経済成長外国比較2

経済成長の軌跡2」から続く。「経済成長の軌跡」(2017年)を更新しました。
(一人当たりGDPの軌跡と諸外国比較)
次は、日本、アメリカ、フランス、韓国、中国の4か国の一人当たりGDPの軌跡です。1955年にアメリカの10分の1だったのが、1980年代後半に追いつき、そして追い抜きました。アメリカもその間に10倍になったのですが、日本は100倍になりました。
この図は、縦軸が対数目盛になっています。一つ上は2倍でなく10倍です。等間隔目盛にすると、とんでもない急カーブになります(縦に100枚つないだ状態を想像してください)。

そして1990年代後半から日本は横ばいになり、アメリカに再逆転されます。他方で、韓国や中国が、日本から約20年、40年遅れて出発し、日本と同じような軌跡を描いています。これを見ると、かつてなぜ日本が一人勝ちできたのか、そして近年そうでなくなったかが分かります。日本が一人勝ちできたのは、先進国を手本に追いかけたこととともに、後ろから追いかけてくる国がいなかったのです。
「経済成長の軌跡2」に掲げた、日本の経済成長の数字だけでは見えないものが見えてきます。

これらの図表は、昔から使っていたものです。なかなかの優れものです。日本の社会と行政を規定する経済要因を、2つの図表で示すことができます。今回も、小黒桂君の助けを借りました。
さて問題は、アメリカに追いついた後です。日本が横ばいなのに対し、アメリカは成長を続け、逆転した後に差が広がりつつあります。それについては「経済力の日米比推移」に続く。

インターネット上に個人が持つ情報「デジタル遺品」

9月19日の朝日新聞「Reライフ」は、「大事なデータ、どう残す デジタル遺品、注意点と対策」でした。
・・・家族写真、友人の連絡先、インターネットバンキングの口座……。スマートフォンやパソコンには様々なデータが保管されています。もし突然、あなたが亡くなったら、そのなかで大事なものを家族に残せますか?

「経営者だった父が急死した。税理士とのやりとりで、家族が知らない会社が登記されていたと分かり、父に隠し資産があるのではと疑念を抱いた。遺品のパソコンのパスワードが分からないので解除してほしい」
データの復元やパスワード解除のサービスを展開する「デジタルデータソリューション」(東京都港区)に寄せられた相談の一例だ。このケースでは依頼者が遺族だと確認したうえで対応し、パスワードの解除やデータ復旧に成功。パソコンからは、会社登記に関する書類やネット証券、ネット銀行の口座データが見つかったという・・・

・・・石塚さんが想定する主なトラブルは三つ。一つ目は、故人が利用していたネットバンキングやネット証券の口座情報、暗号資産などの金融資産が遺族に知られないままとなり、放置されてしまうケースだ。「金融機関からの通知も紙ではなくメールなどで来るため、遺族が見落としやすい」という。
二つ目は故人が有料サイトや課金制アプリを使用している場合だ。遺族が契約に気づかなければ料金が発生し続け、口座から引き落とされることになる。年会費などだと気づくのが遅くなるケースもあるというが、金融機関がどこか分かれば、口座を凍結して引き落としを止められる。
三つ目は、写真や知人の連絡先、SNSなど、故人のデータにまつわるものだ。データを消去せずに機器を処分すると悪質な業者に個人情報が流出する可能性がある。また、SNSのアカウントを放置すると、第三者に乗っ取られて悪用されるおそれがある・・・

