連載「公共を創る」を書いていて、行政の役割として、これまでの前衛の役割だけでなく、後衛の役割が重要になっていることを指摘しています。
かつて「前衛の思想、後衛の思想」を書いたことがあります。
・・行政に関して言えば、明治以来西欧に追いつくために、インフラや公共サービスを整備することに重点を置いてきました。遅れた社会を、行政が先頭に立って発展させるのです。これも前衛の思想でした。他方で、その変化についていけない人を支援することも、行政の役割です。それは、後衛の思想です・・・
先進国に追いつく際には、官僚は前衛の役割でした。これからも、社会の変化に対応して、あるいは社会を変えるべく、前衛の役割は重要です。他方で、理想を追い求めるだけでなく、取り残された人たちを救うという後衛の役割も重要になりました。「坂の上の雲」とともに「坂の下の影」も見る必要があります。
前衛は先駆けであり、後衛はしんがりです。この思考は、組織の管理論にも当てはまります。鷲田清一さんが『しんがりの思想 反リーダーシップ論』(2015年、角川新書)で指摘されていて、参考になりました。
与えられた目的に向かって、先頭に立って職員を率いていく。これは、先駆けの役割です。他方で、組織内には、それについて来られない職員も出てきます。この職員たちを脱落させないこと。その気配りも、必要です。それが、しんがりの役割です。
私の課長経験では、課長補佐や係長が、このしんがりの役割を担ってくれたことが多かったです。私が若く、経験不足だったこともあります。経験豊富な(私より年上の)部下が、調子の悪い若手職員の面倒を見てくれることがあったのです。その職員からの報告で、初めて困っている職員がいることを知ったこともありました。