官民の共同規制

7月26日の日経新聞、「キッチンカー、ご当地規制の怪 国より保健所のさじ加減」から。
・・・コロナ下でも初期投資を抑えつつ創意工夫で稼げる飲食ビジネスとして、移動販売車「キッチンカー」の開業が増えている。その数は1都3県だけで1万3000台超。ところが、地域によっては車内設備やメニューをめぐって不合理な「ご当地規制」に直面する。衛生ルールは地方自治体や保健所ごとにまだら模様。地方分権のゆがみが浮かび上がる。
東京都内のタワーマンション近くなどで2020年秋から営業するキッチンカー「琉球キッチンこだま」。沖縄料理店を営む児玉幸太さんが「本当は出来たてのアツアツを提供したいのですが……」と嘆くのが、店舗で常連客らに人気の「ポークたまごおにぎり」だ。保健所の指導に従い、出発前に店で握ったものを売っている。
アルコール消毒が効きにくいノロウイルス対策で保健所は流水による手洗いを重視する。おにぎりは揚げ物などに比べてリスクが高いとみなされ、給水タンクの容量が100リットルしかない児玉さんは車内調理が認められなかった。「調理用手袋をしてラップで握るのに、そんなに大量の水が要るのだろうか」。コロナの苦境下で釈然としない思いが募る。

キッチンカーは食品衛生法に基づいて自治体がそれぞれ条例などで規制しており、広域営業の妨げになってきた。そこで厚生労働省は今年6月の改正同法施行に合わせた省令で全国の自治体が共通の目安とすべき「参酌基準」を示し、留意点を通知した。キッチンカーを給水タンクと廃水タンクの容量によって約40リットル、約80リットル、約200リットルの3種に分け、40リットルなら「簡易な調理」「1品目のみ」などと制限するものだ。
タンク容量で機械的に衛生レベルを推し量っており、「衛生状態が悪かった昭和時代の発想を引きずっている」(都内のキッチンカー事業者)との批判が多い。しかも文言の定義があいまい。ほとんどの自治体が基準に沿って条例を改めたが、地方行政の末端には運用のばらつきが残ったままだ・・・

・・・多種多様な営業スタイルが想定されるビジネスの法規制は、不合理な制限や抜け穴が発生しやすい。ルールづくりの新しい枠組みとして広がりつつあるのが官民の「共同規制」だ。所管省庁のガイドラインに沿って業界団体が実務ルールを策定するのが一例だ。事業環境が目まぐるしく変わるデジタル分野などで有効とされる。
共同規制には民の機動力を生かしつつ官のお墨付きを得られるメリットがあり、欧州などで重視されている。日本でもシェアリングエコノミー協会(東京・千代田)が国と協議した自主ルールで適合事業者の認証を始めた例がある・・・
・・・国の法律から自治体の条例まで上意下達の規制だけでは限界がある。一橋大の生貝直人准教授(情報法・政策)は「規制にも多様な選択肢が大切だ」と話す。利害関係者が歩み寄り、ルールを磨き続ける流れをつくりたい・・・

問題は、地方分権のゆがみではないと思いますが。