年別アーカイブ:2020年

李登輝元総統

2020年8月3日   岡本全勝

台湾の李登輝元総統が7月30日に、亡くなりました。
中国文化に詳しい肝冷斎は、30日の記事(終わりの方)を李登煇さんに捧げ、「小さな島国とはいえ、ゴルバチョフと周恩来と池田勇人を一人でやったような人ではないかと思います」と評価しています。

日本統治下や、大陸から来た国民党の支配下では耐えて頭角を現し、総統となっても弱い権力基盤や支持から、徐々に権力を固めました。
大陸中国という大きな敵から牽制されながら、民主化と自由化、選挙による総統選出、平和的政権交代、そして経済成長を成し遂げました。暴動や内乱なしにです。それが起きたら、中国から介入されたでしょう。
世界の歴史に名を残す政治家の一人だと思います。
ご本人の著作も多いですが、いずれ日本でも、評伝が出版されるでしょう。

国からの多数の通知

2020年8月3日   岡本全勝

読売新聞連載「検証コロナ 次への備え」7月29日の「PCR 乱れた厚労省方針」に、次のような文章があります。
・・・厚労省は、検査を巡って新たな仕組みを作ったり、要件を緩和したりと次々にルールを変更し、自治体に通知した。今月21日までに発出した新型コロナ関係の通知は、参考資料の別添も含めて659件に上る。文書は膨大な量になり、過重な業務に追われる自治体からは「目を通す暇もない」との悲鳴が上がった・・・

これまでにない事態、専門家の知見が必要、そして対策に当たるのは自治体です。どうしても、国からの通知が多くなることは避けられません。
しかし、受け取る自治体にとっては、職員が少ない上に、住民対応をしながら、これらの通知を理解しなければなりません。読まれずに、放置される恐れもあります。

もっとも今回は、主に厚労省や内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室が担っているので、発信元は限られているでしょう。これが災害などだと、多くの府省からさまざまな通知が来て、受け取る部局もさまざまなので、さらに混乱します。
送る側は、それぞれに担当分野について重要な通知を送っているのですが、受け取る側がどうなっているかは想像していないでしょうね。

NHK「 証言記録東日本大震災」

2020年8月2日   岡本全勝

NHK総合テレビ、8月2日午前10時5分から「明日へつなげよう 証言記録東日本大震災」は「経営危機の瀬戸際を生き抜け~水産加工起死回生の策」でした。
・・・東北沿岸の基幹産業である水産加工業。国は震災後、工場や設備復旧のために前例のない企業への資金援助に踏みきった。しかし近年、資金繰りが行き詰まり倒産する会社が続出。補助金の運用面などでの問題が明らかになった。一方、補助金だけに頼らず、地域の企業が連携して商品開発や販路を開拓、徐々に効果を見せているプロジェクトもある。ポストコロナの時代にも通じる経営の知恵を石巻市の水産加工業者の復興から探る・・・

取り上げられたのは、グループ補助金と結の場です。
公共施設と住宅の再建だけでは、地域と住民の暮らしの復興はできない。産業とつながりの再建が必要だと考え、東日本大震災では、それまでにない支援策をとりました。中小企業グループ補助金もそうです。これまで、企業への災害復旧補助金はなかったのです。
ところが、施設設備を整えても、経営が回復しない事例もでてきました。事業再開までの間に、都会の売り場の棚を他の産地に奪われていたのです。これは、補助金では解決できない問題です。補助金を出せば、その期間は売れるでしょうが、補助金がなくなればダメになります。そこで、大企業から人とノウハウの支援をもらうことにしました。
それが、結の場です。この仕組みを考えてくれたのが、民間から復興庁に来てくれた職員たちです。

番組では、この二つを紹介するとともに、グループ補助金の限界・欠点も取り上げていました。初めてのことでもあり、現場の要望にすべて応えることができていなかったのです。いくつか修正しましたが。復旧を急ごうとすることの限界があります。反省して、次に進みましょう。
もう一つの問題は、企業の実態や現場を行政は十分に知らないのです。かつてに比べ、公務員が現場を見ること、意見交換をする機会が減っています。災害復旧だけでなく、多くの政策分野で問題になると思います。
この二つの政策が、現場でどのように受け入れられたかを丁寧に取材した、良い番組でした。役所は制度をつくるとその広報はするのですが、その結果についての評価は下手です。この番組は、復興庁にとっても、良い記録になります。

番組に登場した山本啓一朗君(NEC)から、見るようにと言われていたのですが。すみません、事前にお知らするのを怠っていました。2週間は、無料でオンデマンドで見ることができるようです。

連載「公共を創る」50回達成

2020年8月1日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」が50回になりました。2019年4月から始めて、1年3か月です。

これまで、次のような内容を書いてきました。
まず第1部では、東日本大震災で体験し考えた、政府の役割とその変化を述べました。そして、災害復興だけでなく、社会の変化によって行政の哲学が変わったことを説明しました。
第2章では、その行政の哲学の変化から社会全体を見直すと、これまでの行政の対象が狭かったことを指摘しました
第3章では、日本社会が大きな転換期にあることを説明しています。経済成長を達成し、近代を完成させた時に、これまでとは違った課題が生まれてきたこと、これまでの行政手法や私たちの考え方が機能不全を起こしていることを説明しています。

第1章 大震災の復興で考えたこと
1 想定外が起きたー政府の役割を考える 第3回~第8回
2 町を再建するーまちとは何か 第9回~第11回
3 哲学が変わったー成長から成熟へ 第12回~第23回
第2章 暮らしを支える社会の要素
1 公私二元論から官共業三元論へ 第24回~第28回
2 社会的共通資本 第29回~第38回
第3章 転換期にある社会
1 日本は大転換期 第39回~

全体構成」では、これでほぼ半分を過ぎました。もっと早く進む予定だったのですが、書き始めると分量がどんどん膨らみます。歴史になったことや、その時々の問題や事件は書物になっているのですが、近過去そして私の視点のような変化は書かれたものが少ないです。
執筆に当たっては、私の視角から筋書きを書き、そこに事実を当てはめていきます。事実の確認に手間がかかります。簡単にはインターネットで調べ、そこからより詳しく調べることをしています。数表作成などは、知人たちの協力を得ています。ありがたいことです。そして、右筆たちに手を入れてもらいます。私の考え違いを正され、読みにくい文章がわかりやすくなります。さらに、編集長が1回ごとに切り分け、校閲さんが文章を正しくしてくださいます。

ちなみに、同じく『地方行政』に連載した「明るい公務員講座」は、初級編が35回、中級編が42回でした。