瀬地山角教授の家事男子

日経新聞夕刊「時短家事」という欄があり、瀬地山角教授が「カジダンへの道」を連載しておられます。家事男子と言うことでしょうね。毎月月末に載るようです。

子育てで仕事セーブした40代、後悔ない」(7月27日)から。
・・・夕食の支度をし、帰宅したパートナーと家事を分担し、食事をして子供をお風呂に入れ、洗濯物を乾燥機に入れ、一息つけるのは夜10時。そこから仕事をすればいいのだが、エネルギーが残っていない。これをほぼ一人でやっている世のお母さんは本当にすごいと感心した。
子供が小さいときは仕事の時間が取れず、論文や著書などの研究実績が残せなかった。仕事をセーブして子育てに関わることは、自ら選んだ道のはずなのに、研究が進まないプレッシャーでうつ病を発症した。子供の手が離れ始めた2、3年前から本を書くなど、恐る恐る仕事のギアを上げている。
仕事の面では40代は失われた10年だった。それでも、「歩いた」「初めて25メートル泳げた」など、できることが増えていく子供の成長を身近で感じられた日々は宝物だ・・・
・・・ノーベル賞を2つくれてやると言われても、盆暮れ正月以外はずっと研究室にいた、なんて生活は選ばなかっただろう・・・

「家事はこうすべき」を疑う」(8月31日)は、表題通りの家事の「手抜き」です。
手抜きと称されるやり方について、「批判するなら、あんたもやってみろ」という精神があふれています。
子育てや家事をせず、孫の世話くらいで音を上げている「昭和の仕事人間」は、今頃になってその意味がわかります。反省。
でも「家事男子」という言葉が必要な社会は、まだ男女共同参画ではありませんね。過渡期と言うことでしょう。

組織を作り動かす2

組織を作り動かす」の続きです。

私は、過去に新しい組織を作って、混成部隊で仕事をする経験がありました。省庁改革本部再チャレンジ室です。また、ほかの組織の失敗事例を見てきました。
取り組むべき課題を整理し、職員を集めることも重要なのですが、その組織を動かすことはもっと難しいです。

各分野に精通した職員を、それぞれの省庁から呼び集めます。方向性さえ統一すれば、それぞれの分野については彼らに任せればよいのです。ところが、彼らの間での、仕事の進め方を共通にすることが難しいのです。
職員たちに何をしなければならないかを理解させ、どのように仕事を進めるかを考えてもらい、上司に判断を仰ぐものと自分で判断するものとの線引きを作り、そして上司の指示を待たずに課題に取り組むようにしなければなりません。
ところが、各省ではそれが文書決裁規定に定められ、慣習ができています。そして各省において、この慣習は異なるのです。「これは誰に相談するか」「どのように起案して決裁を回すか」などです。それを一からつくる必要があるのです。
知らない職員同士が、異なった社風で仕事をすると、放っておくと、歯車がかみ合いません。これを軌道に乗せる、みんなで助け合い、同じ目標に進む、そして誰に相談すればよいかをわかるようにすることが、重要なのです。

大震災で支援本部の運営が比較的うまく行ったのには、それ以外の条件もあります。
まず、被災地で困っている大勢の被災者がいて対応を急ぐ必要があったこと、少々の間違いや混乱があっても対策を急いだことです。前例はなく、根回しをしている時間がありません。
また対応を急ぐために、決裁も簡略化しました。職員から参事官に相談し、直ちに統括官に上げて判断する。難しいものは毎日の大臣たちを入れた幹部会議で決定するという、まことに簡素な意思決定過程でした。
記録には残しましたが、このような知恵と経験は、どのように後輩たちに引き継ぐのがよいのでしょうか。

ニクソン・ショック50年、国民生活改善

8月26日の日経新聞経済教室「ニクソン・ショック50年」は、岡崎哲二・東京大学教授の「国民生活改善への転機に」でした。

・・・ニクソン・ショックは国際通貨体制の転換点だっただけでなく、日本にとっても経済政策、企業経営、日本経済の国際的地位や国民生活の水準など多くの点で画期となった。

第1に経済政策については、変動相場制への移行は政策手段選択の自由度を拡大する意味を持った。
変動相場制移行以前の日本では、金融政策は基本的に国際収支の調整という目的に割り当てられていた。すなわち日銀は政府と調整のうえ、景気が過熱し経常収支が赤字になれば金融を引き締め、景気後退により経常収支が黒字になれば金融を緩和するという政策運営を続けていた。
ニクソン・ショック直前の70年10月からショック後の71年12月にかけて、日銀は公定歩合を5回引き下げて金融を緩和した。これは70年秋以降の景気後退とニクソン・ショックに対応するための措置だった。さらに景気が好転していた72年6月、円切り上げ後も経常収支黒字が解消しないことを受け、再度の円切り上げを避ける目的で、もう一段の金融緩和が実施された。
そしてこの一連の金融緩和が、マネーストック(通貨供給量)の増加を介して73~74年の大規模なインフレ、いわゆる「狂乱物価」の原因となった。景気が上向く中で追加的金融緩和が実施されたのは以下のような事情による。固定相場制の下で為替レートによる国際収支調整が機能しなかったので、金融政策を経常収支黒字削減のために使用せざるを得ず、インフレ抑制のための金融引き締めを機動的にできなかったのだ。

変動相場制への移行はこの制約を取り除いた。こうした政策手段選択の自由度の拡大は、後に起きる第2次石油危機への対応に生かされた。イラン革命を背景に、79年には原油価格が前年の2.7倍に高騰した。日本経済に対し、購買力の産油国への移転を通じて不況圧力を加えるとともに、コスト面からインフレ要因となり、さらに経常収支赤字をもたらした。
この状況下で日銀は79年4月から80年3月にかけて5回にわたり公定歩合を引き上げた。変動相場制の下で、国際収支と景気の調整は為替レートの変動と財政政策に委ねられ、金融政策は主にインフレ抑制のために割り当てられた。そしてこの機動的な金融引き締めが、第2次石油危機時の日本のインフレ率を小幅に抑えることに貢献した・・・
この項続く

朝日新聞夕刊連載「オールド・ボーイズ・クラブ」

8月30日の朝日新聞夕刊から「オールド・ボーイズ・クラブ」の連載が始まっています。オールド・ボーイズ・クラブ(OBC)とは、オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)とも言う、多数派の男性が築いた暗黙のルールや約束に満ちた、仲間うちの閉じた世界のことだそうです。

8月31日の「行動10か条 働き方も変えた」から。
・・・男性同士の閉じた世界を指すオールド・ボーイズ・クラブ(OBC)。変革や挑戦の障害とされるが、女性はどう感じているのか。
「部下よりも常に上司の方を向いて仕事をしている」「接待やゴルフに付き合うことが上司に気に入られる条件だと思っている」「昼食に一緒に行っても、食べるのが早すぎる。せっかくの機会なのだから、ゆっくりいろいろ話したい」「同行で一緒に歩いていると速すぎてついて行けない。こちらが小走りなのに気づかない」
女性活躍やダイバーシティー(多様性)の推進に取り組むNPO法人「ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク」(J―Win)に参加する男性メンバーが、OBCについて女性にアンケートをとった時の回答だ。J―WinはOBCをオールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)と呼ぶ。

「被害届のようだな」「効率的な業務推進には必要なことだ」「良かれと思ってやったのに」。東レ経営研究所ダイバーシティ&推進部長の宮原淳二さん(56)らメンバーは当初、回答にショックを受け、正面から受け止められなかった。
その後議論を重ねてOBNに向き合い、男性が「変えられる行動10か条」を作成した・・・

その後の変化については、原文をお読みください。オールド・ボーイズ・クラブの一員(?)として、反省しながら読んでいます。

暮らしやすいコミュニティとは

Web日本評論、竹田伸也・鳥取大学教授の「みんなのストレス波乗り術」第12回・最終回「できる範囲で力を届ける」から。

・・・世の中から余裕がなくなり、なおかつ自己責任という論理が幅を利かすと、コミュニティにある変化が起こります。それは、「率先して責任を背負おうとする人が少なくなる」ということです。
あなたに思い返していただきたい日常風景があります。
あなたが今いるコミュニティ。職場でも地域でも家庭でも学校でもなんでもかまいません。そのコミュニティには、率先して責任を背負おうとする人が、ご自分を含めてどの程度いますか? コミュニティにそういう人がどの程度いるかを、次の3つの視点で評価してみてください。

1点目は、「役割の決まっていない仕事を自発的に担う人が一定数いるかどうか」です。コミュニティの務めには「これは誰々さんの役割」と決まっていないようなものがたくさんありますね。たとえば、切れかかった電球を交換するとか、床に落ちているゴミを拾うとか。そうした、誰の役割か決まっていない務めは、そのコミュニティにいる人々の自発的な取り組みで処理されることがほとんどです。なので、率先して責任を背負おうとする人が少なくなると、そのコミュニティは見た目から荒れ始めます。

2点目は、「配慮の必要な人に対して手を差し伸べる人が一定数いるかどうか」です。なんらかの障がいを抱えているせいで、障がいを持たない人と比べて特定の務めに十全に力を発揮できない人がいます。そうした人がいた場合、その人の力を補って動こうとする人がどの程度いるかが、これにあたります。あるいは、特定の人――この場合の特定の人とは、責任感の強い人です――に仕事がどんどんたまっているのに、周りの人はその人から仕事をもらったり、一緒に抱えたりしようとしない。これなんかも、配慮が必要な人に対して手を差し伸べない状態といえます。

3点目は、「会議などみんなで意思決定する場面で建設的な発言をする人が一定数いるかどうか」です。コミュニティをどのような場として成長させるかは、そのコミュニティに属する構成員みんなの責任です。にもかかわらず、会議ではほとんど発言しない。あるいは、発言しても大きな声で誰かやなにかの批判ばかりして、建設的な意見を出さない。一方で、陰ではあれこれと悪口が飛び交っている。こうした状態も、率先して責任を背負おうとしない人が多いコミュニティといえます・・・