の方向を示し、官僚に案を考えさせ、一緒にそれを実現させる子とっです。
もう一つは、役所の上司たちが、改革の気風への転換を進めることでしょう。「このままでは、国民に評価されない」という危機意識を持つことです。改革案の問題点を指摘するのは必要ですが、そこで終わるのではなく、どうしたら改革案が実現するか、一緒になって考えてください。

マスメディアには、「日本は一流国でなくなった。官僚や公務員も改革を進めるべきだ」と、改革をあおってほしいです。
そして、少々の失敗にも、温かい目で見守ってください。新しい挑戦で問題が出ても、それを批判するのではなく、「その問題点を解決して、改革を実現せよ」と応援してください。最初から完璧な改革案はありません。それを求めていると、先送りになって、改革は進みません。
戦後日本の革新勢力と呼ばれた人や言論人は、「憲法を守れ」から始まって、現状維持派が多かったようです。このねじれも、現状維持を支援しています。そこから脱皮してほしいです。

もちろん、何でも改革すればよいという訳ではありません。すると、霞が関にとっても、日本社会にとっても、何を誰がどのように変えていくか。それを提示し議論する必要があるのでしょう。
しかし何にもまして、役所の前例踏襲の気風と先送りする体質は変えないと、官僚機構は社会の変化に遅れ、国民からの評価はさらに下がるでしょう。
この項、ひとまず終わり。