私も、この2番目と3番目が問題になります。特に、このホームページですね。サイトを管理してもらっている社長と、息子にでも頼んでおくのでしょうか。

ところで「Reライフ」って、どういう意味でしょうね。新聞社がこのような一般人が理解できない言葉を使うのは困ったものです。

経済成長の軌跡2

経済成長の軌跡」(2017年)を更新しました。今回は、3ページに分けて載せます。

(日本の経済成長と税収)
戦後日本の社会・政治・行政を規定した要素の一つが、経済成長であり、その上がりである税収です。
次の4期に分けてあります。すなわち、「高度経済成長期」「安定成長期」「バブル崩壊後(失われた20年)」、そして「復活を遂げつつある現在」です。
1955(昭和30)年は、戦後復興が終わり、高度経済成長が始まった年。1973(昭和48)年は、第1次石油危機がおき、高度成長が終わった年。1991(平成3)年は、バブルがはじけた年です。第2期は「安定成長期」と名付けましたが、この間には石油危機による成長低下とバブル期が含まれています。2012年が区切りになるかどうか。それは、しばらく見てみないと分かりません。ひとまずの仮置きです。

高度経済成長が、いかにすごかったかがわかります。年率15%の成長は、3年で1.5倍、5年で2倍以上になるという早さです。池田総理が「所得倍増論」を唱えました。それは「10年で所得を倍にする」というものでした。名目値では、5年で倍になりました(もちろん物価上昇があったので、実質価値では違います)。
税収も同じように伸びていますが、実はこの間に毎年のように減税をしました。累進課税なので、減税をしなければ、もっと激しく伸びたと予想されます。石油ショック後も結構な成長を続けたこと。バブル後はそれが止まったことも。
そして、参考(65歳以上人口)に示したように、高度経済成長期は日本が「若く」、社会保障支出も少なくてすみました。当時ヨーロッパ各国は、すでに10%を超えていました。現在ではヨーロッパ各国を追い抜いて、世界一の高齢国になっています。人口の増加率も、もう一つの要因でしょう。2004年をピークに減少し始めました。

この表は、過去を懐かしんだり、批判をすることが目的ではありません。未来に向けて、どのようにしたら、成長を取り戻すことができるかが課題です。
経済成長外国比較2」へ続く。

相手に聞いてもらう話し方

9月16日の日経新聞「私のリーダー論」は、石坂産業・石坂典子社長の「「恥をかく」ことで人は育つ」でした。前回9月9日の続きです。

父から事業を引き継ぎますが、最初の10年は代表権のない社長です。やり方を変えるためには、代表権のある会長の父に、すべて了解を取る必要があります。ところが父は、長い話を聞くのは苦手、仕事を中断されるのも嫌いです。まあ、これはどこの組織の上司にも共通することですが。

石坂さんは、毎朝短時間、話を聞く時間をつくってもらいます。話を聞いてもらうためには、提案の優先順位を考え、厳選して簡潔に話し、了解を取り付ける訓練をします。
このあたりは、拙著『明るい公務員講座』第3章が参考になります。私も、上司に説明を聞いてもらう訓練と、部下の話を聞く訓練をしてきましたから。

ほかにも、参考になる経験が書かれています。原文をお読みください。

在宅勤務の負の影響2

在宅勤務の負の影響」、今回は組織に与える負の影響です。
「在宅勤務でも以前と同様に成果が上がっている、経費削減になっている」と思っていませんか。それは、短期的に正しくても、長期的には間違っています。在宅勤務では、職員育成にも問題が出て、組織としての力が低下します。

前回述べたように、新入社員や異動してきた社員の不安があります。そしてその人たちは、職場での十分な訓練を受けることができません。与えられた、そして自宅でできる仕事をしているだけでは、職場の技能は向上しません。非正規社員が仕事の技能を身につけることができなかったように、彼らも職場での仕事の訓練を受けていないのです。

在宅勤務で仕事ができ、職場の能力が向上するなら、拙著「明るい公務員講座」3部作を含め、本屋に並んでいる職業人向けの啓発や技能向上の書籍の多くは不要になります。そうでしょうか。

職員の評価も、どうするのでしょう。オンラインでの成果物を評価するだけでは、社員の能力を評価できません。学校の試験のように、紙で評価できるものではありません。
すると、以前から知っている気心の知れた部下を高く評価する傾向になるでしょう。新人には、可も不可もつけることが難しく、5段階の3ばかりをつける恐れがあります。

一部の在宅勤務に向いている仕事を除き、多くの職場で、在宅勤務はコロナ対策の緊急措置と考えるべきです