連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第95回「「政府が家庭に入る」─公私二元論の変容」が、発行されました。
今号の前半は、行政が公私二元論に縛られていたことを、災害対策行政を例に説明します。
国や自治体の役割が公共施設復旧に絞られ、個人や企業の施設復旧、生活や営業の再開はそれぞれの責任とされたのです。また、避難所や仮設住宅での生活支援の水準が「最低限」のままで、通常の生活水準に達していないことも挙げることができます。
後半は、弱者支援の過程で、政府が家庭に入るようになったことを説明します。
「政府は家庭に入らない」という近代憲法の原則は、いくつも変更を受けました。生活保護、介護保険などです。個人の資産や能力を調べ、住まいの中に入ってきます。これらは、本人の同意の下に行われます。他方で、引きこもり支援はどう考え、どのようにしたらよいのでしょうか、家族は助けを求めていますが、本人は求めていないことが多いでしょう。
児童虐待や家庭内暴力の場合は、本人たちが介入を求めていなくても、被害者を救うために家庭に入ることが必要です。
社会的に自立できない人を支援する場合も、問題があります。「嫌だ」と言っている人に対し、「首に縄をつけて」社会に引き出すことはできません。生きていく力をつけることも、本人の意欲がないと、政府などが強制することはできません。