頭は類推する。カタカナ語批判。2

頭は類推する。カタカナ語批判。1」の続きです。カタカナ語(カタカナ英語)がなぜわかりにくいか、覚えにくいのか。

声を聞いて、ひとまず「これだろう」という単語を推測します。しかし、それが正しい単語かどうかは、単語単体ではわかりません。ワードプロセッサで入力する際を思い浮かべてください。変な単語に変換される場合がありますよね。文脈にふさわしい単語を選ばなければならないのです。
音声入力ソフト(マイクに向かって話すと、それをパソコンが文字に変換する仕組み)を使うと、これがよくわかります。マイクに向かって、音や単語を話しても、音声入力ソフトは変換してくれません。一文をしゃべると、ようやく変換してくれます。

「し」と聞いても、市、死、師、四・・どれかは、文脈の中でしかわかりません。帰国子女だった方の笑い話を、聞いたことがあります。アメリカから帰ってきて、卒業式で「仰げば尊し」の「わがしのおん」という歌詞を聞いて、「さすが日本だ、お菓子にもお礼を言うのだ」と思ったそうです。子どもだったので、「我が師」を「和菓子」と理解したのです。
逆にいうと、文脈の中でしか、「正解の単語」は出てきません。近年のワープロソフトは精度が高まり、ひらがなで入力すると、前後の文脈からよりふさわしい単語を選んでくれますが。それでも、前後の文脈がわからないと、変換できないのです。

私たちはふだん、日本語という漢字とひらがなの「海」に浮かびながら生活しています。会話も思考も、日本語の単語を元に行っています。子どもの頃から、一つひとつ単語を覚え、物事を理解します。そこに英単語が入ってきても、類推ができないのです。
例えば「デファクトスタンダード」と聞いても、「de facto standard」を知っていないと、「事実上の標準」という意味はわかりません。de factoはラテン語で「事実上」という意味ですが、日本語では使わないので、類推できないのです。私もついつい使うのですが、NPOといった言葉も類推できません。「非営利団体」なら、なんとなくわかります。

SDGsは、まったく類推できません。SBGはソフトバンクグループで、SGは佐川急便ですが、これもわかる人は少ないでしょう。「持続可能な開発目標」なら、SDGsの正確な意味を知らなくても、類推はできます。また、単語を忘れたときも、連想で探すことはできます。
MDGsという言葉を覚えていますか。ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals)です。2000年に国連が定めました。SDGsの先代のようなものです。ほとんどの人が忘れているでしょう。たぶん、SDGsも数年後には、同じ運命をたどるのではないでしょうか。この項続く