コロナ対策、条例による対策

12月13日の朝日新聞に「コロナ対応、条例先行 法整備進まず、私権制限には苦心 施設使用制限・マスク着用…33自治体制定」が載っていました。

・・・新型コロナウイルスに対応する国の法整備が足踏みする中、具体的な対策や差別防止などを条例で定める自治体が増えている。12日までに33自治体が制定し、少なくとも9自治体で条例案を審議中か、提出を検討している。ただ、休業要請など法律ではあいまいな「私権制限」の規定は手探りで、国会での議論を求める声が広がっている。
一般財団法人の地方自治研究機構によると、3月の名古屋市を皮切りに、9都県24市町村が条例を制定した。3県6市町が審議・検討中と取材に答えた。
長野県は、県外からの観光客が増えた場合に備え、条例で「人の往来を誘発させる施設」に県が使用制限や対策の検討を求められると定めた。神奈川県大和市や長野県宮田村は住民にマスクの着用を求めた。感染者への差別防止などの理念条例も多い・・・

・・・「自治体独自のやり方で条例を作れば、社会防衛ができるのではないか」
腰が重い国に業を煮やし、鳥取県の平井伸治知事は8月、全国で初めてクラスター(感染者集団)を封じるための条例を作った。クラスターが発生した施設の所有者らに、使用停止と調査への協力を義務づけた。罰則までは踏み込まなかったが、使用停止を「勧告」し、施設やイベントの名称を「公表」できる規定を盛り込んだ。クラスター発生施設の公表については特措法や感染症法に明確な根拠規定がなかった。
ただ、施設名の公表など私権の制限につながる規定は抑制的にし、公表は5人以上のクラスターが発生した施設に絞って、全ての従業員や利用者に連絡が取れた場合は対象外とした・・・

参考、地方自治研究機構の「条例の動き」のページ

夫婦での会議

12月11日の日経新聞夕刊に「夫婦こそ定期的に「会議」 共働き増え納得の家庭運営」が載っていました。楽しく仕事をするためにも、人間を磨くにも、家庭生活が重要だということは、拙著「明るい公務員講座」に、私の経験を元に強調しました。

・・・夫婦やカップルが互いの関係をよりよくしようと、仕事やお金、子育てなどについて「会議する」ケースが増えている。共働きが増えるなど親世代とは異なる家庭運営が求められ、正解がないからこそ、改まって時間をかけて話し合う。コロナ禍で一緒に過ごす時間が増えたことも後押ししている・・・

・・・「じっくり話して、夫の思いに深く触れることができ、やっと前に進めた」。助産師の女性(38)は、息子の1歳の誕生日に旅行に出かけた際に、初めて「夫婦会議」をしたことを振り返る。産後、夫とコミュニケーションがうまくとれなくなっていたという。
夫婦会議に使ったのは、家事や仕事、お金、親戚関係など、すれ違いやすいテーマについて質問が設定された「世帯経営ノート」だ。子育てなら、あなたにとって子育てとは何か、子育てでやりがいを感じることは何か、などの質問に、夫と妻が交互に答えを記入。互いの価値観、現状認識、理想を把握できる・・・
・・・子育て中の男性(31)は「日々精いっぱいなので、夫婦会議の時間はようやく30分程度」。それでも時間をつくるのは「当初はあうんの呼吸でなんとかなると思ったが通用しない。定期的に言葉にすることが重要と感じている」という・・・

記事には、夫婦の関係性が仕事にどのように影響するかの調査結果も載っています。
・・・夫婦の関係性は仕事にも影響する。Logistaが「夫婦が円満かどうかが、仕事において影響すると思うこと」を既婚の25~39歳に調査したところ、「仕事のモチベーションや効率」は男女とも約7割に上った。「仕事の質や成果」では男性の比率が女性より高く、「キャリアプラン」では女性が上回る。「男性は日々の仕事に、女性は長期的な視点で影響すると考えている」(長廣百合子さん)・・・

ネットでの中傷対策

12月11日の読売新聞解説欄「ネット中傷対策へ制度改正」、山口真一・国際大学GLOCOM准教授の発言から。

・・・今回の改正で、悪質な誹謗中傷の投稿者が迅速に特定しやすくなる点は評価できる。投稿者が特定される可能性を意識することで、攻撃的な書き込みを抑制する効果が期待されるからだ。
例えば、女子プロレスラーの木村花さんが今年5月に亡くなり、この制度が注目された後、彼女への攻撃的な投稿の約6割が投稿者本人によって削除された。特定を恐れたためだろう。

企業や個人に批判的なコメントが殺到する「炎上」が増加していると言われるが、実は関与しているのはごく一握りの人だ。2014年と16年に2万~4万人を対象にアンケート調査を実施したところ、1件の炎上で攻撃的な書き込みを執拗しつように繰り返しているのは数人から数十人程度と推計された。1人が数百のアカウントを作って攻撃していた例もある。少数の「極端な人」が多数のアカウントを使い分けて繰り返し投稿しているのが実態といえる・・・

・・・ 日本でも、炎上参加者の6割以上が投稿理由を「許せなかったから」などと回答し、「自分なりの正義感」を抱く傾向がみえる。アンケートでは「ネット上では非難し合っても良い」との回答も目立った・・・

・・・むしろ技術による問題解決に期待したい。例えばツイッターは8月、自らの投稿に返信できる人を制限する機能を導入した。攻撃的な投稿を事前に検知し、「本当にこの内容を送信しますか」と表示して再考を促す仕組みもある。これを使った90%以上が投稿を思いとどまったという調査結果もある・・・

若者の家族介護

12月10日の読売新聞社会面に「高2の25人に1人 介護 ヤングケアラー 埼玉県県調査」が載っていました。
・・・埼玉県内の高校2年生の25人に1人が家族の介護や世話に追われる「ヤングケアラー」を経験しているとの調査結果を同県がまとめた。ヤングケアラーに関する全県的な調査は全国で初めて。悩みを相談できる人がいないとの回答も多く、苦悩している姿が浮き彫りになった。厚生労働省は今月、中高生対象の全国調査に乗り出す・・・

・・・家族の介護や世話を担った経験があるのは4・1%の1969人。このうち、「毎日」が35・3%と最多で、「週4、5日」も15・8%に上った。
複数回答が可能な設問では、理由について「親が仕事で忙しい」(585人)が最も多く、「親の病気や障害などのため」(407人)、「ケアをしたいと自分で思った」(377人)と続いた。学校生活への影響は「孤独を感じる」(376人)、「勉強時間が十分にとれない」(200人)が目立った。
一方で501人が「ケアに関する悩みや不満を話せる人がいない」と回答。必要な支援では「困った時に相談できるスタッフや場所」(316人)、「信頼して見守ってくれる大人」(286人)などが挙がった・・・

「ヤングケアラー」とは、次のように説明されています。
埼玉県が3月、全国で初めて制定した県ケアラー支援条例では「親族や身近な人に対して無償で介護や世話などを提供する18歳未満の者」と定義。日本ケアラー連盟は18歳未満を「ヤングケアラー」、18~30歳代を「若者ケアラー」としている。

ジョブ型雇用、専門性と技術の向上へ

12月7日の日経新聞経済教室「ジョブ型雇用と日本社会」、本田由紀・東京大学教授の「専門性とスキルの尊重を」から。

・・・注目が高まっているジョブ型雇用だが、言葉が広まるとともに多くの誤解も生まれており、中心的に提唱してきた濱口桂一郎・労働政策研究・研修機構労働政策研究所長が、自身のブログや諸所のメディアで懸命に誤解を正している。
要点を復習すると、ジョブ型雇用は(1)成果主義ではなく(2)個々の社員の職務能力評価はせず(3)解雇がしやすくなるわけではなく(4)賃金が明確に下がるわけではない――ということだ。この点に関しては、紙面でも「労働時間ではなく成果で評価する。職務遂行能力が足りないと判断されれば欧米では解雇もあり得る」などと間違った説明がされており、反省を求めたい。

ジョブ型雇用とは、職務記述書(ジョブディスクリプション)で規定されたジョブに、それを遂行するスキルをもった働き手を当てはめるやり方だ。そのジョブを支障なく担当していれば、成果や職務遂行能力のこまごまとした評価は行わない。社内にそのジョブが存在しなくなった場合も、欧州では他のジョブへの変更を打診するよう定められており、使用者側の都合による解雇は厳しく規制されている・・・

・・・正しいジョブ型は、むしろ働き方を改善するためのものである。鶴光太郎・慶応大学教授らの研究「多様な正社員の働き方の実態」などによると、ジョブ型雇用の正社員は従来型のメンバーシップ型雇用の正社員に比べ、仕事内容や労働時間に関する満足度が高く、ストレスや不満は少ない。
輪郭が明瞭なジョブに専心できるという働き方は、使用者のフリーハンドで仕事内容が量・質ともに無限定に変化・増大する従来型の雇用に比べ、働き手にとっての負荷や不確実性が軽減される。加えて、もっとも重要な点は、ジョブ型雇用ではジョブに即した専門性やスキルが発揮しやすく、それをさらに向上・更新させることへの働き手の動機づけにもつながりやすいということである。従来型の働き方では、これらの点が不足しやすく、それが日本の雇用や経済にとって重大な弱点となっている。

厚生労働省の「平成30年版 労働経済の分析 ―働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について―」は、経済協力開発機構(OECD)の「変化する、求められるスキルの評価と予測」に基づき、国際比較を行っている。
その結果、日本では労働者のスキル不足を感じている企業の割合および労働者の教育経験・専門分野・スキルと仕事のミスマッチが生じている割合が突出して高く、それにもかかわらず企業の能力開発費が国内総生産(GDP)に占める割合が他国と比べて著しく少ないことを指摘している。
この点については、筆者の「世界の変容の中での日本の学び直しの課題」でも論じている。OECD国際成人力調査(PIAAC)の結果から、日本の成人の「学び直し」が他国と比べて少なく、また職場や労働市場においてスキルを発揮できている度合いも国際的に見て低いことがわかる・・